
控訴裁判所は、サマル島–ダバオ市連結橋(以下SIDC)プロジェクトに対する「仮環境保護命令(以下TEPO:Temporary Environmental Protection Order)」の発令を却下した。その理由として「工事の中断は公共の利益を損なうため」と判断した。
2025年7月11日、サマル市のマヌエル・トト・レイエス市長が公開した文書によれば、控訴裁判所は、建設がすでに進行している段階でTEPOを発令することは、「進行中の政府インフラ事業を妨げることとなり、公共の利益に反する」としている。
裁判所は、「仮の環境保護命令の申立てを却下する」と決定した。この決定文書には、アニサ・アマンディン=ウンパ陪席判事が署名し、エヴァリン・アレリャーノ=モラレス陪席判事およびジル・ローズ・ジャウガン=ロー陪席判事がこれに同意した。
レイエス氏は控訴裁判所の判断に対し、喜びをあらわにし、「これは最高の知らせです。橋の建設が続行されることを神に感謝します」と述べた。
TEPOとは、環境に被害を及ぼすおそれのある行為に対し、その行為を一時的に停止するよう裁判所が命じる仮の命令である。環境被害がすでに発生している、あるいは発生する可能性が高いと判断される場合において、環境訴訟の最終的な判決が下されるまで現状を維持することを目的としている。
2025年7月1日、最高裁判所(SC)は、公共事業道路省(以下DPWH)、環境天然資源省(DENR)、サマル島保護区管理委員会、および中国路橋工程有限責任公司(以下CRBC:China Road and Bridge Corporation)に対し、命令書の送達日から起算して延長不可の10日以内に、請願に対する認証済みの回答書を提出するよう命じた。また、最高裁はTEPOに関する審理を、カガヤン・デ・オロ所在の控訴裁判所に付託した。
「カリカサン(環境保護)令状」の請願は、2025年4月21日に、住民および環境保護団体によって提出されたものであり、重要なサンゴ礁の生態系を脅かす建設活動の停止を求める内容であった。請願者らは、橋梁建設プロジェクトそのものには基本的に賛成の立場を取っているが、海洋の生物多様性を保護するため、ルートの再設計を求めている。
「カリカサン令状」とは、違法な行為または不作為により、憲法で保障された「均衡の取れた健全な生態系への権利」が侵害された場合、またはそのおそれがある場合に、その権利の保護を求めて申し立てることができる法的救済手段である。
本プロジェクトは、中華人民共和国からの政府開発援助(ODA)によって資金提供を受けており、DPWH統合プロジェクト管理室・橋梁管理部門が管理を行い、CRBCが施工を担当している。
通行料無料の4車線エクストラドーズド橋は、全長4.76kmであり、ダバオ市のR.カスティーリョ通りおよびダアン・マハルリカと、サマル環状道路を結ぶ構造となっている。主径間は275mで、船舶航行に対応するための通航可能高は、47mを確保している。また、73mの高さを有する主塔に支えられた1.62kmの海上区間も含まれる。プロジェクトには、環状交差点、ランプ、アプローチ道路などの付帯施設も含まれている。
本橋の完成により、移動時間の大幅な短縮、観光の振興、さらにはダバオ地方全体における経済活動の活性化が期待されている。