【コラム】「真実」をめぐるドゥテルテ政権とラップラーの戦い

ただし、ケンがこの記事を名誉棄損で告発したのは、5年後、ドゥテルテ政権成立後の2017年で、国家捜査局は時効を理由にこれを棄却する。だが翌年、法務省の検察官らが、サイバー犯罪防止法(2012年9月)によって時効が12年間に延長されたとして改めて起訴した。もっとも、同法は問題の記事が掲載されてから4カ月後に成立したので、遡っては起訴できない。それゆえ、2014年に同記事のタイプミスが修正されたことをもって起訴したのである。そして、この無理筋の起訴に、裁判所が有罪判決を下したのだ。

では、なぜドゥテルテ政権下で、こうした強引なメディアへの攻撃が相次ぐのだろうか。国民の8割近くという高い支持率があるにもかかわらず、なぜ批判的な報道に対して大きく構えることができないのだろうか。

大統領の地元ダバオで販売されているドゥテルテTシャツ

まず、部下によるドゥテルテへの忖度競争があろう。どのメディアにも、大統領は直接手を下していない。ドゥテルテは部下に忠誠心を競わせることに長けており、出世を望む者らが彼に気に入られようと、政権の批判者を先走って攻撃しているようだ。