2020年の終わり時点でのフィリピン全体の経済成長は-9.5%となった。新型コロナウイルスによるこのような影響がミンダナオにもあったことは想像できることだろう。しかし、7月7日のメディアフォーラムにて、ミンダナオ開発庁次官補のRomeo M. Montenegro氏は、国全体で見るとミンダナオ経済は良い結果に終わったと述べている。今回は、ミンダナオ経済の現状と今後についてお伝えしたい。
フィリピン統計局によると、2020年のフィリピンの経済は前年と比較して9.5%減となったが、ミンダナオについては5.5%減に収まったという。しかしながら、この数値は2010年以降のミンダナオ域内総生産から見るに最も低いものとなっていることは事実だ。また、特に打撃が大きかったのがダバオ地方で、7.6%減となった。Montenegro次官補は、「ダバオ地方がサービス業を中心としているからです。物理的な接触や人流の移動が抑えられている影響を受けています」と語った。ダバオ市でも特にレストランやホテルなどのビジネスが影響を受けており、コロナ禍に入ってからマルコポーロホテルをはじめとした有名ホテルが次々と閉店した。これに対し、地方部についてはコロナ禍の影響が比較的少なくなっている。
この状況でもプラスを記録したのが農業分野だ。2020年は前年と比較し1.5%増を記録している。これについてMontenegro次官補は、「農業はミンダナオの経済に希望を与えている分野です。ミンダナオの残りすべての地方では粗付加価値(売上高から原材料費や仕入れ原価などの変動費を差し引いたもの)の伸びが見られています」と述べた。最も高い伸びを示したのはカラガ地方(3.9%)で、ダバオ地方でも1.2%の伸びが見られた。このような伸びを見せた要因として、ロックダウンが敷かれてもバナナ、パイナップル、マグロ、サーディンなどの食糧需要は維持されたことが考えられる。
このことも踏まえ、Montenegro次官補は、農業分野はミンダナオの経済発展に寄与するポテンシャルがあると述べている。ミンダナオ開発庁は、マーケット拡大のために生産物をバリューチェーンに載せて考え、付加価値を付けたり加工したりできるか、その可能性を見出そうとしている。さらに、ハイブリッド米、有機米、有機バナナの開発のために投資もおこなっている。有機バナナについては同じくバナナ産国であるエクアドルに後れを取っているのが現状であり、今後もバナナの主産国であるためには避けてはとおれない道だと、次官補は語った。
農業分野だけでなく、建設業界にも期待が集まっている。コロナ禍で止まっていた工事がここ最近再開され始めているため、これに伴って雇用も生まれることが期待されているのだ。さらに、ドゥテルテ大統領はミンダナオ各地のインフラ整備に取り組んでいる。これらのプロジェクトが雇用を生むことで、ミンダナオの経済成長につながることが期待される。
最後に、Montenegro次官補は、今後のミンダナオ経済の見通しについて語った。そして、これまで経済的に大きな損失を受けているので、これからは経済と健康のバランスを取った政策が必要となると述べた。例えば、フィリピン政府はコミュニティ隔離ではなく部分的に絞った隔離をおこなっていくことに移行することを表明している。さらに、ワクチン接種が着実に進んでいるため、これからもっと多くの人たちが外出して買い物などをすることができるようになると見込んでいる。
ミンダナオ島には豊かな自然がある。この強みを生かすことが、今後の発展の鍵となってきそうだ。
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