世界報道自由デーを迎えた5月3日、ジャーナリストらは、フィリピンでの報道に関する「わずかに改善しているが、依然として悲惨な」労働条件について振り返った。
このような改善は、国境なき記者団(以下RSF)が毎年発表する、「世界報道自由度ランキング」におけるフィリピンの最新順位にも反映されている。180カ国中、昨年の147位から、今年は132位へと15位の躍進を見せた。ちなみに日本は昨年の71位から今年は68位と、順位自体は上昇しているものの、基準となる指数のスコアは下がっている。
しかし、RSFの報告書によれば、フィリピンは報道機関にとって依然として「困難な」国であり、特にマルコス政権がABS-CBNのフランチャイズへの回復を拒否していることや、Bulatlatのような代替メディアサイトへの嫌がらせが続いていることが指摘されている。
メディアの自由と責任センター(以下CMFR)のMelinda Quintos de Jesus常任理事は、フィリピン大学でのフォーラムで、「それでも、いくつかの小さな成果を勝ち取った」と述べた。現職のフェルディナンド・マルコス(愛称:ボンボン)大統領は、ロドリゴ・ドゥテルテ前大統領と比較して、「報道機関に対して『好意的』であり、演説に関しては、全く態度が異なる」のだそうだ。
しかし、CMFRとフィリピン全国ジャーナリスト連合による新しい報告書のデータによると、過去10ヶ月間に報道機関に対する脅迫や攻撃が少なくとも75件あったことを指摘した。「マルコス大統領が、あらゆる方面に国家機関を配置し、メディアを積極的に攻撃するという伝統から、まだ脱却していないことを示唆している」という。
一方で、ジャーナリズムのあり方も変化してきている。伝統的なジャーナリズムから脱却し、情報を記者間で共有して危険から身を守ったり、新しいプラットフォームを開拓してより多くの人々に情報を伝えたりしているのだという。
RSFのランキングでは、「2016年以降、政府が批判的なジャーナリストやメディアを標的として攻撃し、絶えず妨害をしているにもかかわらず、極めて活気に満ちている」という評価をされているフィリピン。大統領の代替わりと共にメディアへの態度は軟化したが、支持率は依然として好調だ。引き続きメディアと政府の動向に目が離せない。