戦後78年を迎える2023年の3月26日、昨年11月3日に戦後に日系人の救済に尽力してきた女性に「旭日単光章」が授与され、その伝達式が行われた。
旭日章は、経済、福祉、教育、研究、文化などに優れた功労があった者が表彰される。酒井ミチコ(Estelita Michiko Sakai Roales)氏(86)は、多くの日系人が日本国籍を取得するのを支援したことで、今回の授与に至った。同様に日系人への救済に尽力してきたとして昨年、ミンダナオ国際大学の学長であるイネス・山之内・マリャリ氏にも旭日中綬章が授与されている。
日系人とは、第二次世界大戦前または戦時中にフィリピンに移住した日本人と、現地のフィリピン人との間に生まれた子供たちを指す言葉である。
コタバト市で過ごし、現在ダバオに居住するの酒井氏は、戦災を被った日本人の子孫の会であるコタバト日系人会の初代会長を務め、その功績から、天皇陛下代理の石川義久ダバオ総領事から勲章を受け取った。授与はダバオ市の日本総領事館で行われ、伝達式はウォーターフロントインシュラホテルダバオで開催された。
石川ダバオ総領事によると、酒井氏はフィリピン、特にコタバト地域の日系人やフィリピン人の福祉を向上するのに大きく貢献したことが授与に至った経緯のひとつであるという。同氏はコタバト日系人会の会員が日本国籍を取得するために必要な書類などを集める際に重要な役割を果たしたとのことだ。
酒井氏は戦後、自らも日本人の子孫という理由で差別や迫害を受けた。それでも他の日系人に対して、日本国籍を取得し、日本で生活できるように支援を続けた。彼女自身も戦後数十年が経ち、日本の親戚との再会を果たしている。
このような日系人の日本国籍取得は、彼女のような人物の尽力なしでは不可能だった。「もはや戦後ではない」とはよく聞く一節だが、そう考えられるまでにどれだけの努力があったのかにも思いを馳せたい。