ダバオ市に性的虐待を受けた子どもたちを救うため、施設を建設しようと奮闘する女性がいる。Marieta Maya Monta氏は、自身もまた幼いころ性的虐待を受けた経験がある。この大きなチャレンジにMonta氏を向かわせるのは、そのころの辛く悲しい記憶があるからだという。
Monta氏は小学校2年生のときに性的虐待に遭った。そのことを33年間隠し通してきたという。そして、もしその犯人が身内だとしたら、被害者の気持ちがよく分かると述べた。
その後13歳になったMonta氏は、身内を離れて暮らすようになったという。この時の経験が、自分のように性的虐待によって自分の家を失ったり恐れを抱くようになった人たちを助けたいと思いにつながったという。
その後1997年、Monta氏はフィリピンから中東に移り住み、稼ぎのよい仕事を見つけるため、兄弟を助けるため、そして他の性的虐待被害者を助ける方法を見つけるために働き始めた。その後1999年にイギリスで家政婦として運良く雇われたMonta氏は、イギリスでフィリピンとイギリスのハーフの男性と恋に落ち、2006年に結婚した。しかし、その男性は結婚式の翌日に肝臓がんで亡くなってしまう。その後、旦那の親族にさらわれるような対応をされたり、新しいパートナーにひどい仕打ちを受けるなど、不運は続いたという。自殺も考えたとMonta氏は述べた。
しかし、Monta氏のことを励まし、賢明で教えとく言葉をくれる人たちが居たおかげで、「性的虐待を受けた人たちを助ける」という強い思いを取り戻したという。その後、そのための組織である「Maya’s Organisation Philippines Inc. (MOP, Inc.)」が立ち上がった。
そして現在、リハビリ施設の建設に向けて同組織は動いており、50~100名の子どもたちを迎え入れられるようにする計画だ。国営の施設も既にあるが、最大でも6ヶ月までしか居ることができない。それでは心のリハビリには不十分なので、さらに長い期間施設にいれるようにし、必要なら延長もできるようにするという。また、施設ではカウンセリングやホリスティックヒーリングをおこなうだけでなく、生活に必要な技能や庭の手入れ、ダンスなども学べるようにし、もちろん通学もできるようにするという。
この施設運営にあたっては、イギリスやアメリカからボランティアでトレーナーが来ることが明らかになっている。そして、彼らの知識を伝授したり、ボランティアへの訓練をおこなったりすることとなっている。現在、施設をどこに建設するかを計画している段階で、予算などのやりとりも政府とおこなっているところだ。しかし、現在国は新型コロナウイルス対応が優先事項で、上手く進まないこともあるという。それでもなお、子どもの性的虐待はコロナ禍に入ってさらに深刻になっている。同施設の建設は緊急を要する課題ともいえる。
子どもの性的虐待について、このようなデータがある。2018年にダバオ市内で子どもが被害者となった犯罪は合計706件あった。そしてそのうち、性的虐待の件数は88件にもおよんでおり、身内による犯行は合計38件となっている。さらに、2019年にはダバオ市内で子どもの性的虐待が209件確認されている。コロナ禍で学校に行かない現状では、その危険は高まっているといえよう。
Monta氏は「私の人生のすべてをかけて、このミッションに取り組んでいます。性的虐待を受けた人たちが前を向けるように、お互いが助け合えるように、そして自分は間違ってないんだよと伝えるためにです」と思いを語ると、33年経っても心の傷は癒えない、だからその傷が被害者を助けたい原動力になっていると述べた。そして、「私は今も闇の中にいます。その闇の中に居たらどんな気持ちか、私には分かるのです」と語った。
Monta氏の強い思いは、多くの人たちを動かし、実現に向かおうとしているところだ。
同施設の公式ページはこちらから(www.mopinc.org)