過激な発言や政策を打ち出す大統領として、世界中に知られているフィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領。そして現在、ダバオ市を治めているのが、大統領の娘にあたるサラ・ドゥテルテ市長だ。日本では、新型コロナウイルス(以下、COVID-19)への政府や知事の対応に、批判が集まっているというニュースを多く見かけるが、ここダバオの市長はどうだろうか。日本とは市と国の関係性も異なるため、時には驚くような対応が見られるので、最近のサラ市長の対応の一部を紹介していきたい。
サラ市長は3月後半、自身がマニラから帰郷後、2週間に渡り自宅隔離を行っている間も、SNSやメディアを通じて絶えず情報やメッセージを市民に発信し続けていた。自宅隔離明けの3日前、集会の禁止や外出制限が出されているにもかかわらず、それを守っていない人々がいるという通報が寄せられた際には、「ルールを守っていない人達、あと3日間待ってなさい。この自宅隔離が終わったら、私が直接そこに行って、あんたたちの顔をひっぱたいてやるから」という強烈なメッセージを発信した。そして自宅隔離明けの日の朝には、朝シャン直後にシャワールームから爽やかな笑顔の自撮り写真と共に「グッドモーニング!やっと自分の目で街を見て回れるようになる。本当に楽しみだわ」というメッセージもSNSで発信している。
ドゥテルテ大統領がダバオ市長時代に、毎夜のように自らタクシーやバイクを使い、市内をパトロールしていたという話しは有名だが、サラ市長もまた、自身の大型バイクを運転し、市内の状況を視察している。そして強化されたコミュニティ防疫が実施されているにもかかわらず、市内を走る自家用車が多いことに業を煮やしたサラ市長は、市内の幹線道路に戦車や重機を配置し通行を妨害するという策を打ち出した。驚くことに市内の主要道路の真ん中には、戦車やクレーンが横たわっている光景が目に飛び込んでくる。これも彼女なりの、『外出を控えてほしい』という市民へのメッセージの発信方法なのだ。
さらに4月16日には、外出制限が強化される中、市民から市長宛に寄せられたメッセージに対し、強烈な皮肉を込めた塩対応をし、地元メディアで話題となっている。 市民からのメッセージとサラ市長の返答内容は以下の通り。
市民「FM(フード・メディカル)パスを使って、恋人に会いに行ってもいいですか?」
サラ市長「もしもあなたが、恋人のことを食べ物だと思うのであれば、どうぞお使いなさい。そしてもちろん、恋人を薬だと思う場合も同じです。どうぞ行ってください。ただしそれで、もしも新型コロナウイルスに感染したとしても、あなたを火葬する費用は絶対に出さないので、そのつもりで。」
サラ市長はこのメッセージの後に、『こういうくだらない質問は、本当に頭にきます。皆さんもそう思いませんか?』
という言葉で締めくくっている。
もしもこのような対応を日本の議員や公人が行ったとすればどうなるだろうか。おそらく、インターネットやメディアで袋叩きにされ、辞職に追い込まれることになるだろう。このように海外では、日本国内の対応とは大きく異なる点があり、なかなか興味深い。せっかく家にこもって時間に余裕のある自粛期間、このチャンスに普段はあまり見ることのない地元メディアを覗いてみるのも面白いかもしれない。
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