【News】フィリピン海域の海難事故連鎖ー急変する北東モンスーン最盛期の予測不能な荒波

沿岸警備隊

フィリピン周辺海域では現在、北東モンスーン(現地名・Amihan:アミハン)が最盛期を迎え、海況は広範囲で中程度から荒れた状態となっている。冷気の流入と持続的な北東風の影響により波浪と海流が強まり、特に北部および東部の沿岸海域では大きなうねりと荒れた海面が顕著である。

ミンダナオ地方では、「アミハン」に加えて東風の強まり、局地的な雷雨、対流性暴風雨群の発生が重なり、海象は一層複雑化している。こうした気象条件は、沿岸部だけでなく比較的遮蔽された海域でも中程度から荒れた海況を生じさせ、航行の安全性や船舶の安定性を著しく脅かしている。

これらの危険な海象条件は、2026年1月に発生した少なくとも3件の重大な海難事故と時期を同じくしており、ルソンおよびミンダナオ両地域で20人以上の犠牲者を出す結果となった。

1月28日現在、フィリピン管轄海域(PAR:Philippine Area of Responsibility)内に活動中の低気圧域は確認されておらず、今回の荒天は台風や低気圧によるものではなく、主として北東モンスーンの季節的力学に起因している。

フィリピン大気地球物理学天文局(DOST-PAGASA)ダバオ気象観測所の主任気象官ロリータ・ビナライ氏は、「SunStar Davao」紙の取材に対し、「『アミハン』最盛期に伴って強まった北東から北の風が、特に太平洋に面した沿岸海域の海況を著しく悪化させている」と説明した。

さらに、「持続的なモンスーン風と局地的な気象要因の相互作用により、例年の1月を上回る高波が発生し、外洋を航行する小型・中型船舶にとって深刻な危険要因となっている」と指摘した。

サランガニ湾 ― 「MBCAアメハラ号」転覆事故

こうした状況下で、1月19日にはサランガニ湾でレジャー用ダイビングボート「MBCAアメハラ号」が転覆し、適切な出港許可を得ないまま荒れた海況と強い潮流に遭遇したことが事故の一因とみられている。

西フィリピン海 ― 貨物船「M/V デボン・ベイ号」転覆事故

続いて1月23日には、西フィリピン海のスカボロー礁付近でシンガポール船籍の貨物船「M/Vデボン・ベイ号」が転覆し、モンスーンによる波浪と海流、さらにばら積み貨物の液状化リスクが船体の安定性を損なった可能性が指摘されている。

バシラン州沖 ― フェリー「M/V トリシャ・ケルスティン3号」沈没事故

さらに1月26日には、バシラン沖で旅客フェリー「M/Vトリシャ・ケルスティン3号」が沈没し、多数の死傷者と行方不明者を出す惨事となった。「アミハン」最盛期による荒海と局地的な強風が船体傾斜を引き起こしたとされ、事故後、運輸省は関係船社の全旅客船を即時運航停止とし、安全監査を命じた。

河川パレード中のモーターバンカ(小型モーターボート)転覆事故

また、1月25日にはラグナ州ルンバン町で行われた宗教行事の水上行列中、モーターバンカが河川で転覆する事故も発生した。これは、モンスーン風が河川流速を増幅させることで、内水域であっても船舶の安定性が損なわれることを示す事例となった。

海の乱流を生む科学的背景

ビナライ氏は、「アミハン」最盛期がもたらす主な海上リスクとして、冷たい空気塊、持続的な北東風、露出した沿岸部における波浪の増大の三点を挙げている。

これらは台風や低気圧とは無関係であるものの、表層海流とうねりを発生させ、小型船舶の転覆や中型商船の航行を困難にする。特にサランガニ湾、西ミンダナオ、スカボロー礁周辺のように地形が波エネルギーを増幅する海域では、その影響が顕著である。

今月相次いだ海難事故は、科学的知見に基づく航行判断、安全手順の厳守、そして気象予測を運航計画に組み込む重要性を改めて浮き彫りにした。

今後の見通しと課題

ビナライ氏によれば、「アミハン」最盛期の影響は2026年2月まで続き、3月にかけて次第に弱まる見通しである。

熱帯低気圧が存在しない状況下でも高い海上リスクが継続することから、当局は警戒を強め、航行者には最大限の注意が呼びかけられている。

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