ダバオ地方は1月に物価が9.4%上昇したことで、国内で3番目に高いインフレーション(以下インフレ)率を記録した。フィリピン統計庁(以下PSA)によると、同地方のインフレは2022年8月から、住宅費・水道及び電力料金・燃料費の上昇により進行してきたという。これは2022年1月以降、ダバオ地方で4番目に高いインフレ率であった。現在のインフレ率は、フィリピン国内で、10.3%の西ビサヤ地方、9.4%の中央ルソン地方に次いで高い。
インフレとは、財やサービスの価格がどれだけ速く上昇するかを示す指標であり、経済において自然な現象である。しかし新型コロナウイルス感染症の大流行によりそれが加速し、特に個人と家計に大きな負担となっている。2022年1月のインフレ率は3%だったが、1年後には9.4%にまで上昇した。
急激なインフレ率の高騰の影響は、ダバオ市バンケロハンで2人の子どもがいるVernalyn Yaparさんのような人々の苦悩に見ることができる。彼女によると、ショッピングモールでマーチャンダイザーをする夫の給料は日給443ペソである。これでは光熱費・水道料金・食費・交通費・子どもたちの食事手当といった基本的な生活必需品を賄うのに不十分だという。
また、社会保険機構(SSS)の保険料などが給料から差し引かれるため、生活は余計厳しくなり、残った金額で日常生活を送らざるを得ないという。
PSAは住宅費・水道料金・電気料金・燃料価格がインフレの主要因であり、2022年12月の8.8%から2023年1月の8.8%へと急騰したと述べた。一方、食料品のインフレは12月の10.7%から1月の10%へとわずかに減速した。PSAは、この減速は米の年間成長率が4.4%と低下したことが原因であるとしている。
食料品のインフレ率の低下にもかかわらず、全体のインフレ率は上昇を続けている。2022年12月の8.1%から2023年1月には8.7%を記録した。PSAによる2月7日の報告によると、2008年11月以来、これまでで最高のインフレ率だという。
経済学者のGerardo Sicat氏は、国内の経済要因と、諸外国で相次いだ経済・政治情勢の変化の影響が重なったことで物価が上昇したと述べた。国家経済開発庁(NEDA)は一方で、野菜・果物・米の価格上昇の原因は悪天候と投入資材のコスト上昇に伴う生産量の低下であるとしている。
同庁によると、短期的なインフレ対策としては、一時的な輸入制限の緩和や価格監視、対象を限定した社会的支援などによる財の供給増強が必要だという。中長期的には、NEDAの優先課題は農業生産性の向上による食料品の安全性の確保と、エネルギー転換・開発プログラムの推進によるエネルギーの安全性の確保であるとしている。
しかし、インフレが継続すると、「現在すでに不安定な雇用と低所得で衰弱している経済に、さらなる打撃を与えることになる」と経済シンクタンクIBON Foundationの常任理事Sonny Africaは語った。「政府は人々に対するインフレの影響を緩和するため、価格を調整したり、賃上げを義務付けたり、社会保障を拡大し、最貧困層のフィリピン人や小規模生産者、企業に対する必要な支援を与えたりすることができる」と同氏は述べている。