1992年1月15日、フィリピンワシの飼育下繁殖と孵化に初めて成功し、その誕生は世界的に祝福された。この個体はタガログ語で「希望」を意味する「パグアサ(Pag-asa)」と名付けられた。
ダバオに拠点を置くフィリピンワシ財団(以下PEF)のデニス・ジョセフ・I・サルバドール事務局長は、次のように説明している。
「『パグアサ』という名前には、フィリピンワシの生存に対する希望が込められています。人々がこの大義のために団結すれば、この種が絶滅の運命を避けられるという意味です。」
それから33年後の2025年12月5日、新たなフィリピンワシが誕生した。この個体は、新設された国立鳥類繁殖保護区(以下NBBS:National Bird Breeding Sanctuary)において、協力的人工授精によって生まれたものである。
このワシは、NBBSの孵化システムを開発したドイツ企業のCEO、ニコ・ヘルス氏によって里親に選ばれ、「英雄」を意味する「バヤニ(Bayani)」と命名された。
PEFのサルバドール事務局長は、この命名について、寄付者が野生復帰と飼育繁殖に取り組むチームの「英雄的な努力」を称えたものであると説明した。「バヤニ」は、生息地の喪失や密猟と闘う種の象徴とされている。
PEFの研究・保全部門ディレクターであるジェイソン・C・イバニェス氏は、技術と専門知識の重要性を強調した。「バヤニ」の孵化には、精子の冷凍保存、自動孵化技術、雛の強化ケアといった最新技術が活用された。
また、この成功には国際的な協力が不可欠であり、PEFの現地人材に加え、チェコ共和国や欧州各国のパートナーから知識と経験が集結した。
今回の成果は、繁殖拠点を旧センターからNBBSへ移転した判断の正しさを示すものとなった。旧センターは1987年にダバオ市カリナンのマラゴスに設立されたが、鳥インフルエンザのリスクや周辺環境の変化といった課題に直面していた。
新施設はダバオ市トリルのバランガイ(行政区)エデンに位置し、人里離れた環境にある。気候や標高、景観がフィリピンワシの自然生息地に近い点が特徴である。
イバニェス氏は、保全繁殖が絶滅回避の「実効的な手段」として機能していると述べた。今後の課題は、野生個体の再導入と繁殖促進により、生息地への放鳥を進めることである。
フィリピンワシは世界最大級の猛禽類であり、国際自然保護連合(IUCN)によって絶滅危惧IA類(深刻な危機)に分類されている。フィリピン固有種であり、寿命は30〜60年とされる。
野生個体数はかつての20%未満にまで減少しており、遺伝学的研究では近親交配の進行と遺伝的多様性の低下が指摘されている。これは種の存続にとって深刻な脅威である。
保全繁殖は、異なる血統を組み合わせることで遺伝的多様性を回復させる手段であり、野生では出会うことのない個体同士の交配を人工的に可能にするものである。
イバニェス氏は緊急課題として、第一にルソン、サマール、ミンダナオ各地から異なる遺伝系統の確保、第二に野生つがいの特定とその子孫の保護、第三に国際的な繁殖機関との連携強化を挙げた。
また、古い巣の位置情報の記録と保護も、生息地保全の強化につながるとしている。シンガポールのマンダイ・ネイチャーへの個体貸与や、チェコ・リベレツ動物園との協力はその一例である。
フィリピンワシの保全プログラムには継続的な支援が必要である。NBBSは「ノアの方舟」ともいえる存在だが、その維持や野外調査には多大な資源を要する。
かつて「サル食いワシ」とも呼ばれたこの種は、1995年にフィデル・V・ラモス大統領(当時)によってマヤに代わり国鳥に指定された。
ラモス氏は当時、「国鳥が滅べば、この国の自然資源を守る努力もまた失われる」と警鐘を鳴らした。フィリピンワシの存続は、人類が自然に対して責任ある存在であるかどうかを示す試金石となっている。






