
10月10日の朝、ダバオ・オリエンタル州マナイ沖でマグニチュード7.4の強い地震が発生し、ミンダナオおよびビサヤ地方の広範囲が揺れに見舞われた。この地震により、ダバオ地方では少なくとも3人が死亡、数百人が負傷し、沿岸部では一時的に津波警報が発令され、多くの住民が避難した。
フィリピン火山地震研究所(以下Phivolcs)によれば、地震の発生時刻は午前9時43分であり、震源はマナイの南東約62キロ、深さ23キロの地点に位置していた。地震はプレート型(テクトニック型)であり、ダバオ市、ジェネラル・サントス市、東ビサヤの一部でも揺れが観測され、ダバオ市では震度5を記録した。
警察の発表によると、ダバオ市アグダオ地区のバンゴイ・プロック3に住む80歳の男性が、地震により落下したコンクリート片に直撃され負傷した。男性は南フィリピン医療センター(SPMC)に搬送されたが、午前10時28分に死亡が確認された。
ダバオ・オリエンタル州の広報官であるロベラ・タクデル弁護士は、10月10日の午後4時30分時点で、マティ市およびルポン町においてそれぞれ1名、計2名の追加の死亡が確認されたことを明らかにした。これらの事案に関する詳細は、現在も確認中である。
ダバオ市災害リスク管理局(以下CDRRMO)セントラル911によれば、同局は失神や軽傷を負った計347人に対応したという。ダバオ市政府によると、すべての患者には迅速な医療処置が施されており、容体は安定しているとのことである。
パナボ市においては、CDRRMOおよび市保健局が、負傷者3名および不安発作を起こした7名を含む、計10名に対して支援を行った。
ダバオ・デ・オロ州では、マワブ町にあるロレンツォ国立学校で複数の生徒が軽傷を負い、またマナット国立高校では3名の生徒が失神したことが報告されている。
土砂崩れおよび停電
ダバオ・デ・オロ州政府は、マラグサンのランガウィサン地区およびパンツカンのグマヤン地区において、土砂崩れが発生したことを確認した。
フィリピン国家送電公社(NGCP)は、今回の地震によりミンダナオ送電網の3本の送電線が停止したと発表した。停止したのは、「ダバオ-トリル間」および「ナブントゥラン-アスンシオン間」の69kV送電線、そして「ナブントゥラン-マサラ間」の138kV送電線である。この影響により、ダバオ市、ダバオ・デル・ノルテ州、ダバオ・デ・オロ州の一部地域で一時的な停電が発生した。なお、ミンダナオのその他の地域における送電は引き続き安定していると同公社は報告している。
また、ダバオ市消防局(以下BFP)の特別救助部隊(以下SRF:Special Rescue Force)は、地震発生後、サン・ペドロ・カレッジの6階で発生した化学薬品の漏洩に対応した。
BFPの声明によれば、「SRF隊員が化学物質の封じ込め作業を実施し、さらなる曝露や危険の発生を防止した。救助隊は、学生、教職員、および近隣住民の安全を確保するため、適切な安全手順および除染手続きを厳格に実施した」とのことである。
津波警報と避難
Phivolcsは、地震発生直後に津波警報を発令し、ダバオ・オリエンタル州、スリガオ、レイテ、東サマールの住民に対し、高台への避難を呼びかけた。タンタグ潮位観測所では、午前10時20分に約30センチの小さな津波が観測された。
午後1時43分、Phivolcsは破壊的な津波は発生しなかったことを確認し、津波警報を解除した。
南東ミンダナオ沿岸警備区(CGDCM)は、津波警報の期間中、同地域内のすべての海上交通を一時停止した。「当区の管轄海域を航行するすべての船舶および水上交通手段の運航は、追って通知があるまで停止とする」と発表した。
ダバオ政府の対応
ダバオ市政府は警戒レベルを「最高警戒レベル」に引き上げ、すべての緊急対応資源を余震に備えて事前配置した。
市の技術者らは公共事業道路省(DPWH)と連携し、主要な橋梁(バンケロハン橋、ボルトン橋、ダバオ川橋、サンラファエル橋)の点検を実施。その結果、構造的な損傷は確認されず、すべて通行可能であると発表された。
民間航空庁(CAAP)ダバオ支局長のレックス・オブセナ技師は、ラジオインタビューにおいて、「全国すべての空港は通常通り運用されており、当空港においても構造物や航空航法設備に目立った損傷や安全上の懸念は確認されていない」と語った。
ダバオに向かう2便が一時的に他の空港へ迂回されたが、滑走路に確認された小規模な反射亀裂の点検後、空港業務は正常に戻った。
休校・業務停止
ダバオ地方の複数の地方自治体(以下LGU)は、施設の安全確認を優先するため、授業および業務の一時停止を決定した。
ダバオ市政府は、公立・私立のすべての学校および政府機関での授業および業務を一時中止とした。ただし、緊急対応・医療・治安関連の機関は除外された。
「民間企業や事業所に対しては、業務の停止または在宅勤務の導入を推奨するが、その実施は各事業者の判断に委ねる。ただし、従業員の安全と利便性を最優先に考慮することを求める」と市は表明した。
ダバオ・デル・ノルテ州政府は、州災害リスク管理局(PDRRMO)による覚書第15号を通じて、公私を問わずすべての機関での業務・授業の中止について、各市町村の首長の裁量に委ねると発表した。同覚書には、エドウィン・ジュバヒブ知事の署名がある。
また、タグム市、パナボ市、サマル島市、ダバオ・デ・オロ州も授業および業務を一時中止した。
サマル島の広報は、Facebookを通じて「すべての学校関係者、教職員、公務員は、施設点検において地方建築当局との連携を取るよう指示されている」と発信した。
震源に最も近いダバオ・オリエンタル州は、行政命令第67号を発出し、すべての教育機関および政府機関での授業・業務を中止するとともに、危険地域に住む住民の避難を命じた。
「州政府は、すべての住民に対し、冷静さを保ち、警戒を怠らず、当局からの正式な情報を待つよう呼びかけている」と発表している。
国の呼びかけ
フェルディナンド・マルコス・ジュニア大統領は、すべての政府機関に対し、避難の実施、通信手段の確保、LGUとの連携を指示した。
「被災地域の皆さん、どうか冷静に、そして警戒を怠らずにいてください。安全が確認されるまで高台に避難し、海岸から離れていてください。地域の災害対策本部やバランガイ(行政区)当局の指示に必ず従ってください。皆さんの安全が最優先です」と呼びかけた。
サラ・ドゥテルテ副大統領は、南ミンダナオ地方事務所を通じて、状況を注視し、LGUへの支援体制を整えていると述べた。
「地震の影響を受けた方々に対しては、不安や恐怖を和らげるため、特に子どもたちには心理的応急処置(PFA:Psychological First Aid)を受けるよう呼びかけたい。また、余震に備えて緊急避難バッグ(Go Bag)を準備し、すぐに取り出せる場所に保管することも重要です」と述べた。
フィリピン海溝とは
今回の地震は、フィリピン東方沖にある深海の沈み込み帯「フィリピン海溝」を震源として発生した。この海溝では、フィリピン海プレートがフィリピン移動帯の下に沈み込んでおり、莫大な地殻圧力が蓄積されている。このため、地震活動が非常に活発なエリアである。
フィリピン海溝は、ミンダナオ東部からインドネシアのハルマヘラ島方面に南北に延びており、年間3.2〜5.4センチの速度でプレートが移動している。この地域では浅発地震が多く、強い揺れや津波を引き起こすことがある。
同様の地震は、2012年・2021年・2023年にもこの海溝沿いで発生しており、フィリピンが「環太平洋火山帯(リング・オブ・ファイア)」に属する地震多発国であることを改めて示している。
引き続き警戒を
フィリピンは、複数の活断層や沈み込み帯の上に位置しており、年間に数百回の地震が観測されている。今回の地震のわずか11日前にも、セブ島で発生したマグニチュード6.9の地震により74人が死亡し、7万棟以上の家屋が損壊した。
Phivolcsは「余震は今後も予想されるが、新たな津波を引き起こす可能性は低い」とし、市民に対し、引き続き警戒を怠らないよう呼びかけている。