【特集】 ドゥテルテ大統領の365日 前半 ~ ドゥテルテ大統領1年の軌跡 その3~

これまでダバオッチ編集部では2回に渡って特集を組み、「ドゥテルテ政権の成績表」「ドゥテルテ政権1年の数字」とのタイトルで現政権の評価や実績に着目した。3回目となる今回は特集の最後の締めくくりとして、2017年6月30日の就任からこれまでのドゥテルテ大統領の足跡を追いかける。本稿ではその前半に当たる、2016年7月から12月末までをお伝えする。

※編集部の独断と偏見で、ドゥテルテ氏らしい政策や発言、重要項目だと思われるものは太字にしてあります。

6月30日:フィリピン大統領選で当選したロドリゴ・ドゥテルテ氏の就任宣誓式が首都マニラのマラカニアン宮殿で行われた。

7月1日:フィリピン国家警察長官にロナルド・デラ・ローザ氏を任命し、警察の職権乱用に関しては妥協を許さぬ厳しい取り締まりを約束した。デラ・ローザ氏のニックネーム「バト」はフィリピン語で岩石(Rock)の意。同じくスキンヘッドで、The Rock異名を持つ元プロレスラー俳優のドゥウェイン・ジョンソンと対比されて、国民的人気者となった。

7月5日:フィリピン国家警察内部の現職及び元幹部で麻薬に関係する5名の警察高官の名前・役職を公開。

7月7日:南シナ海問題が浮上中であった中国の大使、趙鑑華(Zhao Jianhua)駐フィリピン大使とマラカニアン宮殿で会談。その後、国際裁判所が12日の仲裁裁判で、中国が南シナ海のほぼ全域に管轄権を主張しているのは「法的根拠がなく、国際法に違反する」という判断を示し、フィリピンの主張を全面的に認めた。

7月14日:フィデル・ラモス元大統領に中国との領海問題について対話をしてほしいと依頼。後日7月23日に同氏は中国特任大使の役職を受諾。ラモス氏は特任大使を同年10月に辞任している。

7月15日:麻薬撲滅運動の最初の舵取りとして、麻薬王の1人とされる中華系フィリピン人ビジネスマンのピーター・リム氏を呼び出し会議で直接「お前を処刑する。終わらせてやる。」と発言。この様子はテレビでも放映された。

7月21日:フィリピン政府軍及び警察署訪問ツアーを開始。最初の視察地としてミンダナオ西部バシラン州イサベラ市第104陸軍旅団総司令部、ザンボアンガのナヴァロ基地を訪問。

7月23日:一般市民による国の文書及び情報へのアクセス、政府全ての情報開示を認める大統領令を発布。

7月25日:大統領として初の施政方針演説を行い、特に以下の項目が強調された。連邦制移行への提案、共産ゲリラとの停戦、テロリスト対策、経済に関する法制緩和、個人及び法人税の引き下げ、交通渋滞問題の緊急対策、鉱業に関する規制見直し、ブロードバンドや公共の場へのFree Wifi設置、森林伐採、健康福祉法案等 

7月27日:国家安全対策委員会を開催。4名の前大統領(ラモス、アロヨ、エストラーダ、アキノIII)も出席。

8月7日:長年麻薬取引に関係し、麻薬を国家規模の問題に拡大させた張本人として159名の現職及び元政府官僚と判事のリストを公開。24時間以内に出頭または調査を開始させない場合は「お前らを軍部か警察に狩らせる」と発言。

8月9日:「麻薬戦争を邪魔するなら戒厳令を発令してやる」と最高裁判所長官に脅しをかける

8月17日:12月から警察官、兵士、麻薬捜査官の給与を2倍にすると発言

8月28日:人権グループに対し「麻薬ジャンキーは人間ではない」と説明。

9月3日:ダバオ市でのイスラム過激派アブサヤフによる爆弾テロを受け、軍や警察など治安当局により強い権限を与えることになる「無法状態宣言」をフィリピン全土に発令。

9月3日:前アメリカ合衆国大統領バラク・オバマ氏が人権問題について触れたことにに対して「くそったれ」発言。これによりホワイトハウスは予定していた大統領会談を中止した。

9月5日~6日:ASEANサミットに出席し、2017年ASEAN首脳会議において議長の役務を引き受けることを承諾。

9月8日:インドネシア訪問

9月9日:「私は米国ファンではない」と述べ、どこにも属さない外交政策を行うと発言。

9月26日:フィリピン和平会議で、フィリピン共産党、武装組織である新人民軍(NPA)、民族民主戦線(NDF)と会見.。

9月28日:ベトナム訪問

9月30日:「300万人フィリピン麻薬中毒者ども、ヒトラーばりに惨殺してやる」と発言。

10月2日:バコロド市でのフェスティバル中のスピーチで「比米防衛協力強化協定(EDCA)の施策を取りやめにする」とアメリカに脅しをかける発言。

10月3日:国軍兵士の待遇を改善するという法案の承認を行う。

10月4日:「大統領や市長が犯罪者を殺すと発言しても、法律上犯罪にはならない」と発言。またフォート・ボニファシオの陸軍旅団に向けて「モロ民族の若者をテロリストにしないためにも、米軍はミンダナオから出ていってほしい」と発言した。フィリピンのユダヤ人コミュニティーに対して、先日ヒトラーを引き合いに出して、麻薬犯を殺すと発言したことについて謝罪を行った

10月10日:ザンボアンガ市の警察官に対する演説で、麻薬や犯罪行為に手を染める警官の情報を出すものには200万ペソの報奨を与えると発言

10月12日:海上保安局の115周年記念式典でアメリカとの条約を破棄する気はないが、私の任期中の合同軍事演習はフィブレックス33が最後になると発言。

10月17日:ブルネイ訪問、ハサナル・ボルキア国王と会見。

Source of Photo: ABS-CBN News

10月18日~20日:中国北京を訪問し、習近平国家主席と会見。中国とフィリピンのビジネスマンに向けて「チェックメイトだ、アメリカは負けた。」と発言。この訪問で民間セクターも含め中国から240億ドルの投資が発生した。 

10月25日~27日:日本を訪問し、安倍晋三首相と会談。ドゥテルテ大統領は会談後「フィリピンは南シナ海を含む地域共通の懸念に対し、日本と緊密に強力していく」と言明。

11月1日:アメリカ合衆国国務省が27,000丁以上の自動小銃の輸出を取り下げた決定に関して、「ロシアから買えばいいだけ」と一蹴。

11月11日:国内の無法状態が悪化するならば人身保護法を一時的に凍結する可能性があると発言、また戒厳令を発令することは考えていないとも述べた。ミンダナオの過激派マウテグループの活発化についても発言した。

11月28日:大統領府での会見で、公務員でありながら麻薬に関係しているとされる5,000名分のリストを持参して「麻薬中毒者は家から出るな。出たら俺が殺してやる」と発言。

12月2日:第56代アメリカ合衆国大統領ドゥナルド・トランプ氏に就任祝辞の電話をかける。トランプ氏はニューヨークへドゥテルテ大統領を招待すると述べ、逆にドゥテルテ氏はASEAN首脳会議に招待すると述べた。 

12月12日:ミンダナオのマウテグループが「攻撃を辞めないならマラウィ市を占拠して燃やしてやる」と政府軍を脅迫していることに関して、「やってみろ」と発言。

12月13日:カンボジア訪問

12月15日:シンガポールを訪問。ドゥテルテ大統領はダバオ市長時代の1995年、シンガポール国旗をダバオ市民1000名の前で燃したことがあり、シンガポール入国禁止となっていたが訪問は無事終了した。(国旗の事件は、シンガポールで家政婦をしていたフィリピン人女性が処刑されたことに関しての抗議)

12月22日:2017年度フィリピン国家予算3兆3500億ペソを承認。2016年より11.6%予算を拡大。

 

まとめ:

このように大統領の半年を時系列で追いかけてみると、国内外でのドゥテルテ氏の独特なスタイルが浮かび上がってくる。就任半年の大統領としての動きで重視したのは、治安と外交であろう。外交ではアメリカに寄り過ぎたこれまでの政策を転換させるために、中国、日本、ロシア、ASEANとの距離を近づけ、支援、投資を拡大した。国内では現在のミンダナオ戒厳令につながるミンダナオ紛争問題への取り組みや、犯罪・麻薬撲滅、汚職公務員の排除などで自らの存在をアピールしている。

次回は特集最終回、ドゥテルテ大統領の365日後半 をお届けする。