ダバオ市商工会議所(以下DCCCII:Davao City Chamber of Commerce and Industry Inc.)の幹部は、国家規模で発生しているとされる大規模な汚職疑惑について強い危機感を示した。
この問題は、ダバオのビジネスコミュニティにも大きな波紋を広げており、現在も調査が進められている。
DCCCIIのローランド・T・スイコ会頭は、11月14日にアカシアホテルで開催された「Just Energy Transition Dialogue」終了後の囲み取材で、政府関係者と民間の一部関係者が関与したとされる汚職疑惑について、「国民の血税の乱用であり、深刻な信頼の裏切りだ」と強く批判した。
スイコ氏は、多くの市民が日常のあらゆる取引で税金を負担していることを強調した。
「私たちは個人として税金を支払っています。小さなキャンディーを買うだけでも、そこにはすでに付加価値税がかかっているのです」と述べた上で、「こうして集められた税金は、本来、社会サービスやインフラ整備など、国民に還元されるべきです」と語った。
さらに、政府予算から数十億ペソが政治家や民間事業者の手に渡ったとされる報道を受け、懸念は一段と高まっているという。
「政治家に巨額の資金が流れ、さらに同業者までもが関与していたと知ったときは、本当に衝撃でした」と述べた。
DCCCII、フィリピン商工会議所の立場を全面支持
DCCCIIは、独自の声明を出していないものの、スイコ氏は、DCCCIIがフィリピン商工会議所(以下PCCI:Philippine Chamber of Commerce and Industry)の立場を全面的に支持していると説明した。
PCCIは国内最大の企業団体であり、政府に対し汚職の根絶、流用資金の回収、関係者への厳罰を求める強い姿勢を示している。
これはパサイ市で開催されたフィリピン・ビジネス会議(PBC: Philippine Business Conference)で採択された決議に基づくものだ。
この決議では、政府事業における「絶え間ない過剰な汚職」を終わらせるため、より厳格な監視体制、透明性の強化、説明責任の徹底を求めている。
また、監査・報告制度の強化、オープンガバナンスの制度化、官民の癒着防止策、そして民間を含むマルチセクターの監視機関の設置など、公共事業の健全性を高める施策も盛り込まれている。
PCCIは特に、議員、地方自治体、民間業者が関与したとされる治水事業の不正疑惑が調査中であることを受け、政府に厳正な対応を求めた。
外国投資家のダバオ市への関心はむしろ増加
一方で、スイコ氏は、こうした政治的混乱があるにもかかわらず、ダバオ市への外国投資家の関心は衰えるどころか、むしろ高まっていると指摘した。「投資家がダバオ市を避けるどころか、その逆です。今回の問題がかえって都市への関心を高めています」と述べた。
近ごろはブルネイ、インドネシアなどからの代表団も来訪しており、投資機会を積極的に模索しているという。
スイコ氏によれば、全国的な汚職疑惑が報じられているにもかかわらず、ダバオ市への訪問や投資意欲への影響は「ほとんど見られない」とのことで、地域経済への信頼は依然として強い。
治水事業不正疑惑➖捜査は拡大
今回の汚職疑惑の中心となっているのは、治水事業に関する不正である。
最近の監査結果や内部告発により、複数の選挙区で事業費の過大計上、手抜き工事、さらには事業自体が存在しないケースが発覚している。
公共事業道路省(DPWH)は、調達資料や業者リスト、事業報告書をすでに提出している。フィリピン行政監察院も、関係が疑われる官僚や民間業者への召喚状を発している。
調査チームは、特定の業者が政治的コネクションを通じて治水事業を繰り返し受注していた可能性を重点的に調べている。
一部の議員は不正疑惑を否定しているものの、監査委員会(COA: Commission on Audit)が指摘した不正支出について説明を求められている。
疑惑の規模は数十億ペソに及ぶ可能性があり、調査が進む中で、スイコ氏は「今回こそ本気で対処しなければならない」と強調した。







