2021年1月8日、 フィリピンワシ・ファウンデーション (Philippine Eagle Foundation:以下PEF)で飼育されていたフィリピンワシ「パサガ(Pasaga)」が亡くなった。 パサガ は、同財団で初めて飼育し、そして孵化させたワシだった。その存在は同財団だけでなく、ダバオ市の象徴的なものだったといえる。パサガの歴史を振り返っていこう。
パサガ は、トリコモナス症やアスペルギルス症を患っていた。このどちらもが、鳥類を死に至らせる危険がある感染症であった。1週間以上にわたって処置がおこなわれたが、その間もパサガはずっと下痢を患っていたという。そして、2021年1月6日、午後8:03に亡くなった。 パサガは、2021年1月15日に29歳を迎える予定だった。
パサガは人工授精の一種であるcooperative artificial insemination (CAI)という技術で孵化したワシだった。雄のワシから精子を取り出し、それを雌が生んだ卵に着床させる方法だ。そしてその数十年後、2013年2月9日には、最初の子である「マブハイ(Mabuhay)」が生まれた。そしてパサガ自身もまた、人工授精のために精子を提供するドナーとしての役割を果たした。
人工授精のプロジェクトから年齢を理由に身を引いてからも、パサガは「フィリピンの象徴的存在」としての役割を果たしてきた。そして、国鳥であるフィリピンワシが絶滅するのを防ぐために絶え間なく努力している人々に対し、勇気や希望を与えてきた。
パサガの死は、ダバオ市民にも深い悲しみを与えたことだろう。しかし、彼がつないできた命のバトンは確実に次の世代につながった。同協会には現在、33羽のフィリピンワシが保護されている。これからも命のバトンがつながり、フィリピンの人たちの象徴的存在でありつづけてほしいと思う。