【コラム】ダバオとの出会い~ ダバオを初めて訪れたときのことなど~(4)

同行のS氏とNGOのT氏が何やら小声で話しているなと思っていると、私たちの乗った車が急に一軒のフルーツを売る露店の前に止まった。どうやらドリアンを食べてみようということになったらしい。幾度ともなくこのダバオを訪れているS氏であるが、あの刺々しいグロテスクな外見をし、何とも言えない香りを発するドリアンを食べたことがなかったようで、私たちと一緒に挑戦してみようということになったらしい。

ドリアンスタンド(マグサイサイパーク)

ドリアンと言えば、「果物の王様」とも称されるが、これほどまで好き嫌いが分かれる果物もないと言われている。表面は固い鎧のような棘で覆われており、軸から果頂部を中心に、5つの膨らみがあり、その膨らみそれぞれの中に果肉が詰まっている。その香りは、「腐った玉ねぎ」、「都市ガスのよう」、「おならのよう」など、悪臭以外何物でもないと言わんばかりに例えられるが、そのためダバオのホテルでも持ち込みは禁じられているところが多い。

店員によって鉈のような刃物で真っ二つに割られたドリアンの中には、乳白色の果肉が詰まっていた。ドリアンに対するあまりにもネガティブな先入観と、すぐそこから漂ってくる強烈な香りに一瞬たじろいだが、日ごろから好奇心とチャレンジ精神だけは旺盛な私はそれを手づかみして口に入れた。ドリアンの果肉はひどく粘々しており、種を巻き込んでいる。

その特有の香りは、いつまでも口の中に匂いとして残り、またゲップとしてさらに口に戻ってくる。手に付いた匂いもそう簡単には拭き取れない。味はうまいとは思わなかったが忌み嫌うほどのものではない。すすめられれば食べましょうというレベルである。実はこの話をダバオッチの長谷川氏にした時、彼はもっと美味いドリアンがあるが今はその季節ではないと言っていたようにも思う。S氏のその時の反応はどうだったか覚えていないが、女房はとうとう口にすることがなかった。