【コラム】ダバオとの出会い~ ダバオを初めて訪れたときのことなど~(5)

私は、この旅の間も、時に訪問先の情報に写真を添えてfacebookに投稿していた。この投稿に反応してきた人の中に、学部こそ違うが、大学で親しくしていた教育学のI教授がいた。彼には40歳を過ぎた頃に授かったお嬢さんがいて、溺愛していた。後日、大学で出会った時、私のfacebookの投稿から見た、特にサマルの自然の美しさに感銘を受けたらしく、「こんな綺麗で静かなところがあるならぜひ娘を連れてゆっくりしたい」と言っていた。

私は当然のごとくダバオの町やそこに暮らす人々の温かさ、サマルの景観の素晴らしさについて熱弁した記憶がある。彼はどうやら本気であったらしく、インターネットなどを駆使してダバオやサマルのビーチのことを調べたようである。しばらくして彼は、「先生、とても素晴らしいところのようだけど、食事のことと治安を考えると子供連れの旅には向かない場所のような気がする」と言ってきた。確かに食事については場所を選ばなければならないこと、しかしダバオとサマルのビーチの安全性などについてアドバイスしたが、日本の外務省の海外安全情報や彼の周りの人たちの意見などから熟考し、結局訪ねることはなかった。

確かに現状のダバオ周辺の諸環境は、まだ日本人の子供連れのリゾート客を受け入れる、いやこうした観光客に訪問先として認知される段階には到達していないのかもしれない。今はコロナ禍にあって、観光に限らず人々の国や地域を越えての移動は困難だが、ポストコロナの時代には再び観光が地域の様々な側面に大きな役割を果たすようになることは間違いない。ダバオの将来の発展にとっても大きな力になる。今、私は観光学の専門家として、これから先のダバオやその周辺の観光について、多くの政策提案やアドバイスができるのになあと、少し残念なようなもどかしいような気持ちでいる。