都市封鎖(コミュニティ防疫)下のダバオで物々交換がブームになっている。中部ビサヤ諸島パナイ島南岸のイロイロ市から始まった物々交換のFacebookグループページが、各都市で同様の展開を見せており、ダバオでも急成長している。
この物々交換グループのダバオ版が、 Davao Barter Community(ダバオ物々交換コミュニティ:DBC) と、Davao Barter Community Official(DBCO)である。両者は名前は似ているが個別に発生した別グループ。
DBCは先月、5月12日にFacebook上に作成され、現在メンバーが約5万人。一方DBCOは、同じく先月22日にグループが作成され、2週間でメンバーが10万人を超えた。これらのオンラインコミュニティでは、米や野菜、果物、植物、高級品(ブランド物)、電化製品まであらゆる物が取引できる。具体的な取引では、一眼レフカメラと数キロの粉ミルクが交換されたケースや、米と引き換えに湯沸かし器や中古スマートフォン、電化製品などのトレードが行われたケース等がある。
注目したいのは、コミュニティ内で他者への支援活動が積極的に行われていることである。特に少数民族や貧困地域など社会的弱者とのトレードでは、彼らが必要とするものを自分の所有物と交換することで手に入れ、それらアイテムと少数民族が提供できるものと交換する。先日、コミュニティ内のある女性は、少数民族の友人に扇風機を送り、自らは果物を受け取った。
コミュニティ内では金銭のやり取りの一切が禁じられているが、取引の価値判断基軸になる物品も流動的に存在している。特に提供できる物がない場合、最近の傾向では、多くのメンバーが、植物やスパム缶(ランチョンミート缶詰)を用意するという。現在のところ、これら物品が一種の貨幣的な役割を担っているが、これはコミュニティ内の需要によって変動があるようだ。
もちろん貨幣との交換は禁止されている。物々交換コミュニティを安全に保つために、コミュニティ内ルールも徹底しており、禁止条項に当てはまる投稿は管理者グループに即座に削除される。例えばダバオ物々交換コミュニティ・オフィシャルに参加するためには、Facebook上で下記10か条に同意しなければなない。
- ①販売の禁止。いかなる物品も貨幣との交換は禁止。更に土地、車などの資産、銃器などの危険物の交換禁止
- ②他者の尊重。グループ内での誹謗中傷、他者への攻撃を禁止し、侮辱的な言葉なども禁止。礼儀と、規律、他者への尊重を重視するコミュニティにすること
- ③価格表示の禁止。コミュニティ内では価格表示を一切禁止する。推定価格も表示禁止。画像に価格がついてしまっている場合は別の画像で代用
- ④良質な取引。期限切れ、偽造品、不良品の交換の禁止、相互の利益になるもののみを取引すること
- ⑤明瞭な取引。物品の写真、アイテム名、説明、取引理由、場所などを明記して投稿すること
- ⑥酒類の販売禁止
- ⑦ペットの取引禁止
- ⑧タバコの取引禁止
- ⑨マスク、アルコール、消毒剤などコロナ防疫関連の物品の取引禁止
- ⑩ギャンブル関連の投稿、避妊、性関連アイテム等取引禁止
このように、グループの規則が確立されており、情報に透明性があることにより、グループメンバーが安心して取引を行えていることも、コミュニティの成長要因のひとつであるようだ。
コロナ対策下の都市封鎖(コミュニティ防疫)の影響で家庭菜園がブームになっていることや、通常の物流が非常に制限されていることなども大きな要因であろう。コロナ前までの貨幣経済と、デジタルコミュニティーベースで生まれた物々交換の仕組み、これらが共存する新しいエコシステムが形成されつつある。