【News】サマル島市長、DavSam(サマル島–ダバオ市)橋完成に向け交通整備を加速

サマル島

サマル島市(通称・Igacos:Island Garden City of Samal)のレムエル・トト・レイエス市長は、「サマル島–ダバオ市連結橋(以下SIDC、通称・ダブサム橋:DavSam Bridge)」の完成を見据え、同市の交通システム整備を進める方針を示している。

レイエス市長は2025年9月7日、専門会議を開催し、島の将来的な交通計画の策定に向けた議論を行った。会議には、ラフィー・T・トゥルフォ上院議員事務所の公共交通シニアコンサルタントで全国公共交通連合(NPTC:National Public Transport Coalition)会長のアリエル・P・リム氏、ダバオ市計画開発コーディネーターの弁護士エレアザル・ラペ氏、サマル島トライシクル運転手・事業者連合(Unatods:United Association of Tricycle Operators and Drivers of Samal)会長のエステリト・レノゴン氏、土地交通局交通安全課の代表者らが出席した。

サマル島情報局はFacebookの投稿で、「議論は、予想される車両や、観光客の増加に対応するための公共交通システムの準備、地方交通規則の見直し・強化、安全で効率的かつ持続可能な移動手段の計画策定に集中した」と伝えた。

レイエス市長は、地方自治体、国政府、地域の関係者が連携することで、島の成長を支え、住みやすさを維持できる未来志向の交通システムを実現できると強調した。

SIDCによる移動時間の大幅短縮と経済効果

SIDCは、通行料無料の4車線エクストラドーゼッド橋で、全長4.76kmにわたり、ダバオ市のR.カスティリオ通り–ダアン・マハルリカ通りとサマル島の環状道路を結ぶ。主径間は275m、海上交通のための橋下の航路空間は47m。海上区間は1.62kmに及び、高さ73mの主塔で支えられている。

プロジェクトには環状交差点、ランプ部、アプローチ道路も含まれる。

このプロジェクトは、中国からの政府開発援助(ODA)ローンにより資金提供され、DPWH統合プロジェクト管理事務所・橋梁管理クラスターが管理、中国路橋工程有限責任公司(the China Road and Bridge Corporation)が施工を担当している。

完成後は移動時間が大幅に短縮され、観光の活性化や、ダバオ地方全体の経済促進が期待されている。フェリー利用時の55分がわずか4.5分に短縮され、1日約25,000台の車両を処理できる見込みだ。

総事業費208億ペソの本プロジェクトは、2022年10月に着工し、2024年5月から本格的な土木工事に入った。

海洋環境への懸念と法的対応

一方、科学者で生物学者のジョン・ラクソン博士は、橋のクレーン作業区域下にあるサンゴがすでに死滅しており、工事の進行によりさらなる被害が懸念されると指摘。パラダイスリーフの約33%が既に工事によって死滅しているとし、「もし残りのサンゴも死滅すれば、重要な魚の供給源を失うことになる」と述べている。

また、アテネオ・デ・ダバオ大学(AdDU)法学部長で請願者の共同弁護人、マニュエル・キボッド弁護士は、作業用船舶の停泊、地盤調査用の穴掘り作業、土壌検査、クレーン設置などの工事活動が海洋生態系を悪化させていると指摘。

さらに、これらのサンゴ礁破壊は、拡張NIPAS法、ダバオ市条例第0861-22号(包括的土地利用計画2019–2028年)、大統領令第1586号(フィリピン環境影響評価制度)に違反していると述べている。

橋のルート変更を求める請願と裁判の経緯

2025年4月21日、住民や環境団体は重要なサンゴ生態系を脅かす建設活動の停止を求める「カリカサン令状(環境保護令状)」の請願を提出。請願者はプロジェクト自体は支持しつつも、海洋の生物多様性を守るためにルートの再設定を求めている。

カリカサン令状は、憲法で保障された「均衡の取れた健全な生態系への権利」が違法行為や怠慢で侵害された場合に発令される法的救済措置である。

最高裁判所(SC)全判事会議は、2025年7月1日、SIDCに対しカリカサン令状を発令し、公共事業道路省(DPWH)、環境天然資源省(DENR)、サマル島保護区域管理委員会、中国路橋工程有限責任公司を被告と指定。

裁判所は令状送達日から延長不可の10日以内に正式な回答書の提出を命じた。

しかし2025年6月10日、控訴裁判所(CA)は建設停止を命じる「仮環境保護命令(以下TEPO:Temporary Environmental Protection Order)」の発令を却下。TEPOは、環境被害が継続または発生する恐れがある場合に、訴訟の最終決定まで現状維持を命じる暫定措置である。

請願者はTEPO不発令に失望し、これがあればサンゴ礁や海洋保護区の損害を食い止められたはずだと訴えたが、環境弁護士のジェニー・ラモス氏は、訴訟自体は継続中で令状も有効だと説明している。

SIDCの工事進捗状況(2025年8月22日現在)

最新報告によれば、SIDCは2025年8月22日時点で41%の進捗率を達成。

工事は複数の現場で着実に進行中。ダバオ側・サマル側双方の陸上高架橋のための7基の高い橋脚柱が完成し、275mの主航路橋基礎工事も進行中。

サマル側では、鋼製ケーソンの防水工事準備が進められ、ダバオ側では防水コンクリートの底板が完成。検査後にケーソンの据え付け準備が行われている。

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