サマル島はダバオ市から船で約15分、手つかずの自然がのこるビーチで有名な観光地だ。そんなサマル島はマンゴーの産地でもある。
2017年、サマル島観光事務所は、マンゴーを付加価値の高い商品に加工し、カダヤワンフェスティバルで展示することをマンゴー農家に奨励した。マンゴー農家のAmariess Bisnarさんはサマル島マンゴーマーケティング組合(Samal Island Mango Marketing Cooperative)の組合長を務めていたこともあり、娘のDece Bisnar-Uyさんに加工を任せた。
Uyさんは当時妊娠中で辛い食べ物が恋しかった。そこで「マンゴーチリソース」を考案したが、Amariessさんは良いアイデアだと思わなかったという。母子2人で知恵を絞ってジャムやピューレを作り、チリソースとともに組合に持ち込んだものの、Uyさんたちの商品が注目を集めることはなかった。
ところがサマル島観光事務所はUyさんたちを見逃さなかった。サマル島にはUyさん以外にマンゴー加工業者がいなかったため、Uyさん自身でブランドを立ち上げることを促したのだ。その後、様々な政府機関がトレーニングを提供し、さらに見本市などへの出店を支援したこともあり、Uyさんのブランドは勢いづいた。
加工品に使用されるマンゴーは、いわゆる「訳あり品」だ。訳ありマンゴーは味や安全性に問題はないものの、キロ当たり5~10ペソと非常に安く販売される。しかも、収穫されるマンゴーのうち10~15%が訳あり品であるという。訳ありマンゴーを加工すれば、ビジネスとしても魅力的だとUyさんは語る。
彼女の夢は、仲間の農家から訳ありマンゴーを適正な価格で購入し、支援することだ。さらに輸出を成功させ、サマル島のマンゴーを世界に広めたいという。夢への道はスタートラインについたところだ。事業拡大への資本はまだまだ足りない。輸出への足がかりとして、ハラール認証や食品医薬品局からの認証獲得に取り組んでいるという。
現在は、ダバオ市内でマンゴーを加工している。バザー等で販売する傍ら、オンライン販売にも取り組んでいる。