【特集】YOUは何しにダバオへ?~東映アニメーション フィリピン・東 伊里弥社長編~

youは何しにダバオへ?

こんにちは!ダバオッチ編集部のみゆです。皆さんはアニメは見られますか?最近ではNetflix等の定額制動画配信サービスでいつでもアニメを見ることが出来るようになりましたね。私は毎日夕食を食べながらアニメを見るのが日課です。

それでは今回、ダバオで活躍する日本人にインタビューする「YOUは何しにダバオへ?」第8弾、インタビューさせていただいたのはフィリピン・マニラでご活躍されている東映アニメーションフィリピン社長 東 伊里弥(あずま いりや)さんです!!!

東さんは2024/11/30(土)に在ダバオ日本国総領事館が主催するSMX Convention Center Davaoにて行われた日本アニメーション産業についての講演・アーティストによる絵の描き方講座のためにマニラからダバオに来られました。

アニメをどのように創ってきたのか・フィリピンと日本の働き方の違い・フィリピンでの目標等を伺ってきました。東さんの、現場でのモノ創りの仕事を楽しみたい!コミュニケーションを大切にしたい!という気持ちが伝わるインタビューになりましたのでぜひご覧ください!

東社長

【東映アニメーションフィリピンとは】

1986年フィリピンゼネコンEEIの子会社ITCAはアニメーション制作の仕上げスタジオとして出発、1992年にEEIと東映アニメーション株式会社の合弁会社EEI-TOEI Animation Corp. となり、1999年には東映アニメーション株式会社の100%子会社となる。

アニメーション制作のうち、作画・仕上げ・背景作業の請負主を主な事業内容とする企業。

日本の東映アニメーション㈱は、なんと全世界で人気のあるアニメ【ONE PIECE(ワンピース)】や【美少女戦士セーラームーン】のアニメーション作成も担っています。

アニメーションは、企画・制作・編集の制作工程を経てテレビ放送や劇場公開が行われます。東映アニメーションフィリピンはその中の制作の業務を行っています。

東映アニメーションフィリピンの従業員は約160名で、動画や仕上工程において東映アニメーション株式会社の全作業量の約70%を行っています。

幼少期の思い出を教えてください。

東京の代々木で生まれ、よく原宿や神宮前に自転車で遊びに行く楽しい小学生時代を過ごしました。その頃は白黒テレビで映像に触れていました。小学校6年生の頃に家のテレビが壊れたので両親に新しいテレビ買わずに過ごそうと言われ、子供の私にとってはショックでしたがテレビ無しの生活を送りました。大学生になった頃、自分で買うのでテレビを置こうと提案しカラーテレビを購入しました。久しぶりにテレビの映像を見たときに、子供のころに見ていたテレビとは全然違っており、映像の情報量が多い事にびっくりし映像に興味を持ちました。

東社長

なぜ東映アニメーション㈱に入社されたのですか?もともとアニメが好きだったのですか?

はじめはアニメに強いこだわりがあったわけでは無かったのですが、大学時代に映像、映画の魅力にとりつかれてからは、ものを作っている現場で働きたいと考えていました。どこの門を叩いたらいいのかが分からず、実写・テレビ映像を制作している会社も含め就職活動をしていたところ、直に現場で働くことが出来る【演出】や【製作進行】の募集をしていたため、東映アニメーション株式会社(当時は東映動画株式会社)に入社しました。

実際入社してどうでしたか?入社後どのようなことをされてきましたか?

入社したのが1986年、東映アニメーションはちょうど30周年・そしてフィリピンでもアニメ制作を始めた年でした。いまフィリピンにいる自分を振り返ると、とても縁を感じています。

実際見てみると「ものすごく面白い現場で、こんな世界があるんだ!」と感動し、個性的なスタッフに囲まれ(冬なのに立派なアニメーターの方が半袖半パンで闊歩したりとか。笑)楽しく、1年目にこの職場・仕事は最高だと感じました。

もともとやりたかった演出の仕事をするには、スタッフの間を駆け回って雑務をこなす製作進行からスタートすると良いという話を聞き、その仕事を希望して入社試験を受けました。

1年後に製作部の上司から、企画で若手を探していると打診を受け企画部に異動し、製作部を離れてからはフィリピンとの直接の仕事のやりとりはほとんど無くなりました。

アシスタントプロデューサー時代には【魁‼男塾】【魔法使いサリー】【新ビックリマン】【きんぎょ注意報!】等の作品に携わってきました。作品ごとに違う、個性豊かな先輩プロデューサーたちに仕事や生き方について様々な事を教わったことは今でも大事な宝物です。

独り立ちをして初めての作品がセーラームーンでした。少女向けアニメは長く続かないと言われていた時代でしたが、5年も続く大ヒットでした。

こちらがテレビアニメ番組のプロデューサーとして携わってきた作品です。

・美少女戦士セーラームーン

・キューティーハニーF(フラッシュ)

・アニメ週刊DX!みいファぷ~

・神風怪盗ジャンヌ

・勝負師伝説 哲也

・Kanon

アニメはどのように創られるのですか?

自分が入社当時のアニメーション制作はまだ今のようにデジタル化になっておらず、各工程ごとにどうやってモノづくりしているかがよくわかりました。紙に鉛筆で線を描いた後、透明なセル画に線を転写して絵具で1枚1枚色を塗っていました。特殊効果の部屋はいつもエアブラシのコンプレッサーがけたたましい音を立てていました。背景も1枚1枚大きな画用紙に水彩絵具で描かれていました。撮影の部屋はカーテンに囲われて大きく真っ暗で、とても高い天井にカメラを吊るし、真下に背景画を置いてさらにその上にたくさんのセル画を1枚ずつ丁寧に刷毛でほこりを取り払いながら1コマずつ写真を撮っていました。1秒に24コマ地道に撮影する大変な作業でした。

アニメを一話作るためには、何人くらいのスタッフの方で作られますか?

TVシリーズ1話あたりの作画枚数は平均4,000~5,000枚程で、作品によっては更に枚数が増えることもあります。現場スタッフだけでも100人以上、外部関係のプロデューサー・スポンサー・代理店もあわせると150人以上関わっているかもしれません。

昔と今とでは変わったことはありますか?

先ほど述べた、デジタル化する前と後では現場の様子がかなり変わったと感じます。昔はどちらかというとフェイス・トゥ・フェイスでうるさいくらい賑やかなコミュニケーションがあった空間でしたが、今はどの工程もパソコンモニターに向かって驚くほど整然と静かに仕事しているのが自分にとっては隔世の感だな、と。また、今はネットやイベント演出映像など様々なメディアに向けた映像づくりを行っていますが、昔はTV放送用の製作が中心でした。放送枠もかつては夜7時~8時のゴールデンタイムはアニメ三昧だったのですが、段々と夕方5時や朝方、そして深夜帯に変わっていきました。それに合わせてアニメ作品の視聴ターゲットもその時間帯に合わせて変えていく必要がありました。

アニメ制作を通して東さんの新たな発見はありましたか?

それはもう、日々新たな発見の連続でした。特に人の生き様っていうんでしょうか。とりわけずば抜けた力量を持つ演出・監督やアニメーター・美術デザイナーさんたちの恐るべき観察眼・洞察力やそれをビジュアル的にオリジナリティ豊かに説得力をもって具現化してしまう稀有の才能は。最初は単純に感動して喜んでいただけだったのですが、次第にその背景や深みを知るにつれて自分も考えさせられ、悩まされ、時には絶望感を抱くときもありました。もし自分が演出になっていたら到底その域までは到達できなかったのでは、とも。そして、彼らはそれを毎日自分の身を削りながら創り続けてきているのだ、と。そんな一方で変な話ですが、だからこそこの世界で自分はずっと仕事をしたい。素晴らしいスタッフとモノづくりに浸りたい、とも思いました。アニメーション制作は本当に奥が深いです。

日本のアニメはなぜ人気があると思いますか?

日本は漫画文化が奥深く、漫画の歴史がまさに日本のアニメコンテンツを支えていると思います。人の心の中にある綺麗なものも汚いものも含め、大胆に取り込んで色んな作品が出来ているので、海外のアニメに比べると日本の作品は幅が違うのだと思います。日本のアニメって素晴らしい!と思わせる大きな理由の一つはそこにあるのかもしれません。

尊敬している方は?

これまで携わったアニメーションの仕事は自分の人生そのものです。入社してハードな製作の現場に入って過ごした日々。アニメーターや演出、背景、色指定、撮影、編集、音響、声優などなど様々な職種の大先輩たちは強烈な個性と信念をもってアニメ制作に情熱を燃やしていました。どの方たちも本当に尊敬しています。たくさんの事を教わり、お世話になりました。そうそう、お酒の飲み方もこの方たちに教わりましたネ。笑

モノ創りの醍醐味を肌で実感させてくれた方々です。

↑オフィスからの風景
↑オフィスからの風景

いつフィリピンに配属になりましたか?東映アニメーションフィリピンでのやりがいは何ですか?

企画部の後に、ほかの部署も色々と経験し、2017年に製作部に戻りました。そこで担当したのがフィリピンに製作を発注する窓口でした。

せっかく長年一緒に仕事をしているのに、海を隔てているためかコミュニケーション不足による問題が多くあることを感じ、人材交流を活発に行って日本とフィリピンを密に繋げたいと提案しました。翌2018年から日本のスタッフがフィリピンに行って指導したり、逆にフィリピンのスタッフが来日して日本のスタッフの仕事を勉強したりするようになりました。お互い直接顔を見ながら一緒にモノづくりをすることが何よりも大事だと思っていたので、この仕事は非常にやりがいを感じました。

ですが、2020年さらに人材交流を深めていこうと思った矢先にコロナが始まりしばらく交流が途絶えることになってしまったのです。これは大変ショックでした。そして、私が東映アニメーションフィリピンの社長になったのはそんなコロナ禍の最中でした。

しばらくはフィリピンとはTV会議でのやりとりしかできませんでしたが、2022年の秋にようやく現地に腰を落ち着けることができました。

今、現地にきて一番楽しいのは、日本人スタッフよりも作品愛にあふれているのでは!?と思うほど自分たちの仕事に愛情と熱意を注ぐフィリピンスタッフと一緒に日々アニメーション制作に取り組んでいることです。またその中で、彼らの描く絵に日本人とは違う彼らならではの個性を時折見出すこともこの上ない喜びです。

海外赴任は今回が初めてですか?

以前2年間米国(ロサンゼルス)に赴任していたことがあります。今回のフィリピンが2回目の海外です。米国では新たなコンテンツ企画の種を探していました。

フィリピンの印象は?

以前も別の仕事でフィリピンに来たことは数回ありましたが、その頃からフィリピンに対する印象は変わっておらず、フィリピン人はすごく親しみやすい印象です。初対面でも距離感が近くとても暖かい人たちで、接していると嬉しい気持ちになります。フィリピン人の持っている陽気さ・おおらかさが素敵だと感じています。

フィリピンと日本、働き方の違いは?

基本的には日本側のルールや指示に従って受注した仕事をフィリピン側がこなし、成果物を日本に期限内に納品します。フィリピン人の気質なのか、課題対処のスピード感が日本側からすると少しふんわりしていると感じる時もありますが、厳しい日本人の働き方の中で、真面目にしかも作品に深い愛情をもって取り組む姿勢は素晴らしいと感じています。

フィリピン人は、家族をとても大切にする方々なので、仕事が大変な時期でも構わず休むこともあります。でもそれは逆に、家族より仕事を優先する日本人の僕たちが間違っているんじゃないかと考えさせられます。

これからの目標

フィリピン発信のオリジナル作品を将来創れるようになれば、と考えています。

日本アニメの作品作りに情熱を注ぐのも良いけれど、フィリピンオリジナルの作品を一緒に作っていくのも素敵だと思っています。各地域から来ているフィリピンスタッフの皆さんは生きてきた人生もそれぞれ違うと思いますし、それを独自のスタイルのアニメとして表現したものを見たいなと思います。フィリピンならではの伝説とか、歴史とか。

東社長

これからのダバオでの展開は?

今回のワークショップもそうですが、若者たちと接する機会を作り、アニメやものづくりに興味がある学生さん達とコネクションを地道に広げていきたいです。皆さんにアニメーションを勉強してもらえる機会をたくさん作れたらと思っています。

フィリピンで行ってみたい場所は?

これまでマニラ圏から離れたことはなかったのですが、先日初めてセブに行きました。でも仕事で行ったので、海を見れていないんです。仕事を離れたところでは、妻がパラワンに行きたいと言っていたので、いずれそこに行ってみたいですね。個人的には山が好きなので、各地の高地にも行きたいと思っています。

↑Mt.makilingハイキング

休日の過ごし方

マニラのイーストウッドに住んでいるのですが、コンパクトな街で心地が良く、この周辺でいつも過ごしています。ショッピングもレストランも会社もすぐ近くなのでとても便利な場所です。ただ、大好きなお刺身が食べられるレストランが少なく、色々食べられるお店に行くのに往復1時間以上かかるし高い!(笑)ので我慢しています。それとごくたまにですが、フィリピンのスタッフと近くの山や湖までドライブをすることもあります。

東社長

アニメが好きな方へ

絵を描きたい方たちにはどんどん絵をかいてもらいたいと思います。そして映画やアニメだけを見るんじゃなくて、他の色んな芸術にも目を向けてもらいたいです。絵画・詩・音楽。なんでもいいのでどんどん興味の幅を広げていくと楽しいし、そのうえでアニメを作るともっと面白いものができます。このアニメと同じものを作りたい、だと面白いものはできません。若いときにがむしゃらに興味アンテナを張って知識・感性・アイデアを広げて引き出しを作って、どんどん吸収したうえで、ぜひ一緒にアニメのお仕事をやりましょう!!!とてもウェルカムです(^^)!!!

まとめ

東さんにお会いする前は、私自身がセーラームーン世代で大好きなアニメでしたし、東映アニメーションフィリピンの社長!ということで、とても緊張してインタビューに臨みましたが、お会いしてみるととても物腰柔らかく、私の拙い質問にも丁寧にお答えいただき、とても素敵な方でした。

今はまだオフィスには日本人が東さんおひとりなので、もっと現場に日本人を増やしたい、もっとフィリピンとの交流を増やしたいとおっしゃっていました。

東さんはフィリピンと日本のコミュニケーションを大切に考えておられる方なので、これからもっとアニメによってフィリピンと日本のコミュニティの輪が広がり、近い存在になっていくと感じました。

フィリピン人のアニメーターが増え、東さんの目標であるフィリピンのオリジナルアニメが完成するのが楽しみです。

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