
ダバオ市議会(第21期)は、2025年9月23日に開催された市議会本会議において、市内在住のすべての対象となる障がい者に対し、年間1,500ペソの経済的支援を行う条例を第2読会にて可決した。
本条例は、第3選挙区選出のロレンツォ・ベンジャミン・D・ビラフエルテ市議によって提案されたものであり、対象者はダバオ市政府から年額1,500ペソの支援金を受給できるものである。
この支援の対象となるためには、ダバオ市障がい者支援課(以下PDAO:Persons with Disability Affairs Office)が発行する有効な障害者IDカードを所持し、かつ市内の有権者として登録されていることが要件である。その他にも、いくつかの条件を満たす必要がある。
条例文には、「本条例は、対象となる障がいのある方が、医薬品の購入、補装具の利用、交通費、専門的な療法等、障がいに関連する諸費用をまかなうための一助となることを目的としている」と記されている。
この財政支援は、市の年間予算に組み込まれ、標準的な会計および監査手続きに則って実施される予定である。
予算の都合による支給額の調整
なお、委員会報告書によれば、当初は3,000ペソから5,000ペソの支給を提案していたが、市の財政状況に即し、また現在高齢者に支給されている支援金額との均衡を図るため、1,500ペソに調整された。
社会福祉委員会の委員長であるロレンツォ・ベンジャミン・D・ビラフエルテ市議は、報道陣に対し、支給額を高齢者向けの財政支援と同水準に設定したものの、今後数年以内に増額される可能性があると述べた。
また、当初案に含まれていた「認定団体への所属を受給要件とする」規定については、フィリピン憲法に抵触するおそれがあることから、条例から削除されたことを明らかにした。
さらに、罰則条項においては、障がい当事者の居住年数を虚偽申告したバランガイ(行政区)職員や、正当な法的代理人でないにもかかわらず支援金を不正に申請・受給した個人に対し、相応の罰則が科されることが定められている。
ビラフエルテ市議は、2026年度の予算案は2025年9月10日の期限前にすでに提出されており、障がい者への財政支援は、ダバオ市の2027年度年次予算に計上される予定であると述べた。
また提案された支援について、セバスチャン・ドゥテルテ市長代行と既に協議を行い、この施策を全面的に支持していると付け加えた。ドゥテルテ氏は、「これは、より包摂的なダバオ市へ向けた我々の大きな一歩のひとつであり、より障がいのある方にやさしい都市を実現するための重要なステップである」と語った。
第20期から第21期市議会へ:支援の継続
2025年6月18日、第20期ダバオ市議会は「ダバオ市障害者の権利・特別支援・保護に関する包括的条例(Comprehensive Persons with Disability Rights, Privileges, and Protection Ordinance of Davao City)」を可決した。この条例は市内在住の障がい者の権利を施行・強化することを目的としている。
2024年6月、ビラフエルテ市議は、この画期的な条例の成立が、将来的に障がい者を対象とした補助金制度の実現に向けた道を開くものであり、その制度は別途制定される条例で取り扱われる予定であると述べていた。彼はこの財政支援が、ひとり親家庭や高齢者に支給されている支援金に類似したものになると想定している。
また、ダバオ市はすでに障がい者に対する無料映画鑑賞の権利を付与する条例を可決し、PDAOを設立している。こうした権利や支援内容が整備されていく中、次の段階として財政支援プログラムの実施を目指している。
さらに、登録されている障がい者の人数は高齢者より少ないことから、ビラフエルテ市議は、将来的には月額補助の実施も可能になるとの見通しを示しており、その具体化については第21期市議会で検討される見込みである。
補助金増額案と条例の今後
2025年7月4日、レデンド・マルティネス市議は、生活費の高騰や、公共交通機関の利用が困難でタクシーを利用せざるを得ないといった移動上の制約を理由に、障がい者への経済支援を3,000ペソに引き上げる提案を行った。また多くの障がい者が、適切な補装具を十分に確保できていない現状についても指摘した。
この条例は第2読会を通過しており、2025年9月30日に予定されている定例会にて第3読会(最終審議)で可決される見込みである。
障がい当事者コミュニティへの効果
現在PDAOの責任者を務める弁護士のレデンド・マルティネス氏は、メディアのインタビューにおいて、「市議会議員の皆さまが誠意をもって支援してくださったことを、大変嬉しく思い、感謝している」と述べた。また今回の支援により、多くの障がいのある方々とそのご家族が恩恵を受けることになるとし、特に障がいのある子どもを育てる保護者にとっては、経済的負担の軽減という点で大きな助けとなると述べた。
ダバオ市における障がいのある方の現状
マルティネス氏によると、2025年9月23日時点で、ダバオ市にはPDAO発行の有効な障がい者IDを所持する人が約37,612人おり、2024年の約22,000人から大幅に増加している。
最も多い障がいの種別は、身体または整形外科的障がい(約10,000人)、次いで知的障がい(約4,000人)、がん患者(約3,000人)である。