【News】南コタバト州Tboli族の音楽を後世へ、Blagon Gunog Antogさんの願い

年一回の民族の祭典、カダヤワン祭り

この動画を見てほしい。この楽器、何からできていると想像するだろうか?エレキギターのような音は、どうやらアンプらしきものはないため、手元の楽器から出ているようだ。そして、その隣には太鼓のようなものを叩く女性もいる。

ギターのようなこの楽器、実は「竹」で出来ている。これらの楽器は、南コタバト州の「Tboli」族という部族に伝わる楽器の一部だ。ここにはBlagon Gunog Antogという名の、Tboli族の珍しい楽器を演奏する達人がいる。Antog氏は、この楽器をとおして、部族の文化を後世に伝えようと取り組んでいるのだ。

Antog氏が演奏する楽器はさまざまにある。heglung、kumbing、sludoy、tnonggong、tambol, smagi、blowon、klintang・・・。どれも名前を聞いただけでは、どのような楽器かは推測できないものばかりだ。これらの楽器は、人々を楽しませるためだけのものではない。音楽をとおして、部族のすばらしい文化を伝えるだけでなく、後世に文化を継承するためのものでもある。

Antog氏は、有名な楽器奏者であった叔父から演奏について学んだ。しかし、叔父に来客があれば、叔父の家で練習ができなかった。そこでAntog氏は、サーディンの入った缶を探し、klintangという楽器の代わりとして使って練習した。klintangに付いたどらを数え、音も似たものを探したという。そして、来客が帰ったときにだけ練習ができたそうだ。そして、寝ているときにイメージが頭の中に浮かんだら、すぐに起きて練習もしたという。そのメロディを忘れたくなかったそうだ。

民族楽器を極めたAntog氏は、若い世代に楽器について教える活動も始めた。2003年にTboli族の子どもたちに音楽学校プロジェクトを立ち上げた際には、100名もの演奏家を生み出すことができた。現在、教えを受けた演奏家たちは、南コタバト市内にとどまらず、Region 12の他の地域でも活動しているという。Antog氏は、「生徒たちにはTboliの楽器の演奏方法が分かったなら、私から習ったことを伝えなければならないと言っています。このことでTboliの音楽や文化が守られるのです。Tboliの若い人たちには、私たちの文化や伝統が絶やされないようにするため、学んだほしいと思います」と語った。

Antog氏の活動はその後、規模を拡大し、それに比例して演奏家の数も増えていった。2014年からは、Tboli族ではない若い世代にも、興味があれば教えている。その後2019年には、国からも竹で出来た楽器の伝統について知っている人物と認められた。

それでもなお、Antog氏の若い世代に伝えていきたいという思いは変わらない。Antog氏は、「私たちの音楽が忘れられることのないように、私から習ったことを伝えるのだと生徒たちには聞かせています。そして、兄弟や、Tboliの町の違うバランガイにいる人たちにも教えるよう常に言い聞かせています。学び、練習し、教える。このことを続けてほしいですね」と語った。

Antog氏の思いはきちんと形となり、次の世代に確実につながっている。そして、このバトンがいつまでも続いてほしいと思う。