フランシスコ・バンゴイ国際空港（以下DIA：現ダバオ国際空港）は、ミンダナオで最も利用客の多い航空拠点であり、政府の官民パートナーシップ（以下PPP）プログラムのもと、数十億ペソ規模の大規模な近代化計画が進められている。
シンガポールのチャンギ・エアポート・グループは、世界有数の空港運営会社として、DIAの運営を担う有力な候補に挙がっている。ダバオ市のセバスチャン・バステ・ドゥテルテ市長代行は、同グループへの支持を表明し、その国際的な専門性が空港を世界水準の玄関口へと進化させると期待を寄せた。
ドゥテルテ氏は、数々の受賞歴を持つチャンギ空港の豊富な運営実績が、DIAの効率性や乗客利便性、さらには経済的ポテンシャルの向上に寄与すると自信を示した。この発言は、国際刑事裁判所（ICC）に拘束されているロドリゴ・ドゥテルテ元大統領を訪ねるため、オランダ・ハーグへ出発する直前に行われたものである。
チャンギ空港は、2025年にマドリードで開催された「スカイトラックス・ワールド・エアポート・アワード（WORLD AIRPORT AWARDS）」において、通算13回目となる「世界最高の空港」賞を受賞し、その座を奪還した。また、「アジア最高の空港」「年間旅客数6,000万〜7,000万人部門における最優秀空港」「空港内ダイニング体験部門」、さらに新設された「世界最高の空港トイレ部門」でも受賞を果たしている。
米国の旅行誌『Travel + Leisure』のランキングでは、チャンギ空港は世界第2位にランクインし、1位のイスタンブール空港に次ぐ高評価を得ている。
2024年には国際線旅客数で世界第4位となり、約6,700万人の利用客を記録。併設の「ジュエル・チャンギ・エアポート（Jewel Changi Airport）」は、総工費17億ドルを投じた商業・レジャー複合施設で、世界最高の屋内滝、280の店舗、先進的な旅客サービスを備え、空港運営の新たなモデルとされている。
DIAのPPP提案は「リハビリテート・オペレート・トランスファー（ROT：Rehabilitate-Operate-Transfer）」方式で進められ、総事業費は129億ペソ。計画は2段階で構成されている。
第1段階では、旅客ターミナルの拡張、駐機場・駐車場の整備、新たな消防署の建設、並行誘導路の新設が予定されている。
第2段階では、地上支援施設および関連サービスの機能強化が進められる。
これと並行して、運輸省（以下DOTr）は、旅客ターミナルビルを現在の17,500平方メートルから25,910平方メートルに拡張するため、6億5,000万ペソを拠出予定。完成は2026年12月を目標としており、座席数は1,500から2,200に拡大、商業スペースも増設される。工事期間中には4,000人以上の雇用創出が見込まれている。
運輸大臣ヴィンス・ディゾン氏は、フィリンベスト、ゴコンウェイ、チャンギの3大企業グループが事業に関心を示していると発表。フィリンベストはすでに提案書を提出しており、ゴコンウェイとチャンギも追って提出予定である。
ディゾン氏は「DIAは依然として政府直轄で運営されている唯一の主要国際空港であり、民間移管はすでに遅れている」と指摘。年内にも事業者の決定と承認が下される見通しを示した。
パンデミック前、DIAは年間400万人以上の旅客を取り扱い、ミンダナオ最大の国際空港として機能していた。今回の大規模近代化により、今後10年で旅客処理能力は倍増が見込まれ、より多くの外国航空会社を誘致するとともに、ダバオ市の貿易・観光ハブとしての地位向上も期待されている。
また、カカオ、バナナ、ココナッツなどの主要農産物輸出や、急成長するBPO（Business Process Outsourcing）産業の支援に向け、貨物施設の整備も不可欠とされている。
専門家らはチャンギ・エアポート・グループの参入が「ゲームチェンジャー（大きな影響を与える存在）」となりうると分析。同グループは航空以外の収益（小売・飲食・観光など）で全体の半数以上を占めており、そのモデルをDIAに導入することで収益基盤の強化が期待される。こうした包括的な近代化により、ミンダナオはグローバルな物流ネットワークおよび投資ネットワークに繋がる地域拠点となる可能性がある。
落札事業者の発表は近く行われ、その後すぐに着工が予定されている。
