ASEANの存在意義を称える2020年という記念の年に、国家文化芸術委員会(National Commission for Culture and the Arts、以下NCCA)はフィリピン・ASEANデジタルアートコンテスト2020を開催した。そして、このコンテストで3位に入賞したのは、ダバオ・デ・オロ州のデジタルアーティスト「ランドルフ・レラド」氏である。
今回の大会のテーマは「コロナ禍のASEAN」であった。ランドルフ氏が完成させた作品のタイトルは「Resurgence」、復活という意味の言葉だ。同氏の作品には、新型コロナウイルス(Covid-19)と最前線で戦う医療従事者が配置されている。そして、彼らが手に持っているのは青緑色の武器である。同氏によると、これはワクチンをイメージした色だそうだ。スーパーマンやバッドマンからインスピレーションを得た構図は、まさにCovid-19と戦うフロントライナーそのものだ。
ランドルフ氏は、この作品に込めた思いについて、「近い将来、Covid-19が収束するようにという願いを込めました。ワクチンを接種してCovid-19に感染した人たちが回復する様子、社会が元どおりに戻っていく様子、それらの意を込めて【復活】というタイトルにしました」と語っている。
コロナ禍は、芸術家にとっても大きな影響を与えている。芸術を必要とする人の数は減り、芸術家たちの収入も落ち込んでいるという。しかし、ランドルフ氏はこれを「自分の作品にインスピレーションを与えるきっかけになった」と語った。芸術には、その時の社会の様相を次の世代に伝える役割がある。ランドルフ氏の作品は今後数十年、数百年と経ったとき、そのときの人々にコロナ禍の社会や人々の様子を伝えていくのだろう。そして同時に、コロナ禍で懸命に生きる人々に希望を与えていくだろう。