フィリピン環境天然資源省(以下DENR)ダバオ地方事務所は、アポ山国立公園(以下MANP:Mt. Apo National Park’s)がユネスコ(国連教育科学文化機関)の「ユネスコ世界ジオパーク(Global Geoparks or Geological Parks:ユネスコ・グローバル・ジオパーク)」に登録されることに自信を示している。
MANPの保護区管理責任者を務めるクリント・マイケル・B・クレオフェ氏は、登録に向けた準備はすでに2年目に入っており、今回こそ認定が実現し、ボホール島に続いてフィリピンで2番目の「ユネスコ世界ジオパーク」となることを期待していると述べた。
アポ山は2009年、ユネスコ世界遺産への登録候補として推薦された。しかし、その後、違法伐採や野生生物の密猟、都市化や農地開発の急速な進展による環境悪化が深刻化したことから、2015年にユネスコの世界遺産暫定リストから正式に除外された経緯がある。
クレオフェ氏は2026年7月10日、ディゴス市バランガイ(行政区)カパタガンで行われた記者会見で、「私たちは常に前向きな姿勢で臨んでおり、今回の評価が良い結果となることを心から願っています。評価で十分な結果を得て、『ユネスコ世界ジオパーク』として認定されることを期待しています」と述べた。
クレオフェ氏によると、MANPは2025年に「ユネスコ世界ジオパーク」への登録を申請し、ユネスコによる審査を受けた。手続きが順調に進めば、カダヤワン祭の開催期間にあたる8月16日から21日にかけて、ユネスコの評価員が現地を訪れる予定だという。
評価には、フランスから上級評価員1人、中国から初級評価員1人の計2人が参加する。評価員は、MANPが「ユネスコ世界ジオパーク」の登録候補地としてどのように管理・運営されているかに加え、保護区内で暮らす先住民族と連携しながら自然環境の保全に取り組んでいるかを確認する。
また、評価にはMANPの関係者のほか、ダバオ市、ダバオ・デル・スル州、コタバト州の地方自治体関係者も参加する予定だ。評価員はその後、MANPを訪れ、火山活動によって形成された地形や地質学的に重要な地点を視察する。
クレオフェ氏は、評価ではMANPの豊かな自然景観だけでなく、保護区に暮らす先住民族の地域運営への参画状況や暮らし、伝統・文化、そしてアポ山が日常生活の中で果たしている役割についても確認されると説明した。また、ユネスコはアポ山が先住民族にとって神聖な場所であることを重視していると述べた。
なお、DENRダバオ地方事務所が必要な取り組みや手続きをすべて完了していない場合には、アポ山の「ユネスコ世界ジオパーク」認定が延期または先送りとなる可能性もあると認めた。
MANPがユネスコ・グローバル・ジオパークへの登録を果たせば、アポ山だけでなくダバオ地方の人々にとっても大きな誇りになるとの考えを示した。
地方自治体も支援
MANPの「ユネスコ世界ジオパーク」登録を目指す取り組みに対し、周辺の地方自治体(LGU)も支援を表明している。
ダバオ市は、市条例第0472-24号を制定し、アポ山を「地質遺産(Geological Monument)」に指定するとともに、MANPの登録申請を後押ししている。
また、スタ・クルス町も、アポ山の岩壁が町内に位置し、地域を代表する重要な地質資源となっていることを理由に、この取り組みへの支持を表明した。このほか、複数の市や町も登録実現に向けた支援を打ち出している。
共和国法第9237号(通称:アポ山自然公園法)に基づき、アポ山自然公園の保護区は、ダバオ市、ディゴス市、キダパワン市、スタ・クルス町、バンサラン町、マキララ町、マグペット町にまたがっている。
これらの地方自治体は、保護区管理委員会(PAMB:Protected Area Management Board)を通じて保護区の管理に参画し、地域開発計画との調整や、MANPにおける各種事業の実施を支援することが義務付けられている。
ユネスコ世界ジオパーク(Global Geoparks or Geological Parks)とは
ユネスコによると、「ユネスコ世界ジオパーク」とは、国際的に重要な地質遺産や景観を有する地域を対象に、自然保護、教育、持続可能な地域開発を一体的に推進する制度である。
2026年現在、世界51か国・241地域が「ユネスコ世界ジオパーク」に認定されている。中国の「香港ユネスコ世界ジオパーク」、インドネシアの「リンジャニ山」、日本の「阿蘇ジオパーク」、ドイツの「ヴルカンアイフェル」などがその代表例だ。
フィリピンでは、独特のカルスト地形と世界的に知られるチョコレートヒルズを有する「ボホール島」のみが認定されている。MANPの登録が実現すれば、国内で2か所目の「ユネスコ世界ジオパーク」となる。
MANPは、1992年6月1日に、当時のコラソン・C・アキノ大統領が承認した共和国法第7586号「国家統合保護地域制度法(NIPAS:National Integrated Protected Areas System)」に基づき、保護地域に指定された。
園内では約800種の植物が確認されており、このうち27種は経済的・文化的・薬用として重要な価値を持つ。また、鳥類や哺乳類などを含む約414種の動物が生息し、その中にはフィリピンの国鳥であるフィリピンワシも含まれる。
さらに、確認されている動物種のうち207種はMANP固有種であり、146種の動物と27種の植物は経済的・薬用として重要な価値を有している。






