【Business】フィリピンにおけるSNSマーケティングのノウハウ

2018年6月19日、フィリピン独立の英雄『ホセ・リサール』の生誕記念日に合わせて、漫画版『ホセ・リサール』のウェブ無料配信が開始されました。(漫画ウェブサイト:日本語版:https://www.sukima.me/ 英語版 https://www.manga.club/jose/)

©RYO KONNO, MATSUI Takahiro/ TORICO, CCC

フィリピンでは公開直前にSNSや各種メディアを通してプロモーションが行われ、漫画に関するSNS投稿は約27,000人がシェア、投稿は300万人ほどの人にリーチしました。また新聞社やウェブメディアからの取材も多数行われ、CNNニュースにも取り上げられました。

テレビでも全ての大手局のニュースで大々的に報道され、結果、漫画の配信サイトには公開初日からフィリピンからのアクセスが集中し、サーバーを大幅に増設して対応する状態となりました。

CNN ニュース

実はこの企画は、日本で漫画コンテンツのデジタル配信を行う「株式会社Torico」と、弊社の共同企画プロジェクトでした。手前味噌ではありますが、本コラムでは今回のプロモーションの成功ポイントを始めとして、フィリピンにおけるSNSの利用や、日本のコンテンツをバズらせるポイントについてまとめみたいと思います。

筆者プロフィール

三宅 一道(Ichido Miyake)

ミンダナオ日本人商工会議所
会頭

株式会社クリエイティブコネクションズ&コモンズ
取締役/Founder

ピスタシア株式会社
取締役/Co-Founder

20代半ばまでギタリストとしてバンド活動を続けていたが、バンド解散後、「海外で生きるって何となくイケているよね」という程度の軽い考えで、2001年にフィリピン・ダバオ市に移住。

ダバオでは周囲の素晴らしい人々の親切により、市内の日本語ボランテイアに関わるようになり、そのまま日本語教師としての道を歩み始める。その後は途中調子に乗りすぎて首になったりもしながら、インターナショナルスクールや大学の日本語教育に10年間携わる。

後半5年間はミンダナオ国際大学の日本語センター長として、日本語教育システムの改善を行うとともに、教材作成、スピーチ指導(5年連続フィリピン弁論大会優勝)、日本語ラジオ番組の制作、音楽を使った日本語教育など多岐に渡る日本語教育を実践。

教え子である日本語人材に雇用を提供するため、2012年にパートナーの長谷川と共にCreative Connections & Commons Inc.、2015年にPistacia,Inc を立ち上げる。2018年からはミンダナオ日本人商工会議所の会頭に就任。日系企業のミンダナオ島、ダバオ市への誘致を積極的に進めている。

フィリピンにおける日本文化のプロモーション成功事例

弊社では元々漫画を始めとする多くのメディアの翻訳事業を行っています。今回、漫画『ホセ・リサール』を共同企画させていただいた株式会社Torico様とも漫画翻訳でパートナーシップを深めてきました。そんな中、「フィリピンにもっと日本の漫画文化を発信したい」という話がありました。

漫画は、日本を代表するポップカルチャーです。弊社には以前、日本のポップカルチャーをフィリピンに紹介してプロモーションに成功した経験があったため、まずはその話を共有することにしました。その経験というのは、2012年~15年にかけてフィリピンで一気に知名度があがった日本のインディーズ系ビジュアルバンド『Uchusentai:Noiz』(以下、宇宙戦隊)についてです。

出典:http://uchusentainoiz.com/

宇宙戦隊は、2011年に始めてフィリピンを訪問しました。「地球の平和を守るバンド」というコンセプトを持つ彼らは、海外でも積極的にライブ活動を行い、チャリティーコンサートを開いてフィリピンの孤児院を支援したりもしていました。

弊社は当時宇宙戦隊の海外版SNSアカウント運営に関わっており、その効果もあってかフィリピンでの知名度も少しずつ上昇していました。しかしバンドはライブ活動が命。ワンマンでライブができるレベルになるためには、まだまだ拡散力が足りません。

そこで弊社からバンドに提案したのが、OPM曲(オリジナル・フィリピン・ミュージックの略)のカバーをするというアイデアでした。フィリピンでは日本の音楽がカバーされることはあるが、その逆は聞いたことがない。やってみる価値はあるのではないか?、という話になりました。

こうして2012年8月、宇宙戦隊はフィリピンのメジャーバンドである、カミカゼ(Kamikazee)のカバーソング「NARDA」をリリースしました。結果的には、リリース直後から予想以上の反響があり、掲載後1週間でYoutubeビデオが50万人の閲覧数となりました。最終的には1ヶ月ほどで100万件に達し、コメントも5000件を超えました。

なぜここまで伸びたのでしょうか。

動画に寄せられたコメントの傾向をまとめてみました。

  • フィリピン文化が日本に認められて嬉しいという評価が非常に多い
  • フィリピンを誇りに思えた、というコメントが多数見られる
  • 「日本ありがとう」「フィリピンコンテンツ最高」「日本もフィリピンもLOVE!」のように両国への愛情を表現するコメントが非常に多い
  • 次は何をカバーしてほしい、という期待のコメントが非常に多い
  • カバーしてほしい曲名やバンド名が多数列挙され、さらにバズる原因となる
  • 上記4番のように、他の読者に影響を与えるような、バズを更に伸ばすコメントを残すひとが多数現れる
  • 「オリジナルより良い」、「オリジナルのほうが良い」というコメントが散見され、これも物議を醸してバズる原因となる
  • ビジュアル系という日本の特殊なカルチャーと、現地コンテンツのマッチングが興味の対象となっている
  • 男女問わず比較的幅広い年齢層がコメントしている
  • 英語、タガログ語、ビサヤ語、時には不完全な日本語などが入り乱れてコメントが書かれる
  • アンチコメントもたまに見受けられるがアンチコメントもバズには重要

上記を総合して判断すると、ポイントは下記のようになると思われます。

ポイント
1,メインのコンテンツが現地由来である
2,現地の人々の現地、または文化への愛情がポジティブに刺激される
3,現地の文化へのリスペクト(敬意)が感じられる
4,現地人にとって斬新さがある(今までと違うメディアや特に海外の文化とのコラボレーションなど)
5,単発のイベントであったとしても、発展性が感じられる
6,自由なコメントが可能であり、ユーザーが各自の意見を出し始める

 

上記の経験を元に、今回の「漫画プロジェクト」では、どのような手法であればフィリピンに漫画文化を根付かせるきっかけが作れるか」について協議していきました。

その結果、フィリピン由来であり現地人に愛されるコンテンツというポイントから、比国独立の英雄である『ホセ・リサール』の漫画化が最も相応しいのではないか、という結論に至ったのです。漫画化に当たっては様々なジャンルが考えられましたが、歴史的偉人であるホセ・リサールへの敬意を示すべきとの側面から、史実(とされていること)にできるだけ忠実に作品をつくるという方向性も打ち出されました。

またフィリピンの歴史的偉人を日本の漫画家が手がけるということ自体が斬新であるため、ある程度の反響も期待できます。読者をうまく刺激するために週間連載で進めることも決まりました。そしてSNS上でのバズ効果、メディア効果を最大限に活かすため、配信日はホセ・リサールの誕生記念日に合わせることにしました。結果は冒頭に記載した通りです。

以上が今回の『ホセ・リサール』漫画企画の経緯概要です。公開直前のFacebook投稿によるプロモーションや、漫画への読者からのコメントには、「宇宙戦隊」のときと同様、前述のような内容のコメントが2000件以上も寄せられました。

弊社のFBアカウント

フィリピンにおけるSNSの利用

今回はメインのプロモーションにFacebookを利用しました。イギリスの調査会社「We Are Social」のデジタル2018レポートの結果ではフィリピンのソーシャルメディア利用率は世界一だとされています(下記参照)。同レポートによれば、SNSの使用時間の1日平均は3時間57分でした。

さらに別のデータではFacebookのユーザー人口が6700万人とのデータもあり、フィリピンにおけるインターネットの利用人口とほぼ同値となっているとの見方もあります。フィリピンは人口がすでに1億人を突破しているが、この値を人口と比較してみても7割近くのフィリピン人がユーザーとなっている状況です。

確かに現地を見回してみると5歳の女の子でもアカウントを所持しています。(ほとんどの場合が親が子供のアカウントを作ってそこに写真などを載せているケースだと思われる)

出典:Time Spent on Social Media, Global Digital Report 2018

フィリピンはインターネット利用時間平均に関してもタイ(9時間38分)に続いて、世界第二位(9時間28分)となっており、SNSの普及率も高く、Facebookの利用はの有効性は経験則からも明らかです。

出典:Time Spent Per Day of the Internet, Global Digital Report 2018

参照:Global Digital Report 2018(https://wearesocial.com/blog/2018/01/global-digital-report-2018)

 

フィリピン・ASEAN諸国のSNSマーケティング

最後にフィリピンを含むASEAN諸国におけるSNSマーケティングについて言及しておきたいと思います。はじめに、SNSを使ったマーケティングでよく使われる「バズる」とか「バズ・マーケティング」という言葉について。この表現はすでに日本では定着した感があるものの、一応復習しておきましょう。

「バズる」は英語の「Buzz」から来ており、蜂などの虫のは音がブンブンなる様子の擬音語として使われるほか、ひとがガヤガヤと噂をするという意味でも使われます。ただし英語での表現の場合には「バズってる」「噂になっているよ」というときには、ウイルス(virus)が広がるというニュアンスで、「Go viral」という言い方がより使われるようです。

横道にそれましたが、つまりバズ・マーケティングとは口コミを利用したマーケティング手法であり、「バズる」は主にSNSなどでの書き込みでシェアされて、情報が急激に拡散されていく状態を指します。

さて、フィリピンではマーケティングにおいて、マーケターはSNSをどのように利用しているのでしょうか。フィリピンを含む、環太平洋、ASEAN諸国でのマーケターの活動についてのデータがあったので紹介します

この地域では、マーケターと呼ばれる人たちの92%がSNSを利用しています。彼らがどうSNSを利用しているのか見てみましょう。まず一番多いのが、ブランディングに関する利用で、46%が利用しています。プロダクトや企業に関するインサイツや、開発秘話などを語ることによって、カスタマーロイアルティを上げることが主な目的です。

次に多いのがカスタマーサービスでの利用で43%。FacebookなどのSNSページでカスタマーサービスの専門ページを用意して、顧客リテンションに努めます。次はプロダクト紹介など、直接的にセールスを行う手法で38%が利用しています。

続いて、37%のマーケターが、SNSで他のプロモーション活動に関する情報拡散など行っています。最後がユーザーデータのマイニングで27%となっています。

・ブランディング 46%

・カスタマーサービスページ 43%

・セールス 38%

・他のプロモーションの助長 37%

・ユーザーデータのマイニング 27%

またオンラインショッピング等のE-コマースでは、47%がSNS連動で広告を行っており、全体の30%がSNS内に「購入ボタン」を設けています。(フィリピンを含む環太平洋地域のマーケターのSNS利用法)

出典:News bytes Philippines:

Study: Social media taking over in PH marketing, customer service

Kantar TNS (http://www.tnsglobal.com/)

フィリピンを始めとする新興国のSNSプロモーションに関しては、上記のようなSNSマーケティングの一般的な利用と、前述の成功事例のような「現地の人々の心をくすぐる題材」とをうまく掛け合わせることが重要なのではないかと考えます。

今回は、フィリピンにおける日本コンテンツプロモーションの成功例、及びSNSの普及、マーケティングにおけるSNSの利用についてまとめてみました。今後、日本製品、日本コンテンツをフィリピンを始めとするASEAN諸国へ輸出していこうとする方々の参考になれば幸甚です。

フィリピンで起業を考えている方にはこちらの記事がおすすめ

【Business】やってはいけない小規模ビジネス Top 10 フィリピン版

【ビジネス】フィリピン ダバオで起業する方法( IT・BPO企業編)

【ビジネス】フィリピン ダバオで起業する方法(人材採用編①)

 

最新フィリピン・ダバオビジネス記事はFacebookからチェック

Facebookの「いいね」を押すと最新ビジネス記事の更新が受け取れます