【News】フィリピン初の先住民族ティーンセンター、ダバオに開設 — 若者の健全育成と文化的成長を支援

カダヤワン 文化

国家先住民族委員会ダバオ地方事務所(以下NCIP-Davao)は、フィリピン初の先住民族(以下IP:Indigenous Peoples)向けティーンセンター開設計画を発表した。

NCIP-DavaoのIPユース担当官、エステリト・L・オカンポ氏によると、同事務所は保健省(DOH)および人口開発委員会(以下CPD)と連携し、「優良自治体認証制度(Seal of Good Local Governance)」に基づき、ティーンセンターの設置を進めているという。

オカンポ氏は、ダバオ市パキバト地区バランガイ(行政区)マラボグに建設される「IPティーンセンター」が、先住民族の若者の身体的健康を支えるだけでなく、全人的な成長を促す包括的な支援拠点となることを目指していると説明した。

さらに、若者に生計支援や技能訓練を提供するため、労働雇用省技術教育技能教育庁(以下TESDA)とも連携しているという。「IPティーンセンター」は、先住民族の文化を再活性化するとともに、IPの若者が地域社会のリーダーとなることを目指している。

オカンポ氏は、「IPティーンセンター」が他の既存のセンターと異なる点として、文化の保全、地域社会に根ざした経済開発、そして思春期の性教育に重点を置いていることを強調した。また、同センターがIPメンバー自身によって運営されることで、若者たちは自分の経験や課題をより安心して共有できるようになると述べた。

さらに、施設設置の重要性についても指摘した。ダバオ地方では、HIV感染者が増加し、影響を受ける多くが若者である。また、先祖代々の土地内での自殺や性的暴行、10代の妊娠などの事例も増加しており、先住民族の若者を支援する機関の必要性が高まっていると述べた。

オカンポ氏は、2025年11月10日に開催された「カペハン・サ・ダバオ(Kapehan sa Dabaw)」フォーラムで、「このセンターは、IPの若者だけでなく、先住民族文化コミュニティ全体の包括的な成長を支える拠点となり得る」と述べた。また、フィリピン国内でのパイロットプロジェクトを契機に、他の州や地域でも独自の『IPティーンセンター』設置が進むことを期待していると語った。

オカンポ氏はまた、マラボグの施設は改修が必要であることを明らかにし、センターを若者にとってより快適かつ機能的な場所にするため、民間団体や他の政府機関との協力を歓迎すると述べた。

センターは2026年1月までに完成予定で、稼働後は約2,000人の利用者に対応できる見込みである。

若者の成長を支える安全な居場所

フィリピン全土で、ティーンセンターは若者の健康、保護、エンパワーメントを促進する重要な拠点となっている。

CPDが2024年に発表した報告によれば、これらのセンターは若者にとって安全な居場所となり、性に関する正確な情報や心の健康、生活に必要な基本スキルなど、従来の教室では十分に取り扱われない分野にアクセスできる場を提供している。

CPDによると、全国で1,000以上のティーンセンターが設置され、10代の妊娠、薬物乱用、心の健康問題の増加に対応している。

DOHとCPDの2024年報告書は、青少年の健康問題がしばしば相互に関連していることを指摘している。

フィリピンHIV・エイズ登録によると、15~24歳の感染者は増加傾向にあり、現在、国内の新規感染者の約30%を占めている。この数字は、若者を中心とした早期の意識啓発と責任ある意思決定を促す介入の重要性を示している。

身体的健康に加え、ティーンセンターは心の健康やジェンダーに基づく暴力にも対応している。

ユニセフ・フィリピンおよび世界保健機関(WHO)の2023年のデータによれば、自殺はフィリピンの若者の主な死亡原因の一つであり、性的暴力や搾取の事例も、特に農村部や社会的弱者のコミュニティで増加している。

ティーンセンターでは、カウンセリング、ピア教育、専門家やソーシャルワーカーへの紹介サービスを提供し、困難を抱える若者が適切な支援を受けられるようにしている。

IPティーンセンターの独自性

バランガイ・マラボグの「IPティーンセンター」は、文化に根ざした若者育成アプローチを採用している点で他と異なる。

一般的なティーンセンターが健康教育やスキル訓練に重点を置くのに対し、「IPティーンセンター」では文化の保存、経済的自立、地域リーダーシップをプログラムに統合している。

このアプローチは、教育や医療へのアクセス制限、根強い差別、伝統的価値観の喪失など、複数の障壁に直面するIPの若者を現代社会の課題から守る役割を果たす。

同センターは、先住民族の伝統、価値観、言語を活動に組み込むことで、文化的アイデンティティを強化しつつ、現代的な健康・ウェルネス知識を普及させることを目指している。オカンポ氏は、IPの若者が自分たちの文化が尊重され、プログラムに反映されていると感じることで、性や心の健康などのデリケートな問題についても話しやすくなると強調した。

この文化に基づくモデルは、先住民族の教育や社会プログラムをより包摂的かつアクセス可能にすることを提唱するユネスコの包括的教育の枠組みとも整合している。

さらに、TESDAとの連携により、「IPティーンセンター」には実用的・技術的なスキルを習得できる就業支援の要素も加わる。

若者はこれにより、家族やコミュニティを支える力を身につけることができる。この健康・文化・就業支援の統合により、「IPティーンセンター」は単なる福祉拠点ではなく、先住民族の若者が自立し、リーダーシップを発揮できる道を提供する場となっている。

ダバオ地方がこの取り組みを先導する中、NCIPは、このモデルが国内の他の自治体にも広がり、健康で力を持ち、自らの文化に誇りを持つ先住民族の若者世代の育成につながることを期待している。

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