【特集】カダヤワン祭2023 #3「民族パフォーマンスコンテスト・戴冠式」

kadayawan 2023
Hiyas sa kadayawan

皆さんこんにちは! ダバオッチのミズキです。カダヤワン2023の特集第3回となる今回は、各部族の代表「ヒヤス(Hiyas、宝石)」による民族パフォーマンスコンテストと、その頂点を決める戴冠式を特集します。

十人十色な魅力を持つヒヤスのパフォーマンスには、歌や踊りの実力以外にも求められるものが多く、自身の文化に対する知見の深さが見てとれます。第1回のオープニングセレモニーの辺りでチラッとだけお話した彼女たちの大舞台。前回記事でダバオの部族について少し知っておくと、より楽しめるかもしれません。

ぜひ最後の戴冠式までお楽しみください。

民族パフォーマンスコンテスト(Hiyas sa Kadayawan)

8月13日にSMシティダバオで開催されたこのコンテストでは、各民族の「ヒヤス」が、その民族の文化を紹介するパフォーマンスを見せてくれました。

実は筆者がこれまでヒヤスと呼んでいた彼女たちは、ある意味ではヒヤス「候補」。各民族のヒヤスではあるものの、「カダヤワンのヒヤス」に選ばれるのはただ1人なんです。さて一体誰が選ばれるのか。気になりますね。

それでは早速紹介していきます!

No.1 アタ族 ニーニャ・ミエ・ラウサンさん(Niña Mie Lausan)

アタ族のニーニャさんは、彼らの伝統的な暮らしを模したダンスを披露しました。竹の棒や籠など、生活に使っていたものをリズミカルに動かしながら、アップテンポな民族音楽に乗って踊ります。途中寸劇も挟まりました。10分ほどのパフォーマンスの間、疲れた素振りもなくパワフルに踊り切っていました。

No.2 バゴボ・クラータ族 クリスティン・クレア・タルさん(Kristine Claire Tar)

バゴボ・クラータ族のクリスティンさんは、ダバオの名産であるアバカ(マニラ麻)で糸を繰理、布を織る様子を表現しました。途中、自ら後ろのゴングを叩くパフォーマンスや、台の上でダンスをしたり、伸びやかな歌声を響かせたりと、その内容は多岐に渡りました。

No.3 バゴボ・タガバワ族 エドマリー・キントさん(Edmary Quinto)

バゴボ・タガバワ族のエドマリーさんのパフォーマンスのテーマは、古くから伝わる水や火の起源の言い伝え。言葉が分からなくても、表情や声の調子、ジェスチャーでなんとなくストーリーが理解できるような、迫真の演技でした。特に語りの部分は、長台詞を一度も噛まずにすらすら話しました。驚異の記憶力と滑舌です。

No.4 マティグサログ族 アンジェリー・ベニートさん(Angelie Benito)

マティグサログ族のアンジェリーさんのパフォーマンスは、ゆったりとした調子の唄いから始まりました。ダンスパートは男性と対になり、呼吸を合わせて場所を入れ替えたり、アップテンポで繊細なステップを踏んだり。緩急の付いた飽きないステージでした。

No.5 オボ・マノボ族 プリンセス・エリッカ・パガヤオさん(Princess Ericka Pagayao)

オボ・マノボ族のプリンセスさんは、後ろの櫓(?)から登場。伝統楽器の横笛を見事に吹き鳴らしたかと思えば、ステージに降りてセリフを言いながら踊ったり、さらにはゴングでメロディを奏でたり。素人目にもなんでも出来るなあと感心してしまいました。全体を通してストーリー性もあり、手の込んだ舞台でした。

No.6 イラヌン族 ジョハラ・ブイサンさん(Johara Buissan)

イラヌン族のジョハラさんのパフォーマンスは、結婚式のような場面から始まりました。幸せな話かと思ったら、次の瞬間には浮気のような、2人目の妻を迎え入れるだかの話になるという急展開。怒りと悲嘆に暮れた歌声と、迸る絶叫がこの日一番のインパクトを残してくれました。ちゃんとハッピーエンドっぽかったのでめでたしめでたし。

No.7 カガン族 マイムナ・パンコガさん(Maimuna Pangcoga)

カガン族のマイムナさんのパフォーマンスは、両手に持った布が特徴的。自由自在に靡かせながら、小道具を使うダンスならではのシルエットの多彩さを披露しました。バックダンサーが使う竹を立てた上に立ってのパフォーマンスは、見ているこちらもヒヤヒヤするような緊迫感がありました。

No.8 マギンダナオン族 ルハイナ・ウットさん(Ruhaina Utto)

マギンダナオン族のルハイナさんは、イスラム民族に伝わる「マロン」という筒状の布を使って踊ったり、1つ1つ楽器を演奏して回ったりするパフォーマンスを披露。観客も参加しているような感覚を覚え、楽器やダンスはもちろんのこと、何より観客を引き込むのが上手いという印象を受けました。

No.9 マラナウ族 ジュハナ・スルタンさん(Juhanah Sultan)

マラナウ族のジュハナさんのパフォーマンスは、一言で表すなら「圧巻」。2本の竹に腰掛けて踊っていたはずが、あれよあれよという間に黒い目隠しで視界を奪われてしまいます。しかしそこから竹を足場に立ち上がり、その上でダンスを続行! 地面に降りて漸く目隠しを外しました。なんという安定感と度胸。今でもあの衝撃は忘れられません。

No.10 サマ族 ヘッサ・サイラビさん(Hessa Sailabi)

サマ族のヘッサさんのパフォーマンスはかなり演劇成分強め。サマ族の織物と、他の地域との交易の様子など、当時の暮らしが丁寧に描写されました。最後に少しだけダンスパートもありました。色々な地域の人々が出入りしていた描写から、当時から多くの文化の影響を受けてサマ族の文化が醸成されたことが伺えました。

No.11 タウスグ族 アルテア・アスナウィさん(Althea Asnawi)

タウスグ族のアルテアさんのパフォーマンスは、歌とダンスに全振りの直球勝負。伝統的な音色からバラード、少し新しめのアップテンポな曲も組み込まれました。最後は竹の上に立ったり、座って大きく背中を反らしながら踊ったりと、ダイナミックな動きを見せてくれました。

結果発表

最後は結果発表。ここで今年の「カダヤワンの宝石(Hiyas sa Kadayawan)」が決定するかと思いきや、それは戴冠式に持ち越し。今回は、今日のパフォーマンスが特に優れていた3人が表彰されます。

まずはバゴボ・タガバワ族のエドマリー・キントさん。水と火の始まりについてのパフォーマンスでした。続いてマラナウ族のジュハナ・スルタンさん。まさか目隠しで踊り切るとは。最後にマギンダナオン族のマイムナ・パンコガさん。生粋のエンターテイナーの風格でした。彼女たち3人は、戴冠式でもパフォーマンスを披露します。

それではいよいよ、今年のヒヤスには誰が選ばれたのか、戴冠式の様子をご覧ください。

戴冠式(Coronation Night)

8月17日に会場を移して行われた戴冠式。アーティストのライブと見紛うほどの熱気と歓声が会場中に満ちています。6時半ごろ、いよいよイベントが始まりました。

ヒヤス候補の紹介の後は、軽快な音楽と共に少数民族の伝統舞踊が始まります。最初は先住民族のダンスから。先住民族のヒヤス候補たちもどこからともなく現れます。会場のボルテージがぐんと上がりました。

ヒヤスたちが捌けると、続いてイスラム民族のパフォーマンス。こちらも同様にヒヤス候補が現れて、各々のダンスを少しずつ披露してくれました。

いよいよ全員が揃うと、そこから1人ずつ挨拶をしていきます。友達なのか、親戚なのか、それともはたまた両方なのか、ファンクラブのような組織票を感じる歓声も時折上がりました。

その後改めて1人ずつステージを歩いたり、これまでのイベントの様子をまとめたムービーなんかも流れました。そして、この日のハイライトの1つ、各民族のヒヤス候補を試す「質疑応答」です。

このHiyas sa Kadayawanのイベントや、ヒヤスであるということと、社会問題などを絡めた質問が1人1人に出題されます。環境問題や女性のエンパワーメント、文化の保存と多様性、若者と伝統文化、子どもの教育、などなど……。フィリピノ語と英語で1回 ずつ同じ内容が質問され、1分の制限時間以内に答え切るという難関です。

しかし皆さん堂々と自分の言葉で思いを語っていて、ヒヤス候補としてここに来るまでに多くのことを考えて来たのだということが伝わってきました。

質疑応答の後は、先日トップパフォーマーとして選ばれた3人のステージです。内容はもちろん同じだったのですが、マラナウ族の目隠しパフォーマンスの途中でヒヤスが落ちてしまい、かなり痛そうでした。しかし最後まで堂々と笑顔で踊り切りました。とんでもないプロ根性です。

最後はいよいよ授賞式です。ダバオゆかりの企業や団体から、様々な賞が贈られます。かなり沢山の賞があったのですが、断トツで選出回数が多かったのがマラナウ族のヒヤス。やはりあのパフォーマンスは一際観客に響いていたようです。

そして最後の最後、今年の「Hiyas sa Kadayawan」が発表されました。バゴボ・クラータ族のクリスティン・クレア・タルさんです。13日に選ばれた3人からではないこと、そして2019年から2022年までずっとイスラム民族のヒヤスだったことを考えると、少し驚きもありました。

しかし、今回の受賞の決め手はやはり、先ほどの質疑応答。「カダヤワンのヒヤスという存在は、どのようにダバオ市の女性に力を与えるか」という質問に対し、クリスティンさんは「カダヤワンのヒヤスというのは、私たちが少数民族の人間であるということだけでなく、女性であるということにおいても、パワフルで、発言権があり、そして才能に溢れているということを示すための素晴らしい道筋です」と答えました。

歌って踊れるだけでなく、少数民族や女性のこれからについてもしっかりとした意見を持っていることが評価されたようです。

まとめ

少数民族の代表「ヒヤス」。彼女たちは、そこに至るまでに誰よりも自らの文化を理解し、自らの民族の将来を見据え、さらに高いレベルのパフォーマンス力も兼ね備え……と、果てのない努力を積み重ねてきました。

その努力に裏打ちされるように、彼女たちのパフォーマンスや立ち振る舞いは洗練され、多くの観客を魅了していました。この祭りでスポットライトが当たるまで、彼らは差別され、お世辞にも良いとは言えない感情を向けられていました。しかし今や、会場の少数民族の人々は、誰もが自分の民族の文化を誇ってヒヤスを応援していました。

この祭りによって、知らない文化を知り、尊重し、その上で共存することを自然と学べるような気がします。それからそのような深いことまで考えずとも、ダバオの皆さんのパフォーマンス力の高さで普通にめちゃくちゃ楽しめるお祭りでもあります。観客のノリも格別で、会場全体で楽しもうという雰囲気が今回のイベントでも満ちていました。

さて次回はここまでの記事までで触れてこなかったイベントをまとめて一気にご紹介しようと思います。全5回のカダヤワン特集。ぜひ最後まで筆者と一緒に走り抜けてくださいね!

【特集】カダヤワン祭2023 #1 「オープニングセレモニー・屋台・民族音楽コンペ」

【特集】カダヤワン祭2023 #2「ダバオ市の11の少数民族・文化プレゼン・民族ゲーム」

特集記事をもっと見る

Hello world tours

ビザ・レンタカー・通訳・翻訳なら | ダバオの日系旅行会社