
ミンダナオ地方のマギンダナオ州および北コタバト州を含む2つの州が、国内で最も洪水リスクの高い上位10州に挙げられている。こうした状況を受け、フェルディナンド・マルコス・ジュニア大統領は、政府が実施する数十億ペソ規模の洪水対策事業について、包括的な調査を命じた。
マルコス大統領は、2025年8月11日にマラカニアン宮殿で行われた記者会見において、新たなウェブサイト「sumbongsapangulo.ph」を発表した。このサイトでは、進行中の洪水対策プロジェクトの位置情報を地図上で確認できるほか、市民が不正や問題を報告できる機能も備えている。この取り組みは、先月の第4回国情演説(SONA)で大統領が公共事業道路省(DPWH)の洪水緩和プログラムの監査を指示したことを受けたものだ。なお、同プログラムは国家予算の中でも最大級の項目の一つである。
「私たちは自らの組織を浄化しなければなりません。多少の痛みを伴うこともあるでしょう。中には身近な人物が関与しているかもしれません。しかし、たとえ彼らが私たちに近い存在でも、国民のほうが私たちの心により近い存在なのです」と大統領は語った。
マルコス大統領は記者会見の場で、2022年7月以降に実施された洪水対策プロジェクトに関する初期調査の結果を報告した。これらの事業には総額5,450億ペソが投じられている。全国には2,409の契約業者が存在するが、そのうちわずか15社に約1,090億ペソ、つまり全体の5分の1が集中していた。そのうち5社は全国規模で契約を受注しており、大統領は「建設業界では非常に異例だ」と指摘した。
さらに大統領は、6,021件にのぼるプロジェクト(総額3,500億ペソ超)が記録されているにもかかわらず、堤防、排水システム、ポンプ場など、どのような種類の洪水対策施設が建設されているのかが明記されていない点も問題視した。
「常識的に考えれば、最も洪水の被害を受けやすい地域に、最も多くのプロジェクトが割り当てられているはずです。しかし、それが一致していないようです」と述べた。
また、不審な点として、全国にある170基の排水ポンプ場のうち157基がマニラ首都圏に集中しており、その多くが水路のごみ詰まりで機能不全に陥っていることも挙げられた。
さらに、異なる場所で行われているにもかかわらず、契約金額がまったく同じプロジェクトが複数存在することについても大統領は疑問を呈した。「このようなことはあり得ません。隣接するバランガイであっても、まったく同じ内容、同じ金額、同じ業者によるプロジェクトが存在するなんてことはあり得るでしょうか」と語った。
マルコス大統領は、この調査に国民の参加が不可欠であることを強調した。「国民が関わらなければこの一連の作業は機能しません。政府の全ての目を合わせるよりも、8,000万、9,000万の国民の目のほうがはるかに効果的です」と述べた。
「sumbongsapangulo.ph」では、利用者が自身の居住地域の洪水対策プロジェクトを検索できるほか、完了済みか、質が低いか、停滞しているか、あるいは存在しないかといった情報を報告できる。
「プロジェクトの成果が良かったのか、悪かったのか。もし悪かったのなら、その原因は何だったのか。どこに問題があったのか。それを明らかにするのがこのウェブサイトの目的です」とマルコス大統領は述べ、「私自身がすべての報告に目を通します」と付け加えた。
洪水対策プロジェクトの件数が多い上位の州は、ブラカン、セブ、イサベラ、パンガシナン、パンパンガ、アルバイ、レイテ、タルラック、カマリネス・スル、イロコス・ノルテだった。
しかし、このリストは最も洪水リスクが高い州の順位とは一致していない。洪水リスクの高い上位州は、パンパンガ、ヌエバ・エシハ、パンガシナン、タルラック、ブラカン、マニラ首都圏、マギンダナオ、北コタバト、オリエンタル・ミンドロ、イロコス・ノルテである。
大統領は、今回の初期調査の結果がまだ正式な告発には至っていないと説明しつつ、システムを悪用したことが判明した者には「必ず責任を取らせる」と強く表明した。