東南アジア社会の多様化が進む中、文化や宗教の違いを越えた調和と共生の実現に貢献した個人をたたえる「ハーモニー・イン・ダイバーシティ賞(Harmony in Diversity Award)」が創設され、コタバト大司教区名誉大司教のオルランド・ベル・ケベド枢機卿(Orlando Beltran Quevedo, O.M.I.)が初代受賞者に選ばれた。
この賞は、テマセク基金(Temasek Foundation)が、「5Pグローバル・ムーブメント(5P Global Movement)」を事務局として創設したもので、異なる文化や信仰を持つ人々の間で社会的結束と調和を育む活動に取り組む東南アジアの個人を表彰する。
ミンダナオ出身者として初めて枢機卿に就任したケベド氏は、長年にわたり宗教間対話と平和構築に取り組んできたことが評価された。ケベド氏は、異なる信仰を持つ一般市民の日常的な交流を意味する「生命の対話(dialogue of life)」を重視し、不信感を乗り越え、持続的な平和を築く基盤として推進してきた。
ケベド枢機卿は、ミンダナオ地方の紛争について、単なる治安問題ではなく、社会的公正、先住民族の祖先領域の尊重、歴史的不平等の解決を必要とする社会・政治的課題として捉えてきた。
1996年には、カトリック司教、プロテスタント牧師、イスラム教のウラマー(イスラム指導者)が参加する「司教・ウラマー会議(Bishops-Ulama Conference)」の設立に尽力し、宗教の違いを越えた対話と協力の場を築いた。また、「バンサモロ基本法(BBL:Bangsamoro Basic Law)」など和平関連法制の推進にも関わり、基本的権利、信教の自由、自己決定権の保障を訴えてきた。
第1回となる「ハーモニー・イン・ダイバーシティ賞」には、東南アジア各地から70件を超える推薦が寄せられた。2025年8月1日に創設された同賞は、平和で包摂的な社会づくりに取り組む人々の活動を広め、地域を越えた協力のネットワーク構築を目的としている。
シンガポール共和国の元大統領で、「ハーモニー・イン・ダイバーシティ賞」の後援者を務めるハリマ・ヤコブ氏は、「ケベド枢機卿は、分断を越えて人々を結び付け、社会的結束を築くという賞の理念を体現する人物」と評価した。
また、テマセク財団の事務局長兼最高経営責任者(CEO)であるン・ブーン・ヘオン氏は、ケベド枢機卿の活動について「調和とは、継続的な努力によって忍耐強く築かれるものであることを示している」と述べ、異なる文化を持つ人々の平和的共存と相互理解への貢献を称賛した。
「5Pグローバル・ムーブメント」創設者のM・アルスジャド・ラスジッド氏も、ケベド氏の活動は「信頼、尊重、違いを乗り越える勇気によって持続的な平和が築かれることを示している」と評価した。
審査委員会は、数十年にわたるミンダナオでの平和構築、宗教間理解、和解への取り組みを高く評価し、ケベド枢機卿を選出した。
受賞に際し、ケベド枢機卿は「調和とは、違いが存在しない状態ではなく、互いの違いを尊重し、理解しようとする姿勢である」と述べ、「多様性は恐れや分断の理由ではなく、人類の共通性を豊かにする力である」と強調した。
ケベド氏はまた、真の平和は日々の対話、尊重、思いやりの積み重ねによって築かれると述べ、異なる信仰や文化を持つ人々が共に歩む社会への期待を示した。
「ハーモニー・イン・ダイバーシティ賞」の授賞式は、2026年7月15日にインドネシア・ジャカルタで開催される。ケベド枢機卿には、賞金2万米ドルと記念トロフィーが贈られるほか、地域の平和構築関係者や政府、市民社会、民間部門の代表者らと活動を共有する機会が与えられる。






