海外に滞在する上で欠かせないのがビザ。ビザにもさまざまな種類があるが、2020年からのパンデミック以降で発行が急増したのが、リモートワークをするノマドワーカー向けのデジタルノマドビザだ。フィリピン下院は、このような目的で入国する旅行者を増やすため、フィリピンでもデジタルノマドビザを発給することを要求している。
ミンダナオ島のスリガオデルノルテ州のFrancisco Jose Matugas II議員は、この地方が、インターネット速度がフィリピン国内で最も遅い場所の1つであるにもかかわらず、この下院法案第8165号の成立を望んでいる。「この法案を提出することにしたのは、1つには、この国には美しいビーチがあり、それはこの種の労働者にとって一番の魅力だからだ。消費能力のある観光客を呼び込むために、デジタルノマド法を制定する時期が来ている」と同氏は5月24日に語った。
デジタルノマド法の制定を思い立ったきっかけは、ドバイで開催されたトラベルフェアに参観した際、中東に住むデジタル技術の専門家たちから「フィリピンはヨーロッパ諸国のようなビザを発給しているのか」と聞かれたことだったという。
Matugas議員は、このようなビザの申請者にとって、フィリピンのインターネット回線の遅さがネックになる可能性については、以下のように語った。「インターネットの電波に関しては、主要な島々のほとんどが既に平均上の速度が出ている。消費者にとっても、サービスを供給するプロバイダーの選択肢が増えている」
同議員の草案では移民局(以下BI)がデジタルノマドビザを発行することになっている。これは、他の54カ国が現在発行しているものと同様の様式だ。パンデミックを機に発生したデジタルノマドワーカーの急増という現象を利用し、多くの国が、曽於国に滞在し、他の国にいる雇用主や企業のためにリモートでは働く権利を与えるビザを提供しているという。
下院法案第8165号では、「フィリピン共和国以外の国で雇用されている外国人は、BIに申請すれば、フィリピンで働くためのデジタルノマドビザを12ヶ月間、さらにその後更新すれば追加で12ヶ月間取得できる」ことになっている。
ただし、受給者は18歳以上で、フィリピン国外で得た十分な収入を証明することができ、ビザが付与される期間をカバーする有効な健康保険に加入している必要がある。また、母国での犯罪歴がないことや、フィリピンにとって脅威と見做されないことが条件となる。
デジタルノマドビザ保持者は、課税上フィリピンの居住者としては記載されず、海外の雇用主から受け取る収入はフィリピンからの収入とはならない。「デジタルノマドビザを取得した外国人は、フィリピンで雇用されてはならない」と法案は強調する。
現在デジタルノマドビザを発給している国はヨーロッパや中南米に多いが、東南アジアやアフリカにも動きが広がりつつある。ノマドワーカーはその国で一定期間生活を営むため、短期の旅行者よりも多くの消費が見込める。世界市場のニーズに応えるために、フィリピンのデジタル化もますます進むだろう。