ダバオ地方の企業「Coffee for Peace」のCEOジョジ・パントジャ氏は、2020年度のオスロ・ビジネス・フォア・ピース・アワード(the Oslo Business for Peace Awards;以下、オスロ賞)を受賞した。受賞式は、2021年5月に執り行われる予定だ。
オスロ賞は、世界的に見て、経済の発展に寄与するだけでなく、環境や平和などにも貢献した優れた人物に与えられる賞である。受賞したパントジャ氏の成果は、フィリピンだけでなく、世界的に見ても大変素晴らしいと評価される快挙となった。
同賞は、特に価値のあるビジネスを実現させた企業のリーダーに贈られるもので、その倫理的かつ責任感のあるエネルギーをビジネスに注ぎ、強い経済を築き、その価値を高めた人物が対象となる。過去には、レバノンで貧困など恵まれない女性を支援するファッションビジネスを立ち上げたファッションデザイナーや、サステナビリティを実行し、数百万人のシリア難民に食糧支援を行った食品会社CEOなどが受賞している。
2008年、パントジャ氏が同社を起業した当初は収入がなかったが、フェアトレードの実施、環境に配慮した取り組みなどに取り組んできた。また、同社はダバオ地方や隣接した地方の様々な地域の民族に対し農業を指導し、その活動を通して民族間の平和を築いてきた。同氏は「会社の成功は、収入だけではない。農家、売り手、消費者すべてが幸せであることが大切である」と語っている。まさに、Coffee for Peaceのコーヒーは「平和」を築いてきたと言っても過言ではない。
ところで、パントジャ氏のこれまでの軌跡と、アフガニスタンで活動してきた中村 哲氏の言葉には重なるところがありではないか。中村氏は、紛争で身の安全が危ぶまれるだけでなく、大規模な干ばつにより困窮した人々を救うために水路を建設した。 約30年間に渡る活動の中で理解したこととして「自然を尊重すること」の重要性を語っている。何か目的のために活動する中で、環境を無視した営みは、必ず跳ね返しがある。この二人の言動には共通性が見られる。だからこそ、パントジャ氏の活動が利益追求だけでなく、環境を大切にした農業を実行してきたことには、大変意味があると感じている。