【コラム】ダバオのネオンはノスタルジーの香り、粋なファンドレイジングに心をつかまれた夜

翌週末も、同じカラオケ店へ足を運んだ。前回と同じく、ビールを飲みダンスを見ながら、女の子たちにレディースドリンクを何杯かごちそうした。心地よい時間を過ごさせてもらって、さてお会計、という段になり、財布を開くと現金が足りない。クレジットカードで支払おうとすると、なんと停電のためにカードが読み取れないという。近くにはATMもない。さて困った。

「明日、支払いに来るよ。それでいいかな?」というと、それまで物腰の柔らかかったスキンヘッドのマネージャーの表情が一変。腕をまくり、ドスの聞いた声で「払えないなら、腕時計と携帯電話を置いていけよ」という。面倒なことになったなと思いながら、無銭飲食もカッコ悪いと、仕方なく腕時計を外し、携帯電話を手渡した。

この一連のやり取りを見ていた店の女の子が、いきなり立ち上がった。「へい、ガールズ、クヤ(お兄さん)たち、ノリが困ってるみたいよ。心あるみんなからの寄付を募りまーす」と呼びかけてくれたのだ。すると、女の子たちが衣装の胸の谷間や服の隙間に挟んでおいた紙幣を次々と取り出してくれるではないか。今日の稼ぎ、大切なチップに違いない。

まもなく小さく折りたたまれた紙幣がたくさん集まり、あっという間に最終目標額であるぼくのお会計1800ペソに到達した。すさまじくスピード感のあるファンドレイジングではないか。寄付を集めた女の子が、そのお金をマネージャーに叩きつけて、ぼくの携帯電話と腕時計をひったくり、ウインクしながらぼくに手渡してくれた。この瞬間、ぼくはダバオの人々に心を奪われ、大きな借りができてしまったのだ。