【コラム】単語の数が圧倒的!田舎の最重要植物「ヤシ」

なぜこんなに細かく名がついているかというと、それぞれに用途があるからです。幹は建材に、枝は薪に、葉は屋根に、トコッドは束ねてホウキに、ボノットはタワシに、バゴルは食器や炭に、プサウは蜜を取ってお酒に…と、まさに「ヤシに捨てるところなし」です。

©Shinya Sawamura

部位だけでなく、ヤシに関わる行為にも、専用の動詞があります。例えば「ヤシの葉の芯の部分だけ取り出す」作業を「バゴス」と言いますし、「ヤシの実の殻から半乾きの果肉部分をこそげ取る」作業を「ルギット」と言います。こちらの人に、この単語がヤシ専用なのか、汎用なのかを聞くために「他の葉の芯を取り出す作業も『バゴス』って言う?」と聞いたら「ヤシの葉の芯以外の、何の葉の芯が必要なんだ?」と逆に質問されました。…確かに。(笑)[

なので、別の切り口から攻めようと思って、冗談めかして「ひょっとして『木に登る』と『ヤシの木に登る』は別の言葉がある?」と聞いたら「ああ、確か爺さんたちは昔、別の言葉を使ってたよ。確か、実を取りに登るのと、酒作りのために登るので名前が違うんだよ。えーと、なんだったっけなあ…」という返事が返ってきたことがあります。ヤシの特別枠、おそるべし。