フィリピンは麻薬撲滅キャンペーンを継続している。ロドリゴ・ドゥテルテ大統領はダバオ市長時代、麻薬密売人と中毒者の殺害を半公認し、市の治安を劇的に改善した。2016年の大統領就任後も、ルソン島を中心に、超法規的措置と言える過激な方法で麻薬組織を壊滅させている。フィリピンの治安は改善し続けているが、国連などからは人権無視であると批判が集まっている。
2019年11月、ドゥテルテ大統領は、違法麻薬取締各省庁間委員会(以下ICAD)共同議長としてLeni Robredo元副大統領を任命した。副大統領は共同議長就任後、国連や各国の麻薬取締機関と協議を始めたが、これは国際的な批判を顧みないドゥテルテ大統領の方針とは相いれなかった。結局、Robredo副大統領はICAD共同議長職を2週間で解任された。
その後、Robredo副大統領は麻薬撲滅キャンペーンを「失敗」と批判し、ニュースとなった。副大統領がICAD共同議長の任期中に確認したデータでは、過去三年間で実際に押収された麻薬と資金は、実際には政府発表した量の1%しか押収されていなかったという。政府と警察が数字を操っているとの見方が、批判の根拠の1つだ。
大統領の地元、ダバオ地方警察(Police Regional Office Davao 以下PROダバオ)は副大統領への反発を隠さない。PROダバオのFilmore Escobal氏は、フィリピン国内およびダバオ地方での犯罪数減少をRobredo副大統領は理解していないと述べた。ダバオ地方の犯罪数は2015年の11,107件から、2019年には2,788件に減少していると警察の統計が示しているという。Escobal氏はフィリピン国民の82%が麻薬撲滅キャンペーンを支持しているとも付け加えた。
ダバオ市議会のConrado Baluran議長は、民主主義にのっとり、Robredo副大統領は麻薬撲滅キャンペーンを批判する権利があるとした。しかし同時に、各種統計は副大統領の意見に反し麻薬撲滅キャンペーンを肯定しているとも発言した。同氏は、副大統領は2022年の大統領選挙に向けて、ドゥテルテ大統領の批判を行い支持率を下げようとしていると見解を述べた。
副大統領とダバオの要人、両者の批判がお互いに的を外していると感じるのは筆者だけであろうか。フィリピンの治安改善が成し遂げられたのは、ドゥテルテ大統領の過激な手法が成果を上げているからである。しかし、麻薬撲滅キャンペーンの悪影響と政府の統計改ざんは、客観的な視点のもと否定的に評価されるべきであろう。副大統領の問題提起を正面から受け、自己批判と改善を行わなければ、フィリピンが一歩進んだ国として認められることはない。
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