【コラム】その時ダバオの大学生たちは落胆の表情を見せた

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谷口 知司(たにぐち ともじ)
1955年生まれ。ミンダナオ国際大学客員教授 元京都橘大学現代ビジネス学部ならびに同大学院文化政策学研究科教授。
東北大学大学院教育情報学教育部博士前期課程修了 博士(文化政策学)専門 観光学、文化情報学。
初めてダバオを訪問した時からそのポテンシャルを感じ、ダバオ観光の発展を願っているダバオファン。ダバオッチ創設者ハセガワ氏は彼がまだNGOに勤めていた頃からの友人である。
主要著作に、『ひろがる観光のフィールド』(共編著、晃洋書房、2020年)、『これからの観光を考える』(共編著、晃洋書房、2017年)、『デジタルアーカイブの資料基盤と開発技法』(共編著、晃洋書房、2016年)など。


もう1年以上も前のことであるが、ミンダナオ国際大学の学生たちを前に観光とは何かという講義をした。少し難しい話も含めることにして、前々回のコラム(「ダバオの観光発展とまちづくりはワカモノ、ヨソモノ、バカモノの三バカが重要なキーワード」)に書いた観光の語源についても語ったことを思い出す。その時に、持参したのが、日本の代表的な観光情報誌である「るるぶ」のフィリピン版(発売日:2017/12/8)であった。

日本語を学ぶミンダナオ国際大学の学生

いかにも「るるぶ」らしい色鮮やかの表紙には、南国のリゾートの海岸線(セブ)と椰子の木、そしてじんべいざめ、セブからの日帰り観光圏として売り出し中のボホール島のチョコレートヒルと世界最小の可愛いおさん(ターシャ)、そしてマニラ大聖堂の写真が飾られていた。

「るるぶ」という名前は、日本語の“みる、たべる、あそぶ”という言葉から出来ているのだということ、現在の観光の定義からすると少なくとも“まなぶ”という要素が欠けているよねという話もした。こうした話を真剣に聞いてくれていた学生たちに、私は「この雑誌にダバオのことはどのように紹介されていると思う」という意地悪な質問をした。

学生たちからは「サマル島」や「アポ山」、「ショッピングモール」、「イーグル・ファウンデーション」、「日本人会」などと回答が返ってきた。私はこんな質問をしたことに少し罪悪感を覚えながら、「実はダバオのことは何も書かれていない」と答えた。その時、ダバオの大学生たちは想像だにしなかった返答に落胆の表情を見せたのである。