フィリピン人権委員会(以下CHR:Commission on Human Rights)は、マギンダナオ・デル・スール州パガルンガンのバランガイ(行政区)ラヨグで行われたとされる「Operation Supak(反抗者取り締まり作戦)」について、「深刻な懸念」を表明した。
2025年11月11日付の「コタバト市・89.3ブリガーダ・ニュースFM」の報道によると、バランガイの職員は、「市長の指示に基づき行動したとされる」として、同性愛者と見なされた住民の自宅を訪問したという。これらの住民は、バランガイ庁舎への報告を求められ、同居する同性の成人カップルは、離れ離れにされる状況に置かれたと伝えられている。
CHRが引用した録画インタビューでは、あるバランガイ職員が、これらのカップルについて「世俗の法律で禁止されており、イスラム法ではさらに禁止されている」と述べている。
CHRは声明の中で、「このような行為は、LGBTQIAの人々の尊厳と権利を侵害するものである」と強調し、報告されている行為が「性的指向とみなされたことを理由に個人を違法に標的にしている」と指摘した。
同委員会は、こうした行為がLGBTQIAのメンバーに対して嫌がらせや差別をもたらすだけでなく、「プライバシーの権利」や「人身の安全の権利」を侵害するものであると述べた。
CHRはさらに、報告された行為は、憲法上の保障や国際人権基準に違反する可能性があると指摘し、特に「法律による平等な保護、差別の禁止、プライバシー、恣意的な干渉からの自由(世界人権宣言第12条、国際人権規約第17条)」に抵触するおそれがあると述べた。
国内法の観点からも、同性愛者と見なされたカップルを標的にすることには法的根拠がなく、女性が女性と、男性が男性と同居することを禁止する法律はフィリピンには存在しないと強調した。
一方で、CHRは、ジェンダーに基づく性的嫌がらせ(ホモフォビアやトランスフォビアを含む)を処罰する「セーフ・スペース法(RA 11313)」や、性的指向に基づく差別を含む女性に対する差別を禁止する「女性基本法(マグナ・カルタ・オブ・ウィメン、RA 9710)」の規定を挙げ、LGBTQIAコミュニティを含む法的保護の枠組みが存在することを示した。
フィリピンが世俗国家であることを改めて強調した上で、CHRは宗教の自由は極めて重要であるものの、「これを理由に、公務員が政府の資源や施設を用いて、性的指向とみなされた個人を標的にする行為を正当化することはできない」と指摘した。
同委員会は、公務員は「法の支配に従う立場にあり、いかなる状況下においても憲法上および国際的な人権義務を遵守することが求められる」と述べた。
さらにCHRは、「本件について、CHRミンダナオ第12地方事務所(CHR-XII)を通じ、バンサモロ人権委員会と緊密に連携しながら調査を開始した」と明らかにした。
CHRはまた、大統領令第51号に基づくLGBTQIA+問題に関する大統領特別委員会に対し、引き続き対応を行い、保護および支援サービスの提供における各機関間の連携を確実にするよう促した。
さらに同委員会は、バンサモロ人権委員会および内務自治省(MILG)に対し、公務員の行為の法的根拠を調査し、影響を受けた個人に接触するとともに、必要に応じて「行政上または刑事上の責任を追及すること」を求めた。
CHRはジェンダー・オンブズマンとしての立場を改めて示し、「性的指向、性自認、性表現、性特徴(SOGIESC)に関わらず、すべての人は法の下で平等に尊厳を保持し、保護される権利を有しています。個人の存在や愛する人を理由に標的にする行為は、人権を尊重する社会では決して許されません」と強調した。
執筆時点で、マギンダナオ・デル・スール州知事およびバンサモロ政府は、報告およびCHRの声明に対して正式なコメントを発表していない。






