ダバオ市議会のレイチェル・ゾゾブラド市議は、市内で人身売買事案が増加していることを受け、ダバオ市民の安全な移住を促進することを目的とした「安全な移住支援条例(Safe Migration Ordinance)」を提案した。
移住労働者委員会の委員長を務めるゾゾブラド市議は、「安全な移住支援条例」を「ダバオ市移住者支援条例(Kalinga sa Migranteng Dabawenyo Ordinance)」に組み込み、海外移住を目指すダバオ市民を包括的に支援する制度として整備する考えを示した。
ゾゾブラド氏は、2026年7月14日の特権演説で、次のように述べた。
「この条例が可決され、着実に運用されれば、その成功が大きく報じられることはないでしょう。なぜなら、本当の成功とは『起こらなかったこと』によって示されるものだからです。手数料をだまし取られることもなく、雇用契約がすり替えられることもなく、パスポートを取り上げられることもなく、未成年者が人身売買の対象として勧誘されることもない。そして、母親が空港の貨物エリアでわが子の遺体を引き取らなければならないような悲劇も起こらない――それこそが、この条例の真の成功なのです。」
ゾゾブラド市議は、この条例について、ダバオ市が築いてきた「安心・安全の文化」を基盤とし、「確認(Verify)」「通報(Report)」「保護(Protect)」「参加(Participate)」を柱とする「安全な移住文化」の醸成を目的としていると説明した。
また条例では、「Apat Dapat(アパット・ダパット:4つの正規確認基準)」と呼ばれる基準の導入も盛り込まれている。これは、「認可を受けた(Lisensiyado)」「承認された(Aprubado)」「公式な(Opisyal)」「適正な料金(Tamang Bayad)」という4つの原則を指し、海外就労希望者が費用を支払う前に必要な情報を十分理解できるよう、フィリピノ語とセブアノ語で周知・啓発を行うとしている。
条例では、「ダバオ市安全な移住・違法就労あっせん防止月間(Davao City Safe Migration and Anti-Illegal Recruitment Month)」を制定し、期間中は安全な移住に関する情報提供や啓発活動を集中的に実施するとしている。
また、就職説明会の安全性向上を図るため、海外就労向けと国内就労向けの募集を明確に区分・表示するとともに、参加するすべての人材紹介機関に対し、フィリピン移住労働者省(以下DMW:Department of Migrant Workers)の就職説明会への参加許可の取得確認を義務付ける。
さらに、国内就職を希望する求職者を海外就労へ誘導する「求人内容のすり替え(bait-and-switch)」を禁止するほか、応募者がその場で契約を迫られることを防ぐため、契約締結前に48時間の熟慮期間を設ける。
さらに、求職者が手数料を支払う前に、DMWの規則に基づく権利や給付内容について、書面で、かつ本人が理解できる言語で説明を受けられるよう義務付ける。
条例案では、パスポートの没収、雇用契約のすり替え、観光ビザを利用した違法な海外就労、住居費名目の債務を利用した搾取、未成年者の勧誘など、人身売買の兆候として知られる行為を防止するための安全対策を制度化することを目指している。
また、被害の相談や支援が必要な場合には、海外フィリピン人労働者(以下OFW)家族福祉・危機対応センター、ダバオ市安全な移住デスク、社会福祉開発省(DSWD)、フィリピン国家警察(PNP)の女性・子ども保護デスクが連携し、被害者を支援する明確な対応体制を整備するとしている。
ゾゾブラド市議はさらに、この条例を通じて「DCplinado OFWキャンペーン(規律と責任ある海外就労を促す啓発キャンペーン)」を推進し、海外就労を目指す人々に対し、十分な知識を身に付け、法令を順守し、経済的な準備を整え、高い職業意識を持つよう呼び掛けるとしている。
また、条例を着実に実施するため、英語、フィリピノ語、セブアノ語の3言語による「移住前同意書(Pre-Migration Agreement)」を導入する考えも示した。この同意書は任意で締結されるもので、署名によって労働者の権利が放棄されることはないとしている。
さらに、多様な関係機関で構成する「安全な移住協議会(Safe Migration Council)」の設置に加え、市議会による監督や成果指標の導入、地方自治法(Local Government Code)に基づく罰則規定も盛り込む方針だ。
また、バランガイ(行政区)のOFW支援窓口の設置に向け、ダバオ市内182のバランガイを対象に、バランガイ会長協会(ABC)、DMW、海外労働者福祉庁(OWWA)、OFW家族福祉・危機対応センターと連携し、3回に分けてオンライン会議を開催する予定であることも明らかにした。
この条例案に関する特権演説は、その後、市議会で第1読会を通過した。
ゾゾブラド市議は今年4月14日にも、ダバオ市で違法な人材あっせんが急増していることへの懸念を表明していた。同市によると、2025年12月31日時点の人身売買関連事案は72件に上り、ダバオ地方で最多だった。
州別では、ダバオ・デル・ノルテ州13件、ダバオ・オリエンタル州12件、ダバオ・デル・スル州10件、ダバオ・デ・オロ州2件で、ダバオ・オクシデンタル州では確認されなかった。
また、ダバオ市で「違法リクルート被害証明書(Illegal Recruitment Certificate)」の発行を申請した72人の内訳は、タロモ地区16人、マリログ地区15人、トリル地区9人、カリナン地区7人、ブハンギン地区4人、ブナワン地区とポブラシオン地区が各3人、アグダオ地区2人、パキバト地区とトゥグボック地区が各1人。このほか11人は地区名が特定されていないものの、いずれもダバオ市内の事案だった。






