コーヒー豆を焙煎して抽出して作られる飲み物、それがコーヒーである。報告によると、フィリピンでは成人の約8割が1日平均2.5杯のコーヒーを消費しているという。
長いコーヒー栽培の歴史を持ち、1700年代から生産が行われてきたにもかかわらず、現在フィリピンの年間生産量は約3万トンにとどまる。一方で国内消費量は10万トンを超えており、フィリピンはコーヒーの純輸入国となっている。
フィリピンは多様な標高と気候条件を有し、商業的に栽培される主要4品種(ロブスタ、アラビカ、リベリカ、エクセルサ)すべてを生産する世界でも数少ない国の一つである。
ロブスタは力強い風味が特徴で、主にインスタントコーヒーに使用される。アラビカは高地で栽培され、甘みと滑らかな口当たりを持つ。リベリカは濃厚で力強い味わいが特徴で、エクセルサは酸味とフルーティーな香りを備え、乾燥地域でも栽培される。
生産量の約70%はミンダナオ島が占めている。中でもソクサージェン地方(特にスルタン・クダラット州)が最大の生産地で、続いてダバオ地方(ダバオ・デル・スル州およびダバオ・デ・オロ州)、ブキドノン州(キタングラド山周辺)などが主要産地となっている。
ダバオ・デル・スル州では、フィリピン最高峰アポ山の山麓で栽培されるコーヒーが高品質とされる。ある愛好家は次のように語っている。
「滑らかで豊かなコクがあり、トロピカルな深みを感じる。アポ山のコーヒー豆は、フィリピンのコーヒー農業の強さとしなやかさを体現している」。
かつてアポ山で栽培されるコーヒーはあまり知られていなかったが、近年は「Balutakay Coffee Farmers Association(以下BACOFA:バルタカイ・コーヒー生産者協会)」の取り組みにより注目を集めている。
BACOFAは、農家の生活向上と販路拡大を目的に2013年に設立され、標高約1,700メートルの小規模農地でコーヒーを栽培する20人の農家から始まった。現在は68人が所属し、スペシャルティ・アラビカ生豆の生産に力を入れている。
アポ山コーヒーの特徴を探るため、マニラ在住の弁護士であり、6ヘクタールのコーヒー農園を所有するエルマー・G・ペドレゴサ氏にも話を聞いた。
ペドレゴサ氏は、農園の一部1ヘクタールを「Sir Ped’s Café Mount Apo(サー・ペッズ・カフェ・マウント・アポ)」として整備し、訪問者が自然の中でコーヒーを楽しめる施設を運営している。
ペドレゴサ氏は、バランガイ(行政区)マナガがコーヒー栽培に適しているとし、気候、火山性土壌、霧、標高がコーヒーの品質を高めていると説明した。
研究によると、コーヒーは気候変動の影響を受けやすく、気温や降雨量、湿度の変化が収量や品質に直結する。特に火山性土壌は栄養分が豊富で、排水性・通気性に優れ、酸味や風味の複雑さを生む要因となる。また、霧は高湿度と安定した気温をもたらし、コーヒーチェリーの糖度や風味の形成を助ける。
一方、バルタカイ地区では、かつてコーヒー生産が盛んだったが、国際価格の下落により野菜栽培への転作が進んだ。
それでも一部の農家はコーヒー栽培を続けており、ルイス・A・エスカレラ氏と妻ジャネット氏はその代表例である。
エスカレラ夫妻は4ヘクタールでアラビカ種を栽培している。収穫後は洗浄、3日間の発酵、乾燥、脱殻、選別という工程を経て出荷される。地域では選別作業に住民や学生が参加し、収入源となっている。賃金は選別作業が1キログラム当たり20ペソ、収穫作業は日給250ペソに加え、食事が支給される。
近年、コーヒー文化は再び注目を集めており、カフェは若者にとって学習や交流、仕事の場として定着しつつある。
ダバオのジャーナリストで起業家でもあるRJ・ルマワグ氏は、2021年にコーヒー店「Hid’n Coffee(ヒドゥン・コーヒー)」を開業した。
ルマワグ氏は、「コーヒーは日常に根付いた飲み物であり、会議前や勤務前など生活のあらゆる場面で飲まれている」と語った。






