【コラム】初めてダバオでジープに乗った日のこと(後半)

少し理解不足のまま、私が隣席の男性にお札を渡すと、私のお札は人から人へ手渡され、運転手の横に座る男性のところまで届けられた。そしてまたその逆ルートで私のところまでおつりが戻ってきたのである。戻ってきたお金を手にした私が、大げさに“すごいね”というようなポーズを見せたら、女子学生たちも同じように、とぼけたポーズでリアクションした。その時、狭い車内で押し黙っていた乗客たちの空気がすこし和んだような気がした。

私たちの乗ったジープは途中で降りる人もなくMKD近くまで来たので、次に私は降りる時の合図の方法を聞いた。「ジープの壁を2~3回コンコンすればいいです」ということだった。合図を出すタイミングを計りかねていた私に、彼女たちが、「先生、今」と声を出した。私は彼女たちが出したサインに従ってジープの壁を2回コンコンとたたいた。そうすると、程なくその合図に気づいたドライバーが、交差点の手前で停車した。

市内を走る電気自動車バス

たったそれだけの経験であったが、私はダバオの人たちの日常に近づいたような気になった。ダバオを中心としたミンダナオの町々も、今日では交通網の近代化が叫ばれ、道路の整備やバス路線の拡張、鉄道の敷設などが急速に行われようとしている。それらはそこで暮らす住民たちにとって大きな利便性をもたらすものであることには違いないが、同時にダバオがどこにでもある無個性で画一的な都市になってしまう兆しでもある。

かつて私は、MKDの学生たちに、ジープがこの街の大変貴重な観光資源になる可能性について語ったことがある。私にとってのダバオの原風景の中に必ず現れるジープが、これからも何らかの形で持続しつづけることを願わずにはいられない。