こんにちは!ダバオッチのゆいです。
今回は、いよいよキタングラッド山に挑む“登山編”。
泥だらけの急坂、雨に打たれた滑る木の根、そして神秘的な熱帯雨林。
息が上がり、汗と霧に包まれながらも、目指すは標高2,899mの山頂です!
前回の記事ーキタングラッド山準備編ーをまだ読んでいない方は、こちらからチェックしてください!
目次
キタングラッド山 登山地図
スタート地点の標高はすでに1,741m。そして目指すのは、山頂2,899m。
スタート地点から頂上までは、標高差1,158m、距離にして3.922kmの登りです。
山道の途中には、約1kmごとにポイントが設置されています。
K -1,2は屋根付きの休憩スポットがありましたが、K -3,4は看板のみ。
その他にも休憩に適した開けたスペースがあったので、中間地点以外でも休憩は可能です!
山道はほとんど一本道だったため、迷う心配はあまりなさそうでした。

7:15 登山開始
バスの到着地点から、まず目指すのは K-1 ポイント!
ここが登山のスタート地点になります。
今回のツアー参加者は全12人。みんなで列になって登るのかと思ったら、各自のペースでゆっくり登れるそうです。先頭と後方には必ずガイドもしくはポーター(荷物運び係)がついてくれるので安心です。
体力に自信がない方や、たくさん休憩を取りたい方、写真を撮りながら進みたい方も、心配なくツアーに参加できます。
実際に、フォロワー20万人以上のインフルエンサーも今回のツアーに参加しており、道中で写真を撮るだけでなく、動画を撮ったりダンスを踊ったりして自分のペースで進んでいました。

K-1ポイントまで向かう途中には、パパイヤや野菜の畑が整備されており、地元の人々にとってキタングラッド山が生活の一部として重要な役割を果たしていることを実感しました。
農作業用のトラックが入れる場所まで、山肌に広大な畑が広がっています。
ここで鶏を生贄として捧げた昨日の儀式を思い出しました。農作地を分け与えてくれる山を神のような存在として崇める感覚は、日本であってもフィリピンであっても変わらないようです。
山道に少し入っていくと迎えてくれたのは、これまで見たことのない “ザ・熱帯雨林” の植物たち。背の高い木々が登山道に覆いかぶさるように共生しています。個人的な印象ですが、日本の山と比べて植物の棲み分けがはっきりしておらず、1箇所にいくつもの植物が生えているように見えました。
近くまで寄ってみると、日本ではあまり見かけない 植物たちがいました。
小さい頃に何度も見た『ジュラシック・パーク』の世界に迷い込んだような気分にさせてくれます。
7:45 K-1ポイント到着:ここが本当のスタート地点
登り始めて30分ほどで、やっとスタート地点に到着しました。
ここまでの道は少し傾斜がありましたが整備されていて歩きやすく、「あれ?登山って意外としんどくないのかも?」と思ったりもしました。が、まだスタート地点に着いたばかり。登山はこれからです。
休憩ポイントには注意書がありました。
ゴミは各自で持ち帰ること・草木を採集しないこと・登山者は保護地域管理委員会(PAMB)の許可が必ず必要だと書かれています。
K-1ポイントを出発すると、まだ整備された登山道が続きます。
この調子なら昼前には山頂に着けるんじゃないか――登山初心者は、そんな甘い考えを抱いていました。
キタングラッド山(2,899m)はフィリピン最高峰のアポ山(2,954m)とほとんど標高が変わりません。アポ山は一般的に2泊3日のツアーが組まれることが多いのに対して、キタングラッド山は1泊2日の登山ツアーが一般的です。同じ標高をより短い期間で登るのですから、その分登りは急なものに、そして下りも急なものになりやすいのです。つまり、これから急勾配が待ち受けています。

整備された平坦な地面から足場は泥で固まった地面に急変しました。
足元が安定しないのはもちろん、滑りやすくかなり急な登りです。
大きなリュックを背負い、不安定な足場を登るのがこれほどまでに大変だとは。
転び落ちたときのことを考えるだけで、余計に神経を使い、体力を消耗します。

階段もあるのか!
泥や岩場に比べると、階段はずっと足場が安定します。
しかし、かなり長い階段もあり、足の体力を奪われるのを実感しました。
そしてどこまで行っても、常にこれでもかというほどの緑に囲まれています。
自然の中でアクティビティを楽しむことで、普段は味わえない自然の力を感じストレスが軽減されるのを実感しました。

少し開けた場所に出ると、森の外の景色が見えてきました。
スタート地点の標高はすでに1,741m。
人生で最高地点に来ていることに、改めて気づきました。
森の外には霧が立ち込め、視界がぼやけて神秘的な空気感が作り出されています。

8:10 K-2ポイント到着:雨と湿気の登山に突入
登山開始から約1時間で、最初の休憩地点K-2ポイントに到着しました。
椅子と簡易的な小屋が用意されており、ゆっくり休めそうな場所です。
とはいえ、登山はまだ始まったばかり。少し休憩したら、すぐに再開です。
オレンジの服を着た二人のツアーガイドさんたち。疲れを見せず常にみんなに笑顔を届けてくれます。

小屋の中に入っていくと給水器が設置されていました。
ダバオにやってきてから2ヶ月、「水にだけは気をつけろ」とさまざまな人に言われ続けてきたため、少し抵抗がありました、、それでも貴重な飲み水、、、
ガイドの方が、「麓の飲み水をホースで引っ張ってきているから安全だ」と言うので、信じて給水させてもらいました。
(登山から1週間ほどが経過した現在体調に変化はありません)

K-2ポイントを出発して間もなく、9時ごろに雨が降ってきました。登山を開始してから約2時間後のことです。
幸い小雨が続いたため、登山に大きな支障はありませんでした。しかし、レインコートを着用すると動きに制限がかかり、視界も狭くなります。そのため、レインコートは上下一体型ではなく、上半身と下半身が分かれたタイプを選ぶのがおすすめです。
さらに、防水機能やゴアテックス素材のアウターを着用すれば、わざわざレインコートを着る手間が省けるので、これがベストかもしれません。
下の写真のように、頭付近に木や枝があることも多く、滑りやすい足元だけでなく、常に頭上にも注意する必要があります。

歩いていると、そこかしこに見たことのない植物が生えています。
熱帯雨林で、毎日雨に打たれながら湿気の中で育つ植物たち。
日本では見られない、さまざまな種類が生息していました。
こちらはジブリに出てきそうな植物たちです。珍しい植物を見つけると、ガイドの方がいつも声をかけてくれました。今回見つけることはできませんでしたが、キタングラッド山には国鳥であるフィリピンイーグルやキタングラッド固有種のアースワーム(巨大なミミズ)などが生息しているそうです。
森を少し抜けると岩場の開けた景色に!
山の中のコースだけではなく、岩場のコースも楽しむことができるのは魅力的です。
しかし、雨×岩場の滑りやすい組み合わせには細心の注意が必要。
時には足だけではなく、手を使ってバランスを安定させることもありました。(手袋必須です!)
中でも特に注意が必要なのが、木の根!
雨に打たれた木の根は想像以上に滑ります。滑ると分かっていても、何度も足を滑らせてしまいました。例えるならば、苔の生えたテトラポットくらい滑ります。流石は熱帯雨林の環境です。
滑った時にできるだけ足をくじかないようにハイカットのトレッキングシューズを選ぶのが良いです。筆者は何度か足を挫きかけ、自力で登山できなくなる絶望感を感じかけました。
9:50 K-3ポイント到着:幻想的な森へ
登山開始から3時間弱、やっとの思いで距離的には中間地点となるK-3地点に到着しました。
約4kmの登山の2km地点ですが、登山を終えた今振り返ってみると、しんどさは後半の2kmの方が倍以上でした。中間地点、ここからが本番です。

K-3ポイントを抜けたあたりから緑がより一層深くなってきました。また雨がほとんど止み、さらに湿気が増したように感じます。ここで一度レインウェアとして着用していたアウターを脱ぎ、薄めのロンTに切り替えました。

幻想的な森の風景森の中を抜けて山肌を見渡せるスポットがありました!
が、見えたのは一面真っ白の景色。濃い霧に山全体が包まれることでこのような景色になります。

動画を見ていただければ、より一層イメージが具体的になるかと思います。
ほとんど下を見渡してみても、山の上の方を見ても見えるのは霧のみ。
重力がなれけば平衡感覚を無くしてしまう、それほどの濃霧です。
山肌に出ると風の強さを感じました。雨が降って湿気が増したり、風が強いポイントがあったりとキタングラッド登山では服装による体温調節が欠かせません。
雨が止んだことで視界が明るくなり、ついに山肌が霧から現れました。こんなに、美しい景色が広がっていたとは。濃霧で真っ白な景色も、遠くまで続く緑を見渡せるのも、キタングラッド山の魅力。

絶景が見える休憩ポイントで一休み。
各々持参した軽食やスナックを食べてお腹を満たします。限られたスナックをみんなでシェアして疲れを労い合います。日本では個人で登山に行くのが主流ですが、フィリピンでは登山はツアーで行くのが一般的。様々な人との交流を通じて、共に困難を乗り越える素晴らしい体験ができます。
筆者は現地語であるビサヤ語がほとんど理解できないのですが、英語に切り替えて積極的にコミュニケーションを取ってくれる親切な参加者が多かったです。
写真の地点が最後の給水ポイントです!山頂には飲み水はないため、ここで給水しておくのがオススメ。

次のポイントまであと少し!再び森の中へ入っていきます。
毎日雨に打たれ草木が驚異的なスピードで成長するのでしょう。山道にも多くの草木が伸びてきています。中には尖った枝などもあるので、できるだけ肌を覆える服装選びを心がけた方が良さそうです。虫刺されの対策にもなります。
中には裸足で半袖・半パンの参加者もいますが、日本育ちの筆者はそんなわけにはいきませんでした。

11:20 K-4ポイント到着:疲労のピーク、最後の壁
最後の中継地点K-4ポイントに到着です。
この辺りが一番しんどかったです。登山開始からはすでに4時間以上が経過して足の疲れも溜まってきています。山道が永遠のようにも感じました。
しかし山頂まではあと1km!最後の力を振り絞って、山頂へ向かいます!
「もう少しだ、山頂はすぐそこだ」とガイドの方が励ましてくれました。
しかし、ガイドの「もう少し」は、一般人の「もう少し」とは訳が違います笑

K-4ポイントを抜けて最初に待ち受けていたのは、急な階段。しかもかなりぐらつきます。
当たり前のことですが、登山中の歩きスマホは厳禁!
写真や動画を撮りながら歩いていると、つまずいたり滑って転んだりする危険があるのはもちろん、この階段のように、もしスマホを落としてしまえば取りに行けないような場所に落ちてしまうかもしれません。写真や動画を撮るときは一度立ち止まってから。

急階段を進んでいくと、「これいくの?」というほど急で滑りそうな岩場が。ラストスパートで足の体力がなくなってきている分、思ったように体が動かず滑り転びかけました。適度に休憩を取り、体に無理をさせないことが怪我の予防につながります。
写真スポットもありました。
「ここいい写真撮れるよ」と参加者の人が教えてくれ、写真を撮ってもらいました。
写真の靴をご覧になれば分かるように、泥でかなり汚れています。「汚れを気にして難しいルートを通るよりは、汚れを気にせず安全なルートをいく方がいい」というツアーガイドの助言に従いました。山頂では靴を洗って乾かせるので、汚れは気にしない方がいいです!

ちょうど正午ごろ、雨が止んで時間が経ち太陽が少し出てきました。
太陽の光に照らされた熱帯雨林の苔や緑は幻想的な空間を作り出します。
見渡す限り全ての木にびっしりとついた苔。これもキタングラッド山ならではの景色です。

さらに目を疑うような植物も。
こちらはキノコでしょうか。絶対に食べてはいけない色をしています。
右のものに関しては全く見当もつきません。
また足元の大きな岩には名前や日付が刻まれています。
草木を折ってはいけないのと同じように、自然のものは全て傷つけてはいけません。日本では多くの人が理解しているでしょうが、まだまだ自然でのアクティビティが広まっていな地域ではこのような光景が見られます。
山という壮大な自然に、人間が立ち入って遊ばせてもらっていることを忘れてはいけません。

13:00ごろ。登山を開始してから約6時間。
山頂は霧で見えません。そして下半身の疲れが限界に近くなってきています。
景色はかなり開けた山道に変わり、人の背丈を超える木々も少なくなってきました。写真を見ても感じられる通り、この辺りは風が強く寒さも増してきます。
山頂まであと少し!

動画のように、山頂近くは霧、風、寒さ、小雨、キタングラッド山を詰め込んだような景色になっています。一歩踏み外せば、落ちてしまうような狭い道もありました。最後まで気が抜けません。
13:30 登頂
登山開始から6時間15分で、ついに登頂!
途中で何度も休憩を取り、雨に打たれ、足を挫きかけ、滑って転びかけ…
それでも、他の登山者と励まし合いながら、遂に登頂に成功しました!

山の上にはなんと電波塔が!他に貯水タンクなどもあり、なんと宿泊施設ではガスを使った料理ができるそう。夕食が楽しみです。

そして、まさかの動物たちまで。どうやってここまで来たのでしょうか。
ツアーガイドの方が「頂上には文明が広がっているぞ。動物もいるし、家もあるし、軍隊まであるんだ」と言っており、冗談だと思っていましたが、一理ありますね。
登山者たちからよく餌をもらっているのか、人懐っこくて丸々とした体つきでした。
雨が完全に止み、霧が晴れると景色がより鮮明に見えます。
天気が変わりやすいのがキタングラッド登山の難しさの一つ。それもまた、様々な景色を楽しめるというポジティブな一面でもあります。

13:45 昼食
少し遅めのお昼ご飯。
朝のうちにガイドの方がパックに詰めてくれたライスとチキン。
登頂後に食べるご飯がこんなにも美味しいとは、、、笑みが止まりません。
昼食のパックは各自で管理するため、いつでも食べてオッケーです。

17:00 自由時間(写真撮影・仮眠)
登頂を終えた後は、基本的に自由時間。
みんな山頂付近で一通り写真を撮り終えると、それぞれのスペースに戻って仮眠を取っていました。
朝4時ごろに起きてから何時間もぶっ続けで登山をした後だけに、ぐっすり眠れました。

17:30 夕食
仮眠から目を覚ますと、豪華な夕食が!
山の上で、こんなにもメニュー豊富な食事が楽しめるとは思っていませんでした。
ツアーガイドの方も、参加者と同じ行程で登山をしていたにも関わらず、仮眠も取らずに食事を準備してくれていたことに感謝です。
メニュー
ライス、パンシットカントン(シーフード焼きそば)、チキンカレー、ルンピア(春巻き)、フルーツサラダ(デザート)、地鶏スープ、エビとコーンのバター和え

21:00 就寝
寝床には二口のコンセントが設置されており、しっかり充電も可能でした。
床にはマットレスが敷かれ、その上に寝袋を広げる形です。成人男性が足を伸ばして寝られるくらいのスペースがありました。
夜に雨がかなり強く降った影響で、雨漏りがありました…。
部屋は二階建てになっているので、できるだけ一階の部屋を選ぶと良いでしょう。
山頂というだけあって気温はかなり低くなっています。
登山中とほとんど変わらない服装で、防寒対策をしっかりとして就寝している人が多かったです。
明日の日の出の景色を心待ちに、雨の滴る小屋の中で眠りにつきます。
ここまで読んでくださった方、ぜひ最終章も読んでいただけると嬉しいです!







