かつて反政府勢力に所属していてKa-Marikitとしても知られるArian Ramos氏は、政府が行う「the Enhanced Comprehensive Local Integration Program(以下E-clip)」の遅延と、現在Talaingodで進行中の「アバカ危機」が反政府勢力に悪用される恐れがあると警鐘を鳴らしている。これらの問題は政府と敵対するために利用され、ダバオ地方での暴動の復活につながる可能性があるという。
同氏は「現在Talaingodに暮らす先住民達は、軍に食べ物を求めるほどの食糧危機を迎えている」と説明。彼らが栽培するアバカ繊維の買い手が、製品への信頼性の懸念から彼らの製品を購入するのをやめた事で、今回の「アバカ危機」に発展した。同氏は「契約していた会社いわく彼らの製品は偽物だったらしいので、彼らが収入源を絶たれたのも無理はないだろう」と付け加えた。
現在、約2,000人もの先住民たちが危機に瀕していて、自殺や学校に通えなくなる等の問題も生じているという。同氏は「これは悪用可能な問題であるため、非常に大きな問題です。例えば、New People’s Army(NPA)が彼らに対して、食糧がないのだから降伏しても無駄に終わると伝えるかもしれません」と考え得る問題の可能性を示した。
さらにこの懸念に加え、現在E-clip援助の遅れという問題も発生している。E-clipは、反政府勢力達がフィリピン政府への忠誠心を回復できるよう支援することを目的としたドゥテルテ政権下のプログラムだ。Ramos氏いわく「かつての反政府勢力たちは未だにダバオ市からのE-clip発行を待っている状態で、一年以上待機している人もいる」という。
フィリピン軍(Armed Forces of the Philippines :AFP)は現在元反政府勢力の要望に応えていくのが難しい時期を迎えている。この問題を受け、第10部隊の広報担当であるMark Anthony Tito大尉は遅延の事実確認を行い「既に手続きは進行中なので発行を待つか自治省(Department of Interior and Local Government:以下DILG)が資金を割り当てるかのどちらかになるでしょう」とコメントしている。
Marikit氏は「飢餓といった政府に敵対する理由がある限り、暴動は復活し暴動を根絶しようとする努力は水の泡になってしまう。反政府勢力のリーダーを殺そうが逮捕しようが、不平等が存在する限り暴動は起こり得ます」と言及。暴動とは無縁の地方を維持するため、地方政府に元反政府勢力達が直面している問題に早急に対処するよう訴えた。
ダバオ市は東南アジアで第2位の治安の良さを誇ると言われている。市民の安全のためにも、地方政府には迅速かつ抜本的な問題解決を目指してもらいたい。