【コラム】日本人が誰も知らない世界遺産「ハミギタン山地野生生物保護区」

文化遺産以上に自然遺産の観光利用は、いったん人間の手が入ると、その普遍的価値を損ないかねないという点でより慎重であらねばならず敷居が高い。しかしながら、環境に配慮した観光利用は世界的に行われており、日本においても同様である。日本の世界自然遺産である白神山地は、青森県と秋田県にまたがる東アジア最大級と言われるブナの原生林であり、東京ドーム2万8千個分もの広さを誇っている。

世界遺産としての核心地域においては、次世代に貴重な自然環境を引き継いでいくため、人手を加えないことにしており、既存の歩道を含めて、ルートの整備は行われていない。核心地域へは既存の歩道と27の指定ルートを利用した登山等による入山は可能であるが、指定ルートを利用する場合には当該ルートを管理する森林管理署長等に対して入山手続き等が必要となるし、本格的な登山の準備が必要な場所でもある。

マティエリアの雄大な自然

そのため、一般の観光客が気軽に訪れられるような場所は、そのほとんどは届出が必要のない場所(暗門の滝、十二湖、高倉森歩道、太夫峰、白神岳、小岳、二ツ森、藤里駒ケ岳、岳岱自然観察教育林など)と白神山地世界遺産センター藤里館や白神山地ビジターセンター西目屋館である。

同じ自然遺産である知床などに比べ、世界遺産指定地域内への一般的な観光客の入れる地域は極めて限定されているが、それでも、青森県の資料によると、白神山地内観光地点の観光入込客数(白神山地関連)は、ほぼ年間60万人弱で推移しており一定のインパクトのある数字である。