ミンダナオ島南部レイクセブ周辺の少数民族ティボリ族のグループが、ソクサージェン地方で伝統的な作物と農業技術の回復に取り組んでいる。
今年4月に植えた稲が9月に収穫されるまで、ラネル・サムルデ氏(44)は天候不順も苦にせずに仕事を続けている。日中の気温が高くても、午後に雨が降り始めても、傾斜のある高台の畑では、耕運機で土地を耕し、10種類以上の伝統的な稲を育てている。
サムルデ氏は収穫量を増やしたいと考えており、親から何年も前に教わった伝統的な農法にこだわっている。「化学肥料を使わない安全な米が必要。肥料や殺虫剤を買う必要がないので、経済的だし、それでも60袋分躯体は収穫できる。土壌は害虫が少なく、収穫後も肥沃な状態を保てる」とのことだ。
何十年もの間、ティボリ族の食糧システムは、化学合成肥料や化学製品を使用した商業的農法の導入により崩壊し、軽視されてきた。高価値作物の栽培は、地元で栽培されていた陸稲の衰退に繋がった。陸稲はハイブリッド種に取って代わられるにつれ、ティボリ族の伝統的な農法は次第に衰退し、実践者はごく少数となった。
しかし、試験農場の設立により、ティボリ族コミュニティの共同体意識が再燃し、伝統的な陸稲栽培を復活させるという共通の目標に向かって結束が強化された。レイクセブの町では、Lem Bulul農民組合(以下LAF)と呼ばれるティボリ族のグループによって、1ヘクタールの試験農場が運営されている。LAFのリダ・サマル氏は、「この組合は、試験農場に在来品種の種を植え、持続可能性を確保するために共同体意識の向上を目指している」と述べた。また、幹事のウェルナ・サムルデ氏は、陸稲は主に家庭内での消費に回されており、「収穫物を市場に出すことはしない」と語った。
レイクセブ周辺の3つの村の先住民族は、種子バンク都市圏農場の運営を開始し、伝統的な方法を継承し、試験で成果の出た伝統的な品種を利用することに同意した。試験農場は社会的な活動へと発展し、作物のブランディングや維持管理に先住民族の農民全員が参加するようになった。
ティボリ族というとティボリ織(ティナラク)が有名で、その技術が現在も受け継がれているが、農業でも独自の技術を復活させようという動きがあるようだ。農業という点だけでなく、先住民族の共同体の成功例の1つとしても興味深い。今後の組合の運営にも注目したい。