【コラム】ダバオ土地所有をめぐる軋轢をやわらげたのは、多くの国際結婚だった<前編>

入植者とバゴボ族との緊張関係を和らげていったのが、日本人入植者と結婚したバゴボ女性たちの存在だった。国際結婚した彼らが、土地をめぐる両者の紛争の仲介役を果たしたのだ。当時のフィリピン公有地法では、外国人が個人で土地を所有することは禁じられていたため、結婚することにより、親族の土地として合法的かつ平和的な土地の取得も実現した。

©PNLSC 竹筒で水運びをするバゴボ族

日本とバゴボの文化の近似性が非常に高かったという点も、国際結婚がうまくいった理由のひとつと考えられる。農作民族であること、族長や両親の決定に従うといった家長制であったこと、民族神話などの類似性など、似通った点がいくつも見られるのが特徴だ。

また、家族ぐるみで移住した満州などの移住者と異なり、単身で移住した独身男性が多かったことも、ダバオ入植者の特徴の一つとしてあげられるだろう。地元の女性と結婚した日本人移住者は、現地の言語であるチャバカノ語やバゴボ語を覚え、地域の伝統的風習も取り入れながら、妻の親族との血縁関係を広げ、地域社会に溶け込んで生活していた。