近年、フィリピンでヒト免疫不全ウイルス(以下、HIV)の感染例がアジア地域において最も速いペースで増加しており、問題視されている。国連の報告書によると、フィリピンにおける新たなHIVの感染例は2010~16年で140%増加。これに対しアジア太平洋地域では同時期に13%減少している。
このような背景から、フィリピン第3の都市であるダバオ市議会議長のメアリー・ジョセル・ディリグ・ヴィラフエルテ氏は、特に若年層の公衆衛生の向上と安全確保を目的に、コンドームの一般市民への配布の支持を表明し、公共のトイレにコンドームの自動販売機を設置することも視野に入れていることに言及した。
同氏は記者会見で、コンドームの普及は若者を性感染症から守り、HIVによる免疫不全症候群(以下、AIDs)から守ることを目的としていると語った。また、同国で深刻な問題とされている10代のHIV-AIDs患者急増が、コンドームを使用しない高リスクな性行為に起因するとも述べた。
またダバオ市では、感染または発症が確認された十代の若者の大部分が13歳から17歳の間であり、最年少の感染者は9歳の少女であることも明らかになっており、同国内においてダバオ市があるダバオ地域(リージョンXI)は、新たに感染が診断された患者の多い地域第7位にランクインし、今年新たにHIV症例として報告される患者の総数は230人~280人にも上るといわれている。感染していても検査を受けていない例も多く、特に性産業に従事する人の検査割合は少ないと見られており、買春に来た外国人が知らずに感染して国へ帰るという例も多いのではないかとの見解もある。
さらに同氏は、「子供たちが安易な性交渉を行っているとは信じたくないが、これは現実に起こっていること。HIV陽性患者の数を減らすために話し合いを進め、協力しなければならない。フィリピンではHIV感染者が増加しているが、他国では、必要な場所、場面で無料のコンドームが利用できる環境が整っており、感染者の減少させることに成功している。このような取り組みはダバオ市ではまだ行われておらず、行動を起こしていく必要があるのではないでしょうか。」と自信の見解を強く発信した。
その一方で、未成年者へのコンドームの供給については、ジレンマがあるとの胸中も明かしたが、予防に焦点を当てて、若者にHIVが何であり、どのように広がっているのかについて、また、コンドームの必要性や使用法を学ばせていく必要性を訴えた。