こんにちはダバオッチ編集部のツキです。昔から日系移民が多く、東南アジア随一の治安の良さを誇るここダバオには、マニラやセブほどではありませんが、日本人も暮らしています。今回はチョコレートに魅せられカカオを求めて世界中を旅し、「カカオキャピタル」であるここダバオに流れ着いた「チョコ兄さん」こと、高山泰樹(タカヤマ タイジュ)さんに密着します!
高山泰樹さん(30)は、日本で自動車会社に勤務していましたが、とあるチョコレートを食べ衝撃を受けたことをきっかけに脱サラ。現在は、ダバオオリエンタル(ダバオ市から車で南東に2~3時間程)と日本を行き来しカカオ栽培からチョコレート作りを行っています。
【略歴】
1992年 山梨県で生まれる
2015年 MinimalのBean to Barチョコレートを食べてカカオ本来の美味しさを知る。同年、会社を辞めてカカオ探しの旅に出る
2016年 東南アジアのカカオ農園を周る
2017年 南米のカカオ農園を周る。帰国後、ダバオオリエンタルの児童養護施設ハウスオブジョイ院長・澤村信哉さんと運命的な出逢いを果たす
2018年 信哉さんとのご縁もあり、ダバオオリエンタルでカカオ栽培を開始
チョコレートが出来るまで 収穫
実際に泰樹さんが営むカカオ農園に行ってきました!
カカオの収穫時期は5月と12月で、メインシーズンは11月〜1月。通年収穫できる訳ではないので、収穫時期以外はシェードツリー(直射日光や風に弱いカカオを守るための背の高い木)のバナナやココナッツを育て現地で売っているそう。
カカオはある程度育ってきた段階で袋をかけ害虫被害を防ぎます。
カカオの花が受粉し実になる確率は全体の1〜2%だそう。そこから枯れてしまったり落ちてしまう実などもあるので、実際に収穫されるカカオはもっと少ないです。なんという生存率……。
収穫で疲れたらシェードツリーとして育てているココナッツウォーターで喉を潤すのがカカオ農園流。火照った体にみずみずしいココナッツウォーターが染み渡ります。プファ〜〜!!
カカオ豆採種
こちらが収穫が終わった状態のカカオ。
チョコレートに使うのは、一般的に「カカオ豆」と呼ばれているカカオの種子部分です。鉈でカカオに切れ込みを入れ、種子を採っていきます。中を開けてみるとなんとビックリ!カカオの実はとてもクリーミーなんですね。1つのカカオから板チョコ1枚分のカカオ豆が取れます。
発酵
種子を採ったらお次は発酵の工程に移ります。カカオの実が付いた状態で種子を発酵させることによって、チョコレートの風味を作り出します。発酵に要する時間は6日間。内3日は放置、残りの3日はかき混ぜて空気を取り入れることで微生物を活発化させます。
泰樹さんの農園では2種類の限られたカカオ豆から様々な風味を演出するために、発酵の段階で色々な材料を混ぜることで風味を変えています。今まで挑戦したフレーバーは、フルーツ全般(マンゴー、ドリアン、カラマンシー、ジャックフルーツ、バナナなど)、紅茶、ワインなど多岐に渡ります。泰樹さんのお気に入りは柑橘系フルーツフレーバー。個人経営の小規模な農園で戦うための創意工夫に経営者としての手腕を感じます。
そして、この工程で生まれる嬉しい副産物が発酵時に滴ってくるカカオ果汁の「カカオジュース」!一般的には捨てられてしまうカカオ果汁ですが泰樹さんは大好きだそうで、発酵前に抽出することもしばしば。カカオジュースそのものの発酵具合によって「ジュース→ソーダ→酒→酢」といったように状態が変化していきます。筆者は全段階のものを試飲しましたが、どれも風味が全然異なります。個人的なお気に入りはカカオソーダ!洋梨のような風味と、少しねっとりとした口触りだけど炭酸が含まれることによって軽やかな飲み口でゴクゴク飲めちゃいます。カカオジュースは状態を保つことが難しいのでまだ商品化には至っていないそうで、現地に出向いた人の特権かも(!?)
乾燥
さて、お次はカカオ豆乾燥の工程です。乾燥させる時間は大体2〜3週間ほど。カカオ豆の中の水分が7%以下になればOKです。
筆者はこの段階でのカカオ豆を特別に味見させてもらいました。フレーバーは紅茶と柑橘系フルーツ。なるほど同じカカオの品種だとは思えないほど風味が異なります。紅茶の方は確かに奥底に紅茶の風味を感じる上品な味わい。柑橘系フルーツの方は酸っぱいコーヒーのような味わいでした。この段階での筆者の個人的な好みは紅茶!ナッツのようにバクバク食べられそうです。
いよいよチョコレート作り!
手塩にかけて育てられたカカオからいよいよチョコレートを作ります。今回は取材用にいくつかの工程を飛ばした一番簡易的な方法でチョコレートを作ってもらいました。
まず、乾燥させたカカオ豆の外皮を剥く作業です。筆者も剥く作業を少し手伝わせてもらいましたが、カカオのいい香りに癒されながら黙々と行うのがなかなか楽しい。外皮を剥くとカカオ豆の胚乳部分「カカオニブ」のお出ましです。ちなみに泰樹さんは、多くの場合そのまま捨てられてしまう外皮からもお茶を煮出して飲むのだそう。さすがはチョコ兄さん、カカオにかける愛情が桁違いです。
お次はカカオニブを砂糖と混ぜ攪拌する工程です。カカオニブの約半分はカカオバターという油分で出来ていて、攪拌することでその油分が徐々に出てくるのだそうです。筆者はてっきり油を別に混ぜているものだと思っていました。カカオ豆と砂糖のみで出来るからこそ、カカオ豆本来の質や風味が重要なのですね!
なめらかになったチョコレートを型に流し込んでいきます。均一な厚さにするために振動を与えるのですが、これが意外と難しい(笑)筋肉を痙攣させるかのように細かい振動を与えるのは、まさに職人の成せる技です!
チョコレート完成!!
型に入れたものを冷やしていよいよチョコレートの完成です!
いざ実食!どちらのフレーバーも簡易的な方法で作られたとは思えないほどのクオリティ!また、72%というハイカカオにも関わらず、今まで食べたことのある同比率のチョコレートより甘く感じました。カカオニブの状態では筆者の好みは紅茶でしたが、チョコレートになると柑橘系フルーツが大逆転!柑橘系フルーツの酸っぱさと甘味の相性が抜群です。
カカオニブを砂糖でコーティングしたカカオニブ菓子もいただいちゃいました。こちらはカカオニブとして既に完成されていた紅茶フレーバーで作られていたのですが、やはりとても美味しい!
泰樹さんからのコメント
「日本からのチョコレート購入やカカオツリーオーナーの契約も可能ですし、ダバオにいらっしゃればカカオ農園ツアーとチョコレート作り体験も行えます。興味のある方は、ハウスオフジョイでは宿泊が可能なので是非遊びに来てください!」
【連絡先】
・Facebook:Takayama Taiju
・Instagram:@taijutakayama
・ハウスオブジョイ:Web
【カカオツリーオーナー返礼品一覧】
今年のカカオツリーオーナーは2万円で契約できます。
まとめ
今回の密着はチョコ好きの筆者にとってはたまりませんでした。美味しいチョコレートはもちろんのこと、カカオやチョコレートへの愛と造詣が深く、カカオを余すことなく使い切る様(カカオ豆を取った後の実は水牛の餌、果汁はジュース、カカオ豆の外皮はお茶になる)は持続可能性が叫ばれる現代社会においての素晴らしいビジネスモデルです!将来的にはハウスオブジョイで育った子供たちの雇用の受け皿になるという展望もあるそうです。
チョコ好きの皆さん、是非カカオツリーオーナーの検討やハウスオブジョイへの来訪をお待ちしております〜!