こんにちは!ダバオッチのゆいです。
今回はフィリピン・ミンダナオ島に位置する、未だ多くの謎に包まれた山—キタングラッド山の登山に挑戦しました。
ミンダナオ島での登山といえば、フィリピン最高峰のアポ山(2,954m)を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか?その一方でフィリピン標高2位のデュランデュランを含むキタングラッド山一体は日本人にはほとんど知られておらず、その情報も限られています。そこで今回はキタングラッド山の現地ツアーに参加して、キタングラッド山の魅力に迫りたいと思います。
ダバオから北へ向かうバスで揺られること約6時間。到着したのはブキドノン州。キタングラッド山は先住民族が古くから信仰の対象として守ってきた神聖な山として知られ、登山前には特別な儀式を行う必要があります。また登山の難易度は高く、雨季にはほぼ確実に雨に打たれ、ぬかるんだ道や木の根の上を慎重に進むことが多いため、常に緊張感のある登山となります。
初心者の筆者(20歳、学生、登山経験なし)にとってはかなりハードでしたが、その分登頂した時の達成感も格別でした。道中には、視界が緑に覆われた熱帯雨林や見渡す限りの白で覆われた濃霧などの絶景が多く、常に景色が変わり続けるため飽きずに登山を楽しむことができました。
2025年11月13〜15日の計3日間の登山ツアーに参加し、主に1日目:登山準備、2日目:登山、3日目:下山という行程でした。
キタングラッド山登頂記は3部構成でお届けします。
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準備編(今回)ー 1日目
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登山編・前編 ー 2日目
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登山編・後編 ー 3日目
今回の記事は「準備編」として、キタングラッド登山に臨む前に知っておきたい持ち物、予算、手続きなどについて紹介し、また登山前の旅程についても紹介していきます。
まずはミンダナオッチのおさらいです。
ミンダナオッチでは、ダバオを飛び出して未開の地、ミンダナオ島全体の政治、経済、観光、治安、おすすめ情報を皆さんにお届けします。
目次
ミンダナオ島の話
ミンダナオ島はフィリピンでルソン島(マニラ首都圏のある島)の次に大きな島で、ダバオッチの本拠地ダバオ市がある島でもあります。フィリピンの南部、赤道に程近い低緯度にあるため常夏の気候が特徴です。日本では見られない植物の緑に、建物のレンガ色の屋根、真夏の空の青と、ビビッドな色彩が印象的です。
この島は、首都マニラがあるルソン島に比べて、ムスリム(イスラム教徒)が多い地域です。かつては紛争があり、その影響で治安に不安があると思われがちです。しかし現在は、日本とまでは行きませんが、かなり落ち着いてきました。都市により雰囲気は違うものの、明るく温かく人が多いです。
観光地としては、中小規模の都市が島内各地に点在しており、それぞれ美しい海を持っています。まだ大手資本に見つかっていないのか、あまり手の入っていない秘境の海がたくさんあります。行くなら今のうちです。ちなみにフィリピン最高峰のアポ山(標高2,954m)を頂くのもこのミンダナオです。
海だけでなく、スペイン占領期の歴史ある街並みや、それ以前から紡いできた独自の歴史も街ごとに異なります。行く都市によって「ミンダナオ島」のイメージがガラッと変わることでしょう。
ダバオやミンダナオ島に関する旅行のお問い合わせは、旅行会社ハローワールドさんにお問い合わせください。ハローワールドさんのウェブサイトはこちらから
ブキドノン州の話

ブキドノン州は、フィリピン・ミンダナオ島北部中部に位置する内陸州です。州都はマライバライ市、最大の都市はバレンシア市で、山地や高原が多く、国内で二番目に高いドュラン・ドュラン山、国内4番のキタングラッド山を有する自然豊かな地域です。
経済の中心は農業で、米やトウモロコシ、パイナップル、バナナなどが盛んに生産されています。高原や山地の風景が広がる中で、のんびりとした田園風景や農村の暮らしに触れることができます。
また、ブキドノン州には先住民族が多く暮らしており、独自の伝統文化や生活様式が今も色濃く残っています。毎年マライバライ市で開催されるカームラン・フェスティバルでは、民族舞踊や手工芸、伝統の儀式などが紹介され、訪れる人々に地域の文化を伝えています。
州内は2つの市と20の自治体、合計464のバランガイ(最小行政区)で構成されており、山と谷が織りなす自然の景観と、豊かな文化が共存するエリアです。都市部ごとに雰囲気が異なるため、訪れる場所によってブキドノン州の印象は大きく変わります。
観光では、手つかずの自然や高原の景色を楽しむトレッキング、伝統文化に触れる体験、地元農産物を味わうグルメ巡りなど、さまざまな楽しみ方ができる州です。
キタングラッド山の話

名称 キタングラッド山(Mount Kitanglad)
標高 2,899m(フィリピン第4位)
キタングラッド山(Mt. Kitanglad)は、フィリピン・ミンダナオ島北部ブキドノン州にある、先住民族にとって神聖な山です。深い熱帯雨林に覆われた山道を歩けば、苔むした森や霧に包まれた幻想的な景色が広がります。手付かずの自然が残るこの山では、静かに息づく森の力を感じながら散策することができます。
さらに、フィリピンワシなどの貴重な生き物や、キタングラッドならではの固有種も見られます。自然の豊かさと、地域の文化が息づく雰囲気を同時に楽しめるのが、この山ならではの魅力です。登山や散策を通して、ただの観光以上に、森や生き物、そして山の魅力を感じられる特別な体験ができます。
必要装備・服装の選び方
必需品
- 常備薬
- 軽食、非常食
- 水(2L以上)
- ヘッドライト
- 洗面用具(トイレットペーパー含む)
- 衣服(防寒ジャケット必須)
- トレッキングシューズ
- 大きめのリュック(体に密着させられる・レインカバー付きのもの)
- 帽子(枝などから頭を守ってくれる・視界確保)
- 靴下(多めに持参)
- 寝袋
- レインコート
- タオル
- 身分証明証(ID)
*軽食や水は1日目の宿泊施設に併設されたサリサリストア(簡易的なコンビニ)で購入可能です。
推奨品
- ステッキ
- 虫除けスプレー
- 日焼け止め
- カイロ(夜は気温がかなり下がります)
- サンダル
- タンブラー
- サングラス
- ビニール袋
- 洗い流さないシャンプー(登山中にシャワーはありません)
- モバイルバッテリー(山頂でまさかの充電可能です)
⚠️ キタンラッド山登山・服装選びのポイント
実際にキタンラッド山に登って感じたのは、霧や強風、湿気が多い山だということ。登山中の快適さと安全のためには、山の気候に適した服装を選ぶことが重要です。
①防寒・防水は必須
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標高が上がるにつれて気温は下がり、雨に降られる可能性もある。
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朝と夜の気温差も大きく、半袖・半ズボンの登山者を見かけることもあるが、十分な防寒・防水対策が必要。
②体温調整しやすい重ね着がおすすめ
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脱ぎ着しやすい薄手のアウターを持っていくと、気温や天候の変化に対応可能。
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薄手の長袖を基本に、雨天や山頂での寒さには防水・防寒のウィンドブレーカーを重ねると安心。
③肌の保護も大切
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虫刺されや尖った植物から肌を守るため、できるだけ肌を出さない服装を選ぶと安全。
筆者も登山時は薄手の長袖を着用し、雨天時や登頂時は防水・防寒のウィンドブレーカーを重ねました。さらに、着脱のしやすい薄手のアウターを携帯することで、体温調節や急な天候の変化にも柔軟に対応できました。
ガイド・ツアー
キタンラッド山は、自然環境の保護や安全面の理由から行政に登録されたガイドが必須の山です。今回の登山では、Hello World Toursさんにツアーとガイドの手配をお願いしました。ツアーの費用はハローワールドツアーズさんにお問い合わせください。
ツアーを申し込むと、送迎、食事、登山許可証の手続き代行、山中での安全管理など、登山に必要な手配がすべて整っているため、安心して登山を楽しむことができます。
参加費に含まれるもの
- 登山許可料・環境保全費・バランガイ費
- ガイド料・スイーパー(後方確認者)料
- 登山儀式に必要なもの
- 登頂証明書
- 6回の食事(宿泊込み)
- Impasugong環境オフィスからの送迎バス
- ガソリン代
参加費に含まれないもの
- 個人ポーター
- 登山以外での食事
16:00 集合場所に到着・書類を記入
ツアーの集合場所である、Impasugong環境オフィスに到着しました。
ツアーガイドからの案内を経て、登山の承諾書にサインをして、保護区管理委員会(PAMB)ツアー団体の登山許可書を手に入れます。この際に本人確認書類の提示が求められるため、必ず忘れないように!
今回の登山ツアーには12名が参加していました。マニラやセブ、ダバオやカガヤンデオロなど様々な地域から参加者が集まっており、登山愛好家が比較的多い印象でした。(既にフィリピン最高峰のアポ山を登っているという方が半分ほどいました)年齢は主に20〜30代が中心で、女性の参加者が多めでした。

Impasugongの環境センターから、キタングラッド山付近にある先住民族の宿泊施設まで大型バンで移動。建物はコンクリートブロックにトタン屋根のシンプルな作りで、山の雰囲気を感じさせます。

17:00 儀式
キタングラッド山に登る前には、先住民族による伝統的な儀式が行われます。山の神聖さを敬うこの儀式では、数匹の鶏が捧げられます。手順は慎重に行われ、登山者もその場で見守ります。鶏が暴れないようにしっかりと押さえつけ、その頸動脈を絶ちます。
普段の生活ではなかなか体験できない、文化の深さを感じられる時間でした。登山のたびに鶏が生贄にされるのは少し心が痛みますが、この鶏も今晩の夕食に並びます。先住民族だけではなく、山や自然へのリスペクトを改めて思い起こされる瞬間でした。

18:00 登山インストラクション
登山にあたっての注意事項や禁止事項について説明を受けます。山ではゴミを捨てない、草木を故意に折らない、木や石に名前を刻まないなど、細かいルールが定められています。基本的にはどれも当たり前のルールですが、もしルールを破ってしまうと15,000ペソ/毎の罰金が課せられます。インストラクションは全てビサヤ語で行われますが、英語が流暢なツアーガイドが通訳してくれるので安心です。
キタングラッド山の隣に位置するフィリピンで2番目に高い山、ドュラン・ドュラン山は、登山者によるゴミのポイ捨てなどが原因で、現在一時的に閉山されているのだそう。自然環境を守るためには、こうした措置が避けられないのです。

19:30 夕食
儀式で捧げられた鶏を使った料理を含む、地元の伝統的なメニューが並びます。
夕食は、チキン、ライス、ルンピア(春巻き)、シヌグラウ(豚肉ときゅうりの和え物)など、フィリピン・ブキドノンならではの料理が楽しめました。20歳の大学生ですらお腹がいっぱいになるほどのたくさんの夕食で、明日の登山に向けて体力をつけます!

20:00 オリエンテーション
参加者全員で輪になり、自己紹介やこれまでの登山経験について語り合います。
フィリピン人らしく、初対面でもすぐに打ち解け、笑いが絶えない親睦の時間になりました。夜の静かな山の雰囲気の中で、和気あいあいとした空気に包まれ、登山前に交友関係を深められる有意義な時間でした。日本人がキタングラッド山に登るのは珍しかったからなのか、ガイド山だけではなく他の参加者たちも驚くほど親切に話してくれます。フィリピン人のホスピタリティは観光地に限らず、国民的な精神として根付いているのでしょうか。

22:00 就寝
宿泊施設にはマットレスが用意されており、その上に各自持参した寝袋を広げて就寝します。エアコンなどはなかったため、しっかりと寒さ対策をして就寝します。明日の登山の格好のまま寝ている参加者が多かったです。

4:30 起床
朝早くはかなり冷え込み、体感で15度ほどでしょうか。フィリピンに来てエアコンの風以外に寒いと感じることがあるとは思いませんでした。
薄暗い宿泊施設の中で目を覚ますと、ツアーガイドがすでに朝食の準備をしてくれています。温かいココアを手渡され、眠気も吹き飛ぶほっとするひとときです。
6:00 朝食
朝食はライス、卵、ソーセージ、チョリソーのシンプルなメニュー。
山登り前のエネルギー補給にぴったりで、温かい食事にほっとしながら、これから始まる登山に気持ちを高めます。

6:45 出発
大型のバンに乗り込み、宿泊施設を出発。
スタート地点へ向かう道中、山の緑や霧がかった景色を眺めながら、いよいよ始まる初登山にワクワク感が高まります。

7:15 登山開始
後ろにそびえるのはキタングラッド山。山頂は雲や霧に覆われ、全貌はまだ見えません。緊張とワクワクが入り混じる中、いよいよ登山スタートです!

次回はキタングラッド登山編に続きます。ぜひそちらもお読みください!









