【News】洪水対策など総額498億ペソの公共事業費ーダバオ市に「過剰配分」批判も

ダバオ市洪水
©Photo by ABS-CBN News

公共事業道路省(以下DPWH)の新たな文書によると、ダバオ市は2020年から2022年の3年間で、総額498億ペソ相当のインフラ予算を受け取っていたことが明らかになった。

これは今週の下院調査で取り上げられた510億ペソという数字よりも少ない金額である。この予算の内訳は、DPWHダバオ地方事務所およびダバオ市地区工学事務所(DCDEO:Davao City District Engineering Office)の公式報告書に記されており、主に道路整備、橋梁、多目的施設の建設などが含まれている。一方、洪水制御システムに特化した予算は約91億2,000万ペソにとどまっている。

広大な都市に対して、3年間で498億ペソの支出

「サン・スター・ダバオ」に提供され、DPWHダバオ地方事務所によって確認されたプロジェクトデータにより、過去3年間にダバオ市へどのように予算が配分されたのかが明らかになった。

2020年にはダバオ市に総額173億ペソの予算が割り当てられ、その大部分が道路網の整備、洪水制御事業、多目的施設の建設に充てられた。特に洪水制御事業には単独で30億ペソ以上が投じられたほか、ダバオ・バイパス道路や市内各地のコンクリート舗装事業にも多額の予算が投入された。

2021年、ダバオ市への予算配分は191億ペソに増加し、その中には同期間中で最大の個別事業となる「ダバオ市沿岸道路(DCCR・総額55億ペソ)」が含まれていた。この道路は、交通渋滞の緩和だけでなく、洪水対策の機能も兼ね備えている。一部の議員は依然として洪水リスクの高い地域が多く残されていることに疑問を呈しているが、同年に洪水制御を目的として明確に割り当てられた予算はわずか2億ペソにとどまり、その他の予算は道路整備や多目的インフラに振り分けられている。

2022年には予算配分が133億ペソに減少したものの、排水設備や河川防御などへの重点的な投資が進み、洪水制御システムには58億ペソが充てられた。この額は3年間で年間最大の洪水対策費となった。残りの予算は新設の橋梁、道路の拡幅、高架道路の整備に充てられている。

3年間を通じて、ダバオ市には総額498億4,072万9,280ペソ相当のインフラ事業が実施されたことになる。DPWHの記録によれば、バイパス道路に109億ペソ、一般道路網に94億ペソ、高架道路に47億ペソ、多目的施設に38億ペソがそれぞれ投入されており、この期間中、ダバオ市は全国で最も多くの公共事業予算を受け取った自治体となっている。

2024年議会の警告

2025年9月9日の公聴会以前から、議員らはダバオ市への予算配分額の大きさに懸念を示していた。2024年、下院予算委員会のエリザルディ・コ委員長は、「本来ダバオ市の地区で洪水なんてもう起きていないはずです。だからこそ、510億ペソも使われたのに、なぜまだダバオ市で洪水が起きているのか、私たちはその理由を明らかにしたいのです」と発言している。

またコ委員長は、「昨年、DPWHは『ダバオはすでに過剰に予算が出ているから削減すべきだ』と言っていました。だからこそ、130億ペソから40億ペソに削減され、今年(2025年)はわずか10億ペソにまで減っています。他の地区とのバランスが必要だということです」と話し、DPWHがダバオ市への配分額の引き下げを勧告していたことも明かした。

DPWHのカブラル次官の確認

この問題は、下院インフラ委員会による洪水制御事業に関する疑惑の公聴会で再浮上した。

マニラ選出のジョエル・チュア議員は、DPWHのカタリナ・カブラル次官に、ダバオ市への総配分額が510億ペソであることを確認できるかを尋ねた。

当初、カブラル次官は「記録を確認する必要がある」と述べたが、副委員長テリー・リドン議員に、2024年にすでに確認発言をしていたことを指摘されると、「はい、ご指摘の通りです」と断言した。

パオロ・ドゥテルテ議員の反論

一方、ダバオ市選出のパオロ・ドゥテルテ議員は、「ゴーストプロジェクト(架空事業)」の存在を否定し、予算は実際に整備されたインフラに使われていると強調した。

「もし本当にその510億ペソの中に『ゴーストプロジェクト』があると言うなら、どうぞ調査してください。記録を見て、現場を見てください。真実はそこにあります。実際に見えて、建てられ、ダバオ市民が使っているプロジェクトです」と話し、9月10日の声明では、「私たちダバオ市民も納税者です。税金を払っているのはルソンやマニラ首都圏だけではありません。ここミンダナオの私たちも含まれています。本当に『ゴーストプロジェクト』があるなら、公にしましょう。それは私たちのお金です。すべてのフィリピン国民のお金です。ダバオ市民のお金です」と強く訴えた。

規模と予算の背景

批判者の中には、ダバオ市の510億ペソという予算額をマニラ首都圏の洪水対策費と比較する者もいるが、その際に土地面積や地形の違いが考慮されていない場合が多い。

実際、マニラ首都圏の面積はおよそ637平方kmで、2022年から2025年までの洪水制御予算は525億ペソ。一方、ダバオ市はその約4倍にあたる2,443.6平方kmの広大な面積を持ち、498億ペソのインフラ予算にはさまざまな事業が含まれている。

また、ダバオ市は、マリログ、トリル、バギオ、トゥグボクといった山間部や農村地域も抱えており、これらの地方では、都市部のような排水管やポンプ施設ではなく、斜面保護、河川改修、流域管理といった洪水対策が必要となる。

単純に総額だけで見れば、ダバオ市への配分は大きく見えるかもしれない。しかし、土地の広さ、地形、そして求められる事業の性質を踏まえると、より精緻な判断が求められる。

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