【News】SIDC橋建設めぐり、ダバオ市議会が環境保護令状請求人とDPWHを招致

サマル島
奥にはMalipano island

ダバオ市議会第21期は、2025年7月15日に予定されている本会議で、「カリカサン(環境保護)令状」の請求人および公共事業道路省(以下DPWH)を招致することを決定した。これは、ダバオ市とサマル島を結ぶ「サマル島–ダバオ市連結橋(以下SIDC)」(別名:ダバオ–サマル橋/DavSam Bridge)プロジェクトに対し、最高裁判所が同令状を発出したことを受けた対応である。

ダバオ市第3区選出のダニロ・ダヤンヒラン議員は、請求人およびDPWHを招致するための決議案を提出し、その目的について「市民の利益のためであり、上級裁判所の手続きに干渉するものではない」と説明した。

市議会としては訴訟および土地収用の進捗状況について両当事者から直接説明を受ける意向である。

ダヤンヒラン議員は7月8日のダバオ市議会での記者会見で、「私は双方にとって利益となる解決策として、改めて検討することを提案します。もう一度見直せば合意に至る可能性もあるかもしれません。なぜなら、沿岸道路の整備を始めた当時には、カリカサン令状は一切提起されていなかったからです」と述べた。

ダヤンヒラン氏は、ルートの再設計には多額の費用と高度な技術的課題が伴うことを指摘し、納税者への負担を考慮すべきだと両当事者に呼びかけた。そのうえで、「状況に人間的な視点を取り入れ、現実を受け入れることも必要です。ときには物事をありのままに受け止め、共通の立場を見出す努力が求められます」と強調した。

また、SIDC事業の遅延は、サマル島(イガコス市)およびダバオ市の経済発展や税収に悪影響を及ぼす恐れがあると警鐘を鳴らした。さらに、事業の進行にかかわらず利子や元本の返済は継続され、その負担は最終的に公的資金で賄われることになると指摘した。

現状維持では交通費の削減につながらず、特にバージ(フェリー)の運賃が依然として高額である点も問題視。橋が完成すれば、利用者は長時間の待機や炎天下での移動を強いられることがなくなると述べた。また、移動時間の損失によって商業者や事業者、一般市民が被っている経済的損害にも言及した。

ダヤンヒラン氏によれば、建設の遅延は3~4年分の経済的後退を招く可能性があるという。

さらに、市議会が住民の声を反映した決議を可決する可能性があることも示唆した。ダバオ市およびイガコス市の住民の間では、SIDC建設の遅延に対する不満が高まっているという。ダヤンヒラン氏は「人々の考えは変わる可能性がある」と述べ、引き続き合意形成への希望を抱いている姿勢を示した。

第3区選出で院内幹事を務めるスイート・アドヴィンクラ弁護士議員も、ダヤンヒラン氏の見解に同意し、今回の招致は訴訟が現在も係争中であることを踏まえ、請求人および被請求人から進捗状況の報告を受けることを目的としていると説明した。

「質問内容は限られたものになります。基本的には進捗状況の確認にとどまる予定です」と述べた。

Sustainable Davao Movement(SDM)の弁護士ロメオ・ミョン・T・カバルデJr.氏は、議会との対話を歓迎しつつも、「この招致が私たちの主張を貶めたり、最高裁に提起した環境違反の論点から目をそらす口実に使われてはならない」と慎重な姿勢を示した。

環境天然資源省(以下DENR)ダバオ地方事務所は、2025年7月7日、サマル島保護区管理委員会(以下PAMB)と会合を開き、最高裁の令状発出を受けて環境影響評価について協議した。イガコス市長レミュエル・T・レイェスが会議を主宰し、新市庁舎の会議室には16名の委員や国家経済開発庁(NEDA)、沿岸警察、市民防衛庁(OCD)、各環境局、地域代表などが出席した。DENRの法務担当官トリシャ・アン・サマンサ・S・アリガト弁護士が、請願内容と法的影響を説明し、SIDCプロジェクトに対する環境訴訟の概要を委員に分かりやすく伝えた。

ダバオ・デル・ノルテ州知事エドウィン・ジュバヒブ氏は、オンラインで参加し、橋が完成すればダバオ市とイガコスを結ぶ唯一の交通手段であるバージによる輸送時の油流出リスクが軽減されると指摘した。また、ミンダ・バランガイ(行政区)評議員ケネス・デービッド氏は、DPWHによるSIDC支援決議案を提案し、全会一致で可決された。

最高裁は2025年7月1日、DPWH、DENR、PAMB、そして施工を担当する、中国路橋工程有限責任公司(CRBC)に対し、令状執行から10日以内に正式な回答を提出するよう命じた。環境保護団体はこの決定を歓迎し、「環境や地域住民の福祉を損なう開発は許されない」という強いメッセージが発せられたと評価している。

ダバオ市長代行セバスチャン・バステ・ドゥテルテ氏は、最高裁の判断を尊重しつつも、「市民やサマル島の住民がこの橋の完成をどれほど長く待ち望んでいるかを忘れてはならない」と述べた。イガコス市長レイェス氏も同様の考えを示し、この橋を「地域間の連結性や移動性、経済発展に不可欠な重要インフラ」と強調し、市としてプロジェクトを全面的に支持している。

一方、DENR-Davaoは7月2日に令状の受領を正式に認め、回答を提出する予定であることを明らかにした。DPWHは正式な停止指示が出されていない限り建設を続ける意向を示し、法的手続きを遵守しつつ計画を進めていくと述べた。

このSIDCプロジェクトは、中国からの政府開発援助(ODA)によって資金提供され、DPWHの統括プロジェクト事務所・橋梁管理部門が管理し、中国路橋工程有限責任公司(the China Road and Bridge Corporation)が施工を担当している。

【News】ダバオ市-サマル島間の橋建設、観光団体が珊瑚礁のため計画再編を求める

【News】ダバオとサマル島を繋ぐ橋のプロジェクト、10倍の資本を呼び込む可能性

【News】ダバオの情報ポータルサイト「ダバオッチ」でサポーター募集開始!

c94f801b2b7c09c2a0f879e7150e1347-300x131.png

ビザ・レンタカー・通訳・翻訳なら | ダバオの日系旅行会社